握手
リアルが忙しい…という報告は失踪フラグですね。
週一更新が目標ですので、隙間時間を見つけて続けていきたいと思います!頑張ります!
「い、今、なんて?」
扉の前で立っていた男が拳を真っ赤にしていた。ずっと扉をたたいていたせいだろう。痛々しく血が流れていた。
「出られるのか?ここから?」
「はい。急ぎましょう、時間がかかれば誰かがこの部屋にやってくるはずです」
「なら…」
「やめた方がいいよ」
そう言った男性をどこかで見たことがある。数年前、初めてこの部屋にやってきたときにいた六人の中の一人だ。他の人とは違う、ぼろぼろの赤い首輪をしていた。数年前と同じ色だった。
「何でだよ!」
「理由は三つある。一つ目は、ここにいることは悪いことじゃない。ここにいる限り十分に生きていられる」
「ふざけんな。こんなところにいて生きてるって言えんのかよ!」
そう言っているのを見て改めてこの部屋を見回した。俺が意識を取り戻した場所のように窓もなく、光がない部屋だ。小さな蝋燭がゆらゆら揺れながら明かりとしての役目を果たしていた。
「ここにいるのは生きるってことじゃなくて、生かされてるだけだろ!あいつらの手のひらの上で転がされてるだけだ。そんなのオレは嫌だ!」
「まぁ、それは人それぞれだと思う。それで二つ目だ。おれたちはここから出たところで生きていられるかは保証されない。どうせ、みんなここに来るまでの記憶はないんだろ?」
沈黙が生まれた。現在ここには十人ほどの人がいるが、その全てが顔を下に向けている。彼らがどうやってこの魔界までやってきたかはわからないが、その様子を見ると人間の世界とこの世界を繋いでいる道のことを知らないようだ。
「待ってください。それなら俺が知ってます。ここから少々離れたところに人間の世界とここを繋ぐ祠があるんです」
「ほ、本当か?」
「はい。俺も見たことがあります。そこにまで行ければ、あなた方の世界へ戻れるはずです」
希望が生まれたようだった。俺の言葉の後にどよめきが生まれ、数人の目に光が灯るのを感じた。しかし、赤い首輪の男は顔を上げない。
「三つ目、そいつの言っていることが本当だとは思えない」
その一言は再び部屋に静寂をもたらした。希望の光が消えていく。次に彼らが見せたのは恐怖の表情だった。
「考えてもみなよ。魔族がおれたちを逃がして何になる?おれには何かの余興に利用されるとしか思えない」
「ちが、そんなんじゃ」
「本当に人間界に行けるのか?いや、そもそもそんな祠なんてあるのか?全部嘘なんじゃないのか」
「嘘じゃありません!どうして信じてくれないんですか!」
「信じられるか!化け物の言うことなんて!!」
やっぱりそうなのか。
今までこの世界にいて、俺を人間扱いするやつはいなかった。でも人間ならわかってくれるんじゃないか、そんな希望を若干抱いていた。
でも、やっぱり。
人間にとっても俺は化け物に見えるんだ。
…それでも俺は。
「確かに、俺は見ての通り化け物です。肌は鱗みたいだし、目はぎょろっとしてるし。でも、俺は人間の心を持っているんです!」
「は?」
何を言っているのか。ぽかんとした表情で俺を見る赤い首輪の男。
「お願いします。信じてください!」
頭を下げる。気持ちは言葉と態度でしか伝えることができない。
伝わってくれ、そう思いながら深く頭を下げていると、その頭にポンと手が乗っかった。ごつごつとした手だ。
「なぁ、竜」
頭を上げると、そこには扉を叩いていた男が俺に手を乗せていた。
「オレはあんたに着いていくことにする」
「え?」
「さっきも言っただろ。こんなところにいたって生きてるって思えない。だったらせめて、少しでも良い方向に向かえる可能性にかけたい」
「…」
「だから、ここから出してくれるっていうお前の言葉を信じる」
そう言うと頭から手を離し、今度はその手を俺に伸ばした。
大きくごつごつとしていて、血が固まりつつあるその手を俺はしっかりと握った。
「よろしくな、竜。オレはディスプだ」
「俺はコウです。よろしくお願いします、ディスプさん!」




