想像は抑えとけ
気がついたら初投稿から一年経ってました。すごく長かったような気がします。
恐らく今年中には完結すると思いますので頑張ります。
魔法陣を通ると、何やら暗い道が続いていた。その暗い道を進んでいくと急に陣が見えた。先程ミズキコウが出したものと同じ黒い魔法陣だ。それが出口なんだろうな、と何故か理解できた。そして出口をくぐり抜けたその先には。
「暗いな」
漆黒の空が広がる、闇の世界が待っていた。
「隊長、遅かったですね」
「向こうで何かあったのかと思ったぞ」
「あぁ、悪かったな」
先にこっちに来ていた皆がおれを出迎えてくれる。うじうじと悩んでいる間にも結構な時間が経っていたようだ。本当に申し訳ないことをした。
「無事に全員辿り着いているようですね」
そして最後にミズキコウが魔法陣をくぐり抜けてこちらへやって来ると、その魔法陣が消えた。前に説明していたように、移動に使っていた魔力がなくなったということか。
それにしても暗い世界だ。まさに魔族が暮らす世界って言った感じだな。空なんて真っ黒じゃないか。
「まるで夜の世界だな」
「あ、それ、自分も思ってたっす。つーかみんな思ってるんじゃないっすかね」
キドが言った言葉に各々が頷いた。この暗い世界で思うことは皆同じということか。
さて、感想を言い合うのはここら辺にしておこう。魔界を見るためだけにここに来たわけじゃない。おれ達は戦うために来たんだ。
「じゃあ、行くか」
「あぁ!」
威勢の良いディスの掛け声とともに、一先ず前へと歩き出した。足の向くまま、気の向くままに。
「あの」
「ん、どうした。竜?」
「そっち、何もないですよ」
ん。
しまった。緊張していたが、よく考えてみたらここの土地勘なんて全くないじゃないか。この先大丈夫か不安になってきた。
「歩けども、歩けども」
「同じような景色しか見えませんね」
全くだ。
始めにやってきた森を歩き続け、かれこれ数分。未だ見えるのは漆黒の空と影の濃い木々だけ。方向感覚が狂ってしまいそうだ。
「しっかし、魔界って言っても森は普通なんすね」
「そうですね。私もなんかこう、常に視線を感じるような、おどろおどろしい場所を想像してました」
「良かったじゃねぇか普通で。至る所に魔族が潜んでいるとかよりは十分マシだぜ」
「…んー。なんか嫌な予感」
そう言えば最近、『言葉には魂が宿る』という話を聞いたことがある。なんでも自分が言った言葉が現実になる可能性が高いという話だ。つまり余計な会話、嫌な例え話でもしようものなら──。
「…下がって!」
その言葉が現実に訪れるということだ。
ミズキコウの号令を聞き、咄嗟に体が動く。次の瞬間には自分が元々いた場所が火球によって焼かれていた。この攻撃、あいつだ。
「火烏か!」
以前戦った時と同じように、火炎を吐く鳥は木々の中に姿を隠している。ならば前のように投げてやろう、あの毒ガス玉を。
「キド、あれを…」
「おぉぉぉぅらぁぁっ!」
キドに毒ガス玉を渡すように促すが、それを遮ったのはミズキコウの雄叫びだった。その叫びと共に駆け出したミズキコウは火球が飛んできた茂みへと突っ込み、ギョロリとした目で火烏を捉えると目にも留まらぬ速さで飛び立とうとする鳥を握りつぶした。その手に残っているのはどろりとした内臓だけだ。あまりにも素早い一連の流れを見たおれ達は思わず感嘆の声が漏れてしまった。
「あいつ、あんなに素早く動けるのかよ」
「すっげー。あいつだけ違う時間にでもいるんじゃないっすか」
キドが言う冗談も真実のように聞こえる。そう思えるくらい別次元の動きだった。思わず口を開けて眺めているおれ達の前に、ミズキコウが茂みから戻って来て姿を見せる。
「…まだまだ先は長い。消耗品はあまり使わない方がいいでしょう。できるだけおれが先陣を切ります」
「なら、私とディスプさんも前に行った方が」
「いや、どんなときでも応戦できるように前線で戦える人間は三角形の配置にするべきじゃないか」
おれとキドを真ん中にして、先頭をミズキコウ、後方をディスとリコで囲むように。しかし、この陣形だと自分が一番安全な立ち位置にいることになる。何だか罪悪感が湧いてくるな。
「えぇ、俺もそう思います。前は任せてください。異変があったら知らせますから」
そう言ってミズキコウは再び森の中を歩き始めた。またしばらく変わらない景色が続くのだろう。今度は余計なことを言わずに進まなければ。




