似合います、臭います
除湿機を引っ張り出してきました。そしたらキュルキュル音がなってて怖いです。
…。
……。
………あぁ、もう。
わかっていたが、匂いがキツイ。何せ狼男の毛皮をそのまま被っているようなものだからな。獣臭いったらありゃしない。
これでも知ってる限り血抜きだとか、消毒だとかしたんだけどな。やっぱり浅い知識じゃダメだと言うことか。
「…」
お互いの顔は見えないが、リコがしかめ面をしているのはわかる。何せ、親の仇で身を包んでいるようなものだからな。自分からついて行くと言っていたし、納得もしていると思うが、そう簡単に割り切れてはいないだろう。もしおれがあいつの立場なら、きっと割り切れていない。
「…ねぇ、今更だけど」
「あ?」
突然隣にいる狼男のキドが口を開いた。いや、毛皮を被っているから口が開いてもわからないんだが。
「これってどこに向かってるわけ?」
「お前、話聞いてなかったのか?」
「今向かっているのは武具庫です」
ミズキコウが言うには剣やグローブ、槍だとかの近距離で戦う武器は、魔界の方が高威力のものがあるかもしれないらしい。銃とかは守護隊にあるものの方が良質らしいが。
それに、武具庫にあるものを破壊しておけば魔族側の戦力を削ぐことに繋がる。一石二鳥というわけだ。
「で、それってどこにあるの?」
「ここから地下です。正直、具体的な階層は覚えてません」
「それもさっき話しただろ」
あれー?と首を傾げるキド。もう少し真面目に働いてくれたなら給料だって待遇だってよくなるってのにな。
…いや、ちょっと違うな。真面目に働いているキドを想像して、おれは心の中でそう呟いた。
「いた。見張り番の魔族です。気をつけてください」
ミズキコウの視線の先に、イカ人間が槍を持って立っていた。なんだあいつ、見たことない奴だな。
「クラーケンか、あの姿は魔力を抑えてる姿ですね。本気を出したら皆さんの知っている姿になります」
クラーケンだと?
こいつが今言った通り、おれ達が知っている姿とはまるで違う姿をしている。おれ達で言うところのクラーケンとは超巨大なイカだ。あれかそうだってんなら、随分としたビフォーアフターじゃないか。
しかし魔力を抑えるだか何だか知らないが、あんなにコンパクトな姿になることができるのか。だとすれば、魔力を無理やり封じ込める道具を使えば巨大な魔族とも互角に戦えるかもしれない。帰還したら早速試してみるか。
「…」
「どうしたよ竜。毛皮被ってんだから顔なんて見えないだろ」
「いや、もうくしゃみは勘弁して欲しいと思っただけです」
先頭でゴタゴタしている二人を前に、少しずつ歩みを進めていく。クラーケンの階は突破し、タコ人間、クラゲ人間を見て階段を下っていく。しかし、こっちに来てから海産物しか見てない気がするな。…いや、火烏がいたか。
「なんとなーく思い出して来た。たしか、次の階が武具庫がある部屋のはずです」
「そうか、急ごう」
頷く皆と共に階段へと進む。その中で、おれ達は一匹の魔族とすれ違った。リュカオンだ。
「お、竜人。久しぶりだな。とうとう人間を見限ってこっちに戻ってきたか」
「そういうことにしておいてくれ」
「おいおい待てよ。久しぶりだってのに冷たいじゃないか」
あまりにも適当に受け答えするミズキコウをリュカオンが引き止めた。あ、何だかまた嫌な予感がする。
「なぁ、せっかくだから歓迎会でもしようか?」
「嫌だよ、そんな仲じゃないだろ」
「じゃあこれから仲良くなればいい。あ、後ろにいるあんた方もな。いやぁ、しかしいい目をしているな」
「どーも」
こいつの目が節穴だってことはわかった。
「特にそこのあんた。一番いい顔をしている」
そう言ってリュカオンが指をさしたのはリコだった。指をさされて一つビクッとした後、背筋が凍ったかのように全く動かなくなる。
「私、ですか」
「あぁ。懐かしいな、昔いた狼男を思い出すよ。あいつにそっくり、…って女?」
おっと。
そういえばおれ達が被っている毛皮は狼『男』の毛皮だったな。ということはそれから女の声がしたら。
…怪しまれる、よな。




