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死んだと思ったら魔界で生まれ変わった  作者: 鳥羽こたつ
最終編
77/146

不正解回答

一人で考えるのは難しいです。一人で考えられたと思っても、きっと、他の何らかの影響があるのだと思います。

一体どうしたものか。

ミロさんに勉強の意味について問われたあの日から、そのことが頭から離れないようになってしまった。少しでも時間が空くと、どうしてもその答えを考えてしまう。

誰かにアドバイスを貰おうかとも考えたが、それは何か違う気がした。そのアドバイスはその人の考えで、私の考えではない。これは、私一人で考えて答えを出さなきゃいけないような気がした。


「リコ、どうした。なやみならあたしがきいてやろーか」


ふと現実に戻ると、ミロさんが心配そうに私の顔を覗き込んでいた。そういえば今はミロさんに数について教えていたところだった。まったく、私が心配をかけてどうするんだ。


「いえ、大丈夫ですよ。心配しないでください」

「そーか」

「はい。そうです」

「なやみごとならあたしにいえよ。できることだったらしてあげるからさ」

「ありがとうございます。ミロさんは優しいですね」

「そーだろー。もっとほめてくれてもいいんだぞー」


と、得意げに胸を張るミロさん。こういうとこを見ると、やっばり子供っぽいなと思う。いや、年齢で考えると子供なのだが。

子供っぽいといえば、ミロさんはやはりその傾向があった。コミュニケーションを取ってみてわかるが、純粋で、傷つきやすくて、好奇心が旺盛だ。あと、好き嫌いが激しい。この前なんか、野菜炒めを丸々残していた。


「やさいはかたいから、やだ」


と言っていた。考えたこともなかったが、ミロさんにとっては野菜は固くて食べにくいものなのだろう。あの時は何とか全部食べさせたが。

そんなことを思い出していると、ミロさんは得意げに張った胸を戻してこう言った。


「リコはたまにコワイからな」

「え、私って怖いですか?」


そんなこと言われたこともなかった。寧ろ、『リモコはいつも笑っていて、幸せそうだね』とずっと親に言われていたくらいだ。あれから数年経ったとは言え、自分が怖い人間だという自覚はなかった。そうかぁ、私って怖い女なんだ…。


「あの、どの辺が怖いですか」

「きびしーし、すぐおこるし、すぐこーんなかおをするし」


そう言いながらミロさんは、眉間に人差し指を乗せ、下に動かした。強引に眉が下がり、まるで怒っているような表情になる。確かに考え事をしている時はそんな顔をしているかもしれないが、そんなに怖い印象を与えているのだろうか。改めなければ、そう思い、頑張って歯を見せるように口角を上げて笑顔を作って見せた。


「こわっ」


私の精一杯の笑顔を見たミロさんの感想はそれだった。何だろう。こんなに悲しい気持ちになったのは久しぶりだった。




「何してるんですか…」


悲しい気持ちになってから数日。私は鏡を見ては口角を上げ、笑顔を作って見せた。しかし、あの日の笑顔と何が違うのか、よくわからない。

それでもって、笑顔の練習をイオマさんに見られてしまった。なんとも恥ずかしい。


「いえ、その、何でもないです」

「何でもないようには見えないんですが」

「今、自然な笑顔の練習をしているだけなんです!」

「自然な笑顔って練習するものなんですか?」


そう言われてはっとした。確かにそうだ、本当に嬉しい時や、楽しい時は、口角を上げなくたって自然と笑顔になれるものだ。私はミロさんに何かを教える時、自然な気持ちになれていただろうか。いや、なれていない。

私は隊長を、人類を救うためにミロさんに勉強を教えていたのだと思う。思えば、ずっと焦っていたのだ。


「ありがとう、イオマさん!」

「え、えぇ?」


困惑した様子のイオマさんを尻目に、私は訓練場に向かって走り出した。確かこの時間は、ミロさんは戦闘訓練を行っていたはずだ。

私の自然な気持ち、思っていることを正直に伝えよう。それがきっと答えだから。私が考える、ミロさんへの答えだから。


「えーっと、結局何だったんだ?」


後から聞いた話だが、一人そこに残ったイオマさんは、私が作り笑顔を練習していた件について、小一時間悩んでいたらしい。いやはや、申し訳ないことをした。

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