思い出の場所へ
平成最後の更新です。遅れていますが…。
気づけばこれも50話を越えていました。新元号でも頑張ります。
ったく、どうしたもんかな。
ミロに食われそうになってからしばらく経つ。今のところ、あれ以降ミロが人を食べようとしたことはないが、油断はできない。対策はしておくべきだろうがイマイチ良い策が思いつかなかった。食人衝動を抑えられることができれば、万々歳なんだがな。
「あぁぁぁ。ダメだ、わっかんねぇ」
こういう時は切り替えが大事だ。いったん違う業務に取り掛かって、あとで考えよう。そう思って資料を確認していると、討伐記録のところに気になる種類の魔族が記録されていた。
「竜人か」
ミズキコウが失踪した日に確認したオーガ討伐の映像、それに映っていた魔族が竜人だったことを思い出す。あれから竜人の強さについて調べたことがあったが、爪や牙は硬く協力であるものの、知能はあまり高くなくそこまで強い種族ではないという結果が得られたことを覚えている。つまり、あの竜人は一般的な評価とは異なる個体だったというわけだ。
そういえば、おれがローパーにやられ入院することになったとき、イオマが『ミズキコウが装備していたものに似た鎧を着ている男』がいたと言っていたな。そいつはディスが逃がしてしまったとかも言っていたが、本当にあの竜人がミズキコウだった場合、ディスが勝てるとは思えない。あの時、本当は一体何があったんだろうか。
それにしてもミズキコウか。あいつは何がしたいのかさっぱりわからない男だったな。自分は人間だとか色々言っていたが結局は消えてしまったし、最後の方はほとんど黙っていて情報を聞き出そうにも聞き出せなかった。どっちにしても、共に戦った仲間だったことは間違いないのだが不審なイメージしか残っていない。今でもあいつは戦っているのだろうか。それとも、既に死んでしまったのかな。
──これ以上考えても仕方ないな。あいつが守護隊を離れてしまった以上、おれたちの手に負えない存在になってしまったことは間違いないだろう。次に会うときは殺しあうことを覚悟した方がいい。
「隊長!失礼いたします!」
おれの思考に終止符を打ったのは隊長室に入ってきたリコだった。何やら息が荒く、余裕のない状態だ。
「どうした」
「先ほどセコンドタウン跡地に出動していった部隊から、応援要請がありました!一刻も争うと思うんです!」
「ちょっと待って、ミロはどうしたんだよ」
「ミロさんですか?その部隊とともに魔族の討伐に向かったはずですが」
ミロがいて倒せない魔族?そんなに強力な魔族が出現したというのか。
…いや、まさか、逆か?
ミロがまた食人衝動に駆られ、部隊を襲ったということか?
「わかった、おれが行く。リコも用意を…」
待った。出動先はセコンドタウンって言っていたな。あそこにリコを連れていくわけにはいかない。
「いや、リコは二人戦闘メンバーを集めて来い。キドは…今日休暇か。おれはイオマに声をかけてくる」
「だったら問題ないです。戦闘メンバーはディスプさんを既に確保していますし、残りは私が出動します」
「は?いいのか、お前。あそこは」
「隊長。あれから何年も経ったんですよ。もう大丈夫です」
そう言って笑うリコの瞳に迷いはなかった。本人が大丈夫だと言っているんだ。だとしたらそれを信じるしかない。おれはイオマに声をかけ車の手配をし、入口で全員集合すると急いで車を発車させた。
それにしてもセコンドタウンか。
あそこにはろくな思い出がない。初めて任務で向かった出動先であり、おれは先輩たちに迷惑をかけたうえに、魔族にタコ殴りにされて死にかけることとなった。それに、人生の中でトップ10に入るくらいの嫌な光景を見せられたところだ。
大量のスケルトンの群れが、一人の男を寄ってたかって自分の骨で叩いている。叩かれた男は無抵抗で、全身が人間だとは思えないくらい真っ赤に腫れていて、周りには豪華な料理が血に染まっていて、少女の泣き声だけが周りに響き渡っていて。
──あそこは、リコの家族が死んだ場所だ。




