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新宿地下迷宮5

すみません、ちょっと短いですけど。

迷宮は1階層ずれただけでも生態系が大きく変わる。

ワームを見ても分かる通り必ずしもでは無いのだが、モンスターが好む魔素が溜まりやすい深い地下エリアのほうが強力な個体が住みつきやすくなると言われている。


ソロ探索に広大な新宿地下迷宮を潜るのは、せいぜい地下1階層の比較的浅いエリアまでが普通である。

それ以上になると4~8人くらいで盾役・回復役・攻撃役と役割を分担したパ-ティで潜るのが当たり前となる。

特に未体験エリアの4階層ともなれば完全装備のベテランパーティーが何日もの野営を覚悟して潜るような階層である。

これは戦闘だけの問題だけではない。

何度も通ってきたエリアでも、迷宮に住みつく知恵のあるモンスターたちがせっせと縄張り内を作り変えたり、増築したり、罠を設置したりするせいで一ヶ月もすると全く違う構造になっていたりもするからである。


いくら忍者として単独潜行の偵察に慣れており、裂け目から直接3階層に訪れていたとはいえ、ソロで準備もせずに地下4階層に潜るというのは危険きわまりない。

いつも口うるさく働けという環(タマキ)だが、知ればさすがに顔を青くして止めるだろう。

心配させないように3階層でワームを狩っていることすら1階層の穴場の話として伝えているのだ。


しかし既に俺は迷うことなく可能な限り素早く降りていく。俺の耳にも戦闘が起こっている音が聞こえてきたからだ。

階段を降り切った途端、暗視ゴーグルの緑の視界がぼんやり白い影に覆われていたので頭から外す。



「セヤァーッ!」


「グボシャアアッ!?」


白色の柔らかい光を放つ球体が天井近くの通路に浮かび周囲を照らす。魔力による光源だろう


そこに浮かび上がるのは囲むように押し寄せるオークたちの集団と、その真ん中で1人の人間が乱舞している異様な光景だった。


ざっと見てもオークたちは40体はいて中隊規模の集団と呼びうる数だった。


こちら側から隠れて見えていないならもっといるのだろう。


だが人影から舞うように繰り出された大薙ぎの一撃が、オークの太い首や手足を次々に捉え飛ばしていく。


最初に得物は長槍かと思ったが違う、2mはある大ナギナタだ。それを1m70cmほどの背丈の人物が器用に振り回している。


取り回しの難しいナギナタを武器にする探索者は珍しい。

日本の近世以降では武家の婦女子の必修武芸になったため、非力な女性が使う武器としてバカにされがちだが実情はかなり違う。


ナギナタは刃の部分に日本刀のような反りがあるが、槍の形状と最も違うのは持ち手の柄の部分が楕円形になっているところだろう。日本刀と同じく片刃の武器であるから手の内で向きを確認しなければならないためだ。

突きと巻き、そしてその応用だけですむ槍術と違い、この辺りに使い手を選ぶ難しさがある。


しかし完全な実践武術であり、それを知っているものの中にはナギナタこそが近接戦最強の武器だというものもいる。

それほどまでに熟練者が使ったナギナタは恐ろしいものなのだ。


遠心力をのせた攻撃力、槍のような突き刺し、日本刀のような切れ味の斬り払い、そして棒術のような取りまわしによる攻撃可動範囲の広さ。

更に戦国の世から数百年にわたり研究され続け練られてきた千変万化の戦闘技術は、知らぬものに簡単に読み切れるものではない。

修行時代の師匠の1人にも天道流ナギナタの免許皆伝者がいて、未熟なうちは1分と掛からずに青あざだらけにされた。


しかし舞う影のナギナタは当時の師匠の技量さえはるかに越えているように思えた。



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