道は壊して開くもの
風邪をひいてしまい、ぎりぎり書き終わりました。危ない危ない…。
6月は470アクセスもありました!これからも週一で頑張ります!
この世界の夜は、地球の夜とは違う。
一日中、一年中、暗闇はこの世界を包んでいる。
だから、朝や夜はあくまで時間の区切りでしかない。
そして今日も、時計の針は夜を告げる。
「おい、あれが」
「今回の人間たちだ」
「見ろ!あの男は肉が詰まってそうだぜ」
「あの女は人間を増やせそうじゃないか」
人間がこの世界にやってきた。この世界の言い方をするのならば、この世界に彼らは受け入れられた。
彼らは身動きが取れないように、縄を腰のあたりに結び付けられており、それを例の黒服中年がまとめて引っ張っていた。
周りの魔物たちは人間たちへの品定めを行っている。卑しい目だ。生き物を見る目ではない。
例えるなら、牧場で牛を見る人間の目にそっくりだ。そう思った。
「ようこそ人間!俺たちは君たちが来てくれてとても嬉しいよ!歓迎する!」
響き渡る声を発したのはシオウだ。コウモリのような黒い羽根をはばたかせ地上に降り、大げさに手を広げ、役者のように演技臭い顔で人間たちの前に歩む。
「君たちはここで生涯を終えるだろう。だが、悲しむことはない!君たちが望む限り、俺たちは君たちを生かし続ける。約束しよう!」
ふざけてる。
この世界は彼らにとって生き地獄でしかない。生きてても何も起こせないのだ。彼らにとって生きるとは、こいつらに食われるまでの時間のことでしかないのだ。
「さぁ行こう!数は少ないが、君たちには先輩もいる。なに、そう悲観するな。君たちの未来は君たちが照らすのだ!」
はーはっはっは。高笑いを上げながらシオウは一人一人の手を握っていく。人間たちの目は様々だった。悲しの目、怒りの目、諦めの目など、様々な思いを抱いているようだった。
「ここが今日からあなたたちが過ごす場所になります」
シオウによる受け入れが終わった後に、人間たちは例の殺風景な扉の前に連れてかれた。俺が知る限り、この世界で唯一人間がいる場所だ。
「ご安心を。シオウ様が仰っていたように、我々はあなたたちが望む限り生かし続けます」
黒服はその言葉の後に人間を扉の中に連れていく。そこから出てくると鍵を施錠し、階段の方へ向かった。扉を叩く音、悲痛な叫び声がフロアに響き渡る。まるで彼らが呪いをかけているようだった。
「貴方は何をしているのですか」
階段に向かう途中、黒服はこちらを見ずにそう言った。
「何でも」
「何でもない、それは嘘ですね。貴方は人間を助けようとしている、違いますか」
「それは」
「大方、私の隙をついてこの扉の鍵を奪おうとしていた。そんなところでしょうか」
完全に考えを読まれていた。今日の受け入れで、人間がこの部屋に連れていくところを襲い、その時に鍵を奪ってこの部屋に捕らえられている人間と共にこの魔界を出る。それが俺のやろうとしていたことだった。
「二つ尋ねたいことがあります。貴方はこの城の外、魔界の遠くへ行ったことはありますか」
「…訓練で、ある程度遠くには。魔界と人間の世界を繋ぐ祠までは見に行ったことがあります」
魔界は文字通り、人間の住む世界とは違う。本によると魔界は空中都市のように空に浮いている世界であるらしい。人間の世界に行ったことがないので、その様子を見たことがないが。
「そうですか。ではもう一つ。貴方は何故そこまで人間であると言い続けるのでしょうか」
「俺が人間だからです」
「そうですか、わかりました」
俺の答えに何を思ったのかはわからないが、黒服は階段を上っていった。一体何を思ってあんな質問をしてきたのかはわからないが、とりあえず、この扉を開くことはもうできない。
諦めて背中を向けたその時、呪いの声が再び耳に入った。
「出せ!出せ!出せ!出せ!出せ!出せ!出せ!出せ!出せ!出せ!出せ!出せ!」
悲しい叫びだ。この階には扉を開けることができるモノはいないのに。いや、いたとしてもこの叫びは誰にも届かないのに。
どの魔物も、この叫びをただの騒音だとしか思わないだろう。「ここから出て、自由に生きたい。」そんな意味の言葉だとは誰も思わないだろう。
俺以外は。
「何が成長した、だ…」
まるで成長していない。すぐに絶望し、諦めてしまう。この世界に来たときの俺と、何も変わっていない。
体だけしか変わっていない。覚悟したはずの心も、言葉だけになっていた。
「さっき言ったばかりじゃないか…」
俺は人間だ。人間として生きるんだ。
「人間は、人間を、見捨てないだろ!!」
壁を殴った。一発、二発、三発、百発、千発。
流石に頑丈な壁だ、未だヒビ一つできない。だが、それがどうした。ヒビができるまで、壁が壊れるまで、骨が折れるまで殴り続けるだけだ!!
「おぅらぁぁっ!!」
殴る!殴る!殴る!
血が出ようが関係ない。体が動く限り、壁を殴り続けた。
そして、終わりが来た。
「おぉぉぉぉぅらぁぁぁぁぁっっ!!」
拳が壁を貫いた。そしてそこを中心として壁が砕け、道ができた。人間と俺を繋ぐ道が。
何が起きたんだ?と、そんな驚愕の表情を浮かべた人々が俺を見た。
「皆さん、聞いてください!」
「俺は、皆さんを助けに来ました!」




