第10話 強敵キリン
今回はルキナ達にとって初めての壁、強敵が現れます。
さて、ルキナ達はどうなるのか…!?
やっと10話に達しました!
扉を開くと、そこには青いコートを着た男が立っていた。首には首輪がはめられていた。
右手には大きなランス<槍>が握られていた。
さっきの雷はコイツの仕業だろう。
「ほう、どうやって入ったか知らんが、ようやく来たようだな。緑の輝石の保持者よ。」
「お前は、確か、蒼槍のキリン!何でお前が!」
ダイルは男を見て、驚きを隠せずにいた。
「おい、ダイル。誰だよ?蒼槍のキリンって?知り合いか?」
「バカ野郎。アイツはアビスソルジャーの中でかなりの実力者。中級層の奴だ。今の俺達じゃキツいぞ。」
「ふん、今のお前達じゃキツいだと?貴様らが俺に勝てるわけないだろう。」
「ヤバいな…それよりも、何で輝石を持ってることを知ってんだ!?」
ルキナはキリンに問いかける。
「簡単な話だ。輝石はそれぞれ近くに存在する輝石に反応する。それだけの事だ。」
確かに、ルキナ達はこの街に来る前にサンドワームと出くわし、その時輝石が輝き、サンドワームを倒した。
キリンが言っている反応はその時のことだろう。
「て事はお前も輝石の保持者ってわけか…。」
ダイルが納得したように言う。
「いや、正しくは保持者は俺ではない。なぁ神父様よ。」
キリンはそう言うと、祭壇の方を向いた。
すると、今まで気付かなかったが、神父が1人立っていた。
アシュラム教の神父も敵だと言うわけだ。
市民達は裏切れた気分だろう。
「そう、私の所有している輝石は赤の輝石。灼熱の力だ。」
と神父はルキナ達の方へと歩み出した。
「と…いうわけだ。まぁそういう事で、緑の輝石は渡してもらおう。」
キリンは槍を構える。
「誰が渡すか!」
ルキナとダイルは剣を抜く。
アーニャは戦闘が始まると悟り、ルキナ達から離れた。
「うぉー!」
キリンが槍を構え突進して来る。
ルキナとダイルはお互いに両サイドへと移動し、かわした。
「ふん。甘いな。雷槍!」
キリンのかわしたはずの槍から横に雷が流れ出した。
バチバチッチ
大きな音を立てて、雷はルキナ達に直撃した。
「ぐぅっ!」
ルキナは雷の威力で吹き飛ばされ、教会の壁に叩きつけられた。
ルキナは痛みにしばらくの間うずくまっていた。
ダイルの方はというと、既に立ち上がり、剣を振りかざし突撃している。
カキンッ!
剣と槍がぶつかり、金属音が響いた。
「貴様は、あの悲劇の街の唯一の生き残りのダイル=テアードか。」
その言葉にダイルの顔は、険しい表情へと変わっていた。
「うぉー!」
怒声とともに、凄まじい勢いで剣を叩きつける。負けじとキリンも槍を振るうが、ランスは近距離では不利なのだ。
小回りも効かずキリンは防戦一方だった。
ルキナも加勢しようと立ち上がり、駆け出した。
押され続けていたキリンは後方へとジャンプし、椅子の上へと飛び乗った。
そして、段差を利用して槍を突きつけた。
ダイルは、何とか剣で受け止めたが、勢い余り後方の机と椅子の間に倒れ込んだ。
「うっ!」
「とどめだ。」
ダイルが諦めかけていた瞬間、ルキナが壁をつたいながら、走り、頭上から剣を振り下ろした。
「何ッ!?」
キリンは背後からの襲撃に驚いた。
「翔翼刃ッ!」
ルキナの剣から風をまとった斬撃はキリンに直撃し、椅子や机はズタズタに切り裂かれた。
「ルキナ。ありがとう助かった。」
ダイルはルキナの手を借りて立ち上がると礼を言った。
「ぐっ…おのれ…こんな事で勝ったと思うなよ。」
キリンは所々血を流しながらも、立ち上がり、距離を取った。
「サンダースタンプ!」
そう叫ぶと、さっきよりも大きな雷の衝撃波をまとい、突進して来た。
ダイルとルキナはそれぞれ、机の下に飛び込み、何とかよけられたが、机や椅子は雷の威力で吹き飛び、辺りは瓦礫の山のようななっていた。
「紅火葬!」
「エアーインパクト!」
ダイルとルキナが放ったそれぞれの技はキリンにクリーンヒットし、吹き飛ばされた。
「はぁはぁ、倒したか…」
ダイルの息遣いが荒い。相当体力的にもキツいのだろう。
ルキナ自身も慣れない戦闘に疲れていた。
「蒼槍のキリン…がこんな呆気なく負けるとは…情けない。この私が相手してやろう。」
さっきまで傍観していた神父がついに戦闘に加わったのだ。
神父は赤の輝石を取り出すと、ルキナ達に見せつけた。
「赤の輝石の力、見せてやろう。」
「ディバインエクスプロレーション!」
赤の輝石が輝き、大爆発が起きた。
大きな音と同時に2人とも聖堂の後ろへと吹き飛ばされた。
熱い…ルキナは起き上がり周りを見渡すと、さっきの爆発で机や木などが燃えていた。
ダイルも隣で倒れていたが、無事なようだ。
炎の熱気と煙に、息がつまりそうだ。
「ふん。赤の輝石を使えばこんな事他愛もない。」
神父は教壇の上から見下ろすようにルキナ達を見ていた。
「うっ…くそっ…」
ルキナは痛みをこらえながら立ち上がる。
「あんた達、輝石を集めて何するつもりなんだ!?」
「ふん。貴様らに説明してくれる義理もないわ。」
「そうかよ…まぁ良いように使おうとしてる訳じゃないのは分かるさ。」
ルキナは剣を握りしめる。
(コイツらに輝石を渡す訳にはいかない。もっと力があれば…!)
ルキナが強く念じると、緑の輝石が緑色の輝きを放ちだした。
あの時と同じだ。
ルキナの剣に風が纏わりつく。
地面の塵が風に吹かれ集まる。
「ほう…ソイツが緑の輝石の力…!」
神父も赤の輝石に力を送り込む。
教会の中は赤色の光と緑色の光に満たされていた。
「うおー!」
「はー!」
ルキナは走り出し、剣を振る。
神父も右手の輝石から巨大な炎を放つ。
ルキナの剣から風の塊が放たれる。
炎と風が激突し、爆風が起きる。それによって教会の壁は吹き飛ばされ、最早教会は瓦礫の塊と化した。
風と炎は拮抗し合い、ほぼ互角だ。
「うおー!まだまだ!旋風振波!」
ルキナはさらに風の斬撃を放ち、神父の炎を打ち破った。
「くそ…馬鹿な。」
ルキナの放った斬撃は炎を打ち破り、さらに神父の身体を切り刻んだ。
「よし…勝ったぞ。ダイル大丈夫か?」
ルキナは後ろで倒れているダイルを助け起こした。
「いや…良かった。あとは奴らを捕まえるか。」
「そうはいかねぇぜ。」
突然、教壇があった場所から声が聞こえた。
目を向けると、倒したはずのキリンが教壇の上に立っていた。そして、その腕にアーニャが捕まっていたのだ。
「助けてっ…!」
アーニャは必死にキリンの腕から逃れようと暴れていた。
「てめぇ…汚いマネしやがって!」
ダイルは怒りを露わにし、叫ぶ。
「ふん。この女を死なせたくなかったら、動くなよ。いいな?」
そう言いキリンは倒れている神父を助け起こした。
「また、どこかで逢おうぜ。」
そう言い放つと、キリン達の足元に魔法陣が浮かび上がり、アーニャを抱え、姿を消した。
転移魔法だ。
「ちくしょー!」
瓦礫の山と化した教会にルキナの声だけが響きわたった。
少しアクションシーンが少ないですが、この小説は戦いよりも、物語重視ですので、ご了承下さい。
それと少しずつ文字数増やしております(笑)