ターニングポイント
フレームアームズガールの映画を観てきました。良い総集編だった…。
「一体どうなってんだ!」
「おれが知るか!」
「いいから早くなんとかしろ!」
魔族達の怒号が飛び交う。それもそのはずだ。今、この城は。
「クソ、なんで火事なんか起きているんだ!」
燃えている。
武具庫の中を滅茶苦茶にし、そこら辺の瓦礫で封鎖したあと、ミズキコウが魔法で火を付けた。
普通だったらこんなことで火事なんて起きないらしい。だからこんなにも魔族どもが慌てているのだろう。それがこんなことになったのは、ミズキコウが武具庫の魔法吸収の装飾を全て破壊したからだった。仕組みはよくわからないが、城内にある数多の装飾がこの城を守っているらしい。
「これでしばらくは時間を稼げます。逆に言うと、それを過ぎると事態は悪化します」
「つまり、後はミロを取り戻して終わらせるってことだな」
「そうですね、終わらせます」
ミズキコウの話によると、この城の一番上に魔王がいるらしい。ということは、後は登り切るだけか。
「駆け抜けましょう。この混乱の中なので、すれ違っても気づかれる可能性が低いはずです。流石に毛皮は被っててくださいね」
「あぁ、わかってる」
階段を駆け上がりたくさんの魔族とすれ違うが、ミズキコウの言う通り、誰一人おれ達の存在に気づかない。よっぽど慌てているんだな、こっちにしては好都合だ。
入口があった階を突破し、そしてまた駆け上がる。時折見える外の景色が全く変わらないことが、感覚を狂わせられているように感じた。
「なぁ、あとどのくらいで魔王がいるんだ」
「正確な階層は覚えてません。ですが、まだ十階以上はあったかと」
「そんなに!?」
質問したのはおれだが、後ろにいたキドが足を止め、少しばかりの休憩をとる。その表情はまるで、余計なことを聞いてしまったとでも言いたげな表情だった。
「結構登ったつもりだったんだけどな」
「この城、無駄に大きいんですよ。たくさんの魔族が全て住んでいる、いわば魔族全員の家ですからね」
「…わかってたはずなんだが、いざ改めて言われると凄いところに来たんだな」
ここには全ての魔族がいる。
もし、ここを落とせばそれで戦いは終わる。
…いや、今は無理だろう。仮に守護隊のメンバー全員を連れてきたところで勝てるかどうかわからないんだ。その為にも、今はミロを連れて帰らなければならない。息が整ってきたキドを立たせて、再び階段を踏みしめた。
その時だった。突然目の前に赤い羽根が落ちてきたかと思うと、その羽根が爆発したのだ。突然のことに対処できなかったおれ達は、受け身も取れず壁へと叩きつけられる。
「な、何だ一体?」
「あの羽根…」
ミズキコウが思考を巡らせるように顎に指を当てた。そして、再びあの赤い羽根が舞い降りる。
「皆さん走って!」
脳がその言葉を理解する前に、勝手に体が駆け出していた。羽根はやがて地面に落ち、爆発する。背中で爆風を感じながら、何とか次の階層までたどり着くことができた。
「なんなんだよ、あれ!」
「見ての通りです。地面や手などに触れると爆発する仕掛けになってるんですよ」
なるほど、だから羽根が落ちる前に走れと言われたのか。
「そして、こんな攻撃をするのは…」
「あぁ、そうだ」
声の主がゆっくりとこちらに歩いてくる。ぱっと見ると、人間とほとんど同じ姿をしていた。上半身だけは。だが下半身は鳥のような姿をしており、その背中には大きな翼が生えている。
「久し振りだな、コウ」
「えぇ。久しぶりですね、ハルピュイアさん」
鳥人間はミズキコウを見て何故だか嬉しそうに笑うと、その後ろにいるおれ達をじっと見た。
「人間を従わせるようになった、そういうわけではなさそうだな」
「ですが手を取り合って戦ってるわけでもありません」
「あの時の覚悟はどうした?人間として生きるというのは」
「なくなりました。だから俺は人間でも魔族でもない、半端者として戦い続ける」
「はっ。決断をし切れなかったの間違いだろう」
なんだなんだ。一体何の話をしているんだ。
「そこの人間ども、私はこいつと戦いたいだけだ。さっさと散れ」
「あ?」
「すみません、皆さん。こいつを倒してすぐ追いかけますから」
よくわからないが、またこいつの過去に関わる話のようだ。ならば、邪魔をするのも無粋だろう。
もうやるべきことは決まっている。だったらあとはおれ達だけで何とかするしかないはずだ。
「あぁ、わかった。魔王へのトドメだけは取っといてやるよ」
「助かります。奴を殺すのは俺ですから」
ギョロリとした目を細め、にっこりと笑うミズキコウを見て、おれ達は長い長い階段へと進んで行く。
ここから先は死闘が始まる。上等だ、今までミズキコウに頼りっきりだったのがおかしかったんだ。待ってろミロ、すぐにお前を取り戻しに行くからな。




