城の外へ!!
三か月継続!15話目!20000文字突破!
色々記念して(?)Twitterも始めました! → 鳥羽こたつ @naro_de_kotatsu
一体何をツイートすればいいんでしょうか!わかりません!
二つの金属の塊が動いていた。
メタリックなグレーの金属が動くたびにゴトゴトと鳴り、重い一歩を踏み出している。
その中にいるのは二人の脱走犯。そう、俺たちだ。
「わかっていたけど、やっぱり重いよな」
「金属の塊を背負っているようなものですからね」
「視界も悪いし」
「そちらのサイズは人間用ではありませんし」
あの場で速攻で選んだことと単純に人間用の鎧がなかったため、ディスプさんに最適な鎧を着させることができなかった。足取りが重く、時々兜を押さえて視界を正している。
「ここを抜け出したらすぐに脱いだ方がいいかもしれないな」
「苦しいのはわかりますが、ばれるまでは着ておいた方がいいかと」
この城を抜け出した後に、魔族と遭遇しないとは限らない。
ディスプさんには悪いがこのあともしばらくこの姿で行動することになるだろう。
「お、やべ」
突然ディスプさんが反応した。目の前にいるのはこの階の警備のリュカオンだ。
魔族が住まう各階には警備が存在している。正確に言うと、警備という立場をもった魔物がいる。担当の階で怪しいものや不審なものを探したり、階層を行き来するものを確認してシオウやの立場にいる魔物に報告するのが彼らの仕事だ。
だが、これまでの階を見る限り、彼らもかなり平和ボケしているようで。
「お疲れさまです」
「さまっす」
「あいあい、お疲れ~」
と、完全に姿が見えない俺たちを特に調べもせず、普通に階段を使わせてくれる。「今の腑抜けた魔物たちには良い着火剤となる」、だいぶ前に鳥人が言っていたことを理解できた気がする。
魔族は基本的に風邪をひかない。病気になることもない。そのため病気で苦しむことはない。
ある程度の怪我なら自身の回復力で治癒ができる。そのため事故で死ぬこともない。
食事は種族にもよるが、一ヶ月ほど食べなくても生きていける種族もいる。回復力を生かして共食いを行うこともある。そのため飢餓で苦しむこともない。
種族による格差がなく、実力でしか差が生まれない。そのため誰もが平等で、貧富の差が現れない。
魔族にとって、戦う問題はない。戦う相手は人間だけなのだ。
その人間を支配下に置いた今、もう魔族はこの世界で戦う必要はないのだ。腑抜けもするだろう。
俺は、そんな世界を壊そうとしている。
「なぁ、あとどのくらいで入口に行けるんだ?」
振り返ると、手すりを頼りにディスプさんが階段を上っていた。その歩みは最初よりも重い。疲れがたまっているのだろう。
「安心してください。次の階で入口が見えるはずです」
「何が見えるって?」
再び前を見ると、そこには見覚えのある金髪の美形の男が立っていた。
シオウだ。
「その声コウだろ?話すのは久しぶりだな」
「あんた、なんでここに」
「おう、そんなの決まってんだろ。目的があるんだよ」
そう言いながらシオウは右手に持っていた資料に目を通す。
「色々あってな。今日受け入れた人間に質問することがあるんだよ」
「げっ」
後ろで動揺の声が上がった。このままシオウが人間のいる部屋へ向かえばディスプさんがいないことに気が付いてしまう。
それを阻止すべきか。それともこのまま行かせてさっさと脱出すべきか。どっちが正しいんだ。
「どうした?息が荒くなってるぞ」
指摘されて気が付いた。動揺が行動に出ているようで、まともに息ができない。緊張している。
どうする。どうすればいい。
「すみません、魔王様!」
「あん?」
その選択を出したのは俺ではなく、ディスプさんだった。
「人間は本日この世界にやってきたばかりであり、精神が摩耗しております。そのため、今質問をしても精度の高い結果は得られないかと思われます!」
「へー、そうだったんだ」
「はい。ですので質問を行うのは明日に回した方がよろしいと思います!」
「おう、なるほどな」
その言葉に、うんうんとうなずきながらシオウは腕を組んだ。
「なるほど、わかった。とりあえず今は見逃してやるか」
「はい、その方がよろしいかと思います!」
「おう」
一つ返事をすると、シオウは振り返って階段を上ろうとする。が、一度止まり、俺を見る。
「そーそ。コウ、お前にも話があるんだ」
「俺に?」
「今話してやろうか?今度でもいいけどよ」
「またの機会で」
一刻もこの場を離れたい気持ちが、即答を促す。
するとシオウは一言「おう」とつぶやき階段を上っていった。それと同時に緊張の糸が途切れ、しりもちをつく。
切り抜けた。ディスプさんのおかげで切り抜くことができた。
「…ありがとうございます、ディスプさん」
「気にすんなよ。でも、質問とか話したいこととかってなんだったんだろうな」
手を指し伸ばしてくれたディスプさんはそう言った。確かに。気にならないと言ったら嘘になる。だが今はそれよりも進むことが大事だ。
「とりあえず後で考えましょう。もう入口は間近です」
「そうか!じゃあ、もうひと踏ん張りだな!」
差し伸べられた手を握り、俺たちは入口へと歩き出す。
人間の世界まで、あと少し。




