↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
16/48

第十六話 つなぎ屋

そして翌日。


各々自分の布団で目覚め、胸を撫で下ろす伊織と彩。

その直後、前日と同じように無遠慮に戸が開かれた。


「おはよ~!・・・なんだ、今日は添い寝じゃないのか」

「違うっ!そしてお前は勝手に開けるなと何度言えばわかるんだ。明日からはつっかえ棒でも立てるぞ」

「勝手に開けられてはまずいことをするのか?」

「んな訳あるかっ」

「なら必要ないよね。・・・猫、今日は遊べる?」

「仕事が終わればな」

「うん、じゃあいつものとこにいるから」

「あとでのう」


そう約束して、あっという間にいなくなる。


「あいつ・・・どうしてやろうか、本当に」

「とりあえず、お主の頭が虹丸より早く回るようにならねばどうにも出来まい」

「・・・そうなったらお前もどうにかしてやるからな」

「期待せず待っておるぞ」



支度を済ませて家を出た伊織は、普段の着流しではなく、きちんと袴を着ていた。

その姿を眺めていた彩はふと気づく。

これは初めて伊織と出会った時の恰好だ。


「まあ、仕事の時の正装みたいなもんだ。決まってるもんでもないし、大抵の仕事なら普段の恰好のままだけどな。・・・今回の依頼は、この方がいいような気がする。彩にも初めて見せるしな」

「あと、金に目が眩んだ時もこの格好じゃ。ほれ、彩と会った時にも来ておったろう。あの時もな」

「黙れ、人聞きの悪いことを言うな」


猫を遮るようにして、伊織が先頭に立ち歩き始める。

彩は猫と共に後ろからその背中を見つめていた。

改めてみると、羽織袴姿で腰に刀を差した伊織は、彩の知識の中にある本物の武士という感じがする。

確か一昨日会った緒方も言っていたはずだ。

伊織は強い、と。


「伊織、本当にすごく強そう」

「・・・は?」

「緒方さんも言ってたよね。でも、伊織はお侍さんじゃないんでしょう?どうやって強くなったの?」


猫はそれを聞いてくすくすと笑った。

一方の伊織は、後ろから見ても分かるほど大きくため息をついた。


「・・・順番に答える。清の言うことは全部忘れていい。むしろ存在ごと忘れとけ。で、俺はもちろん武士じゃないし、これは戦うための服装でもない。つなぎは神の領域に入るから、そのための正装だ。言ってみれば神職の装束、みたいなものかな。・・・最後に何でそこそこ俺が強くなれたかと言うと」

「強くならねば生きられなかったからのう。毎日、幻様と苦楽に鍛えられておったわ」

「そうなんだ。・・・大変だったんだね」

「・・・ま、あの二人なりに考えてくれてたんだろ。さっき神職って言ったけど、実際にはつなぎ屋はそれとも決定的に異なるから」

「・・・?」

「つなぎ屋は、敢えて神が作った時間の流れを捻じ曲げてる。だからつなぎの最中には、邪悪な気を引き寄せやすい。負の感情が強い依頼の時なんかは特にな。そんなのから自分と依頼者の身を守らなきゃならないから。猫や苦楽が傍にいてくれるのもそれ対策ってことだ。だから神職とは違う・・・っていうか、本質は真逆だろうな」


伊織の言っていることは、半分くらいしか理解ができなかったけれど。

彩には、伊織の口調が自嘲ぎみで寂しそうに聞こえた。


「伊織・・・」

「さ、辛気臭い話はこれまでだ。爺さんが待ってるからな。とりあえず行こう」

「報酬は少ないがな」

「だからっ、辛気臭い話はやめろと言ってるだろうが」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。