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執着と独占欲、狂気のショートストーリー集〜僕が君を愛してあげる  作者: 水波瀬 凪


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5/5

「外出は許可されていません安全のため施錠は継続します」~スマートホームは正常に稼働しています

「スマートホーム、ただいま」


僕が声をかけると、玄関の電子錠がピピッと音を立てる。


廊下からリビングへと足を進めていけば、暖色のLED照明が順に灯っていく。


「おかえり、拓斗(たくと)くん」


ソファから立ち上がった花音(かのん)が、嬉しそうに駆け寄ってきた。


彼女とこの最新のスマートマンションで同棲を始めて、まだ一ヶ月。


僕はガジェット好きの知識を活かして、この部屋のすべてを自動管理できるようにした。


照明、空調、カーテン、お風呂の湯沸かしまで、すべてが僕のスマホ一つで操作できる。


完璧に快適な僕たちの城。


「花音、今日もかわいいね。部屋は寒くなかった?」


「うん。本当に拓斗くんってすごいよね。何でもスマホでできちゃうなんて魔法みたい」


僕はずっとこんな生活を夢見ていた。


花音と早く、こうしていたかった。


友達が多くて、いつも誰かと楽しそうに笑っていた花音。


彼女のスマホが鳴るたびに、僕は嫉妬で頭がおかしくなりそうだった。


でも、これからは違う。


この安全な部屋で、僕たち二人だけの世界を作るんだ。


「あ、そうだ。拓斗くん、ちょっと相談があるんだけど……」


花音が少し不安げな顔で、自分のスマホを差し出してきた。


「最近、私のスマホ、なんだかおかしいの」


「おかしいって、何が?」


「昨日ね、地元の男友達から久しぶりに電話が来たんだけど、話し始めた瞬間にスピーカーから『キィィィン!』ってすごい音がして、勝手に切れちゃって」


それからこれ、と言って花音が見せてくれた画面には、不気味な文字列が並んでいた。


「LINEの文字もなんだかおかしくて……それからお母さんに電話しようとしても勝手に切れちゃうの。ウイルスかな?」


不安に震える花音の肩を、僕は優しく抱きしめた。


「怖い思いをさせたね。大丈夫だよ。最近のウイルスは複雑で巧妙なんだ。だから僕がセキュリティをチェックしてあげる」


「……ありがとう、助かる」


安心したように息を吐く花音を見つめながら、僕は愛おしさで胸がいっぱいになった。


大丈夫だよ、花音。


君のスマホがおかしくなったのは、ウイルスのせいなんかじゃない。


同棲を始める時に、便利だからと言って僕がスマートホーム連携アプリを設定した


それが僕の指示通りに動いて、君の邪魔な人間関係を整理してくれているだけなんだから。



その後も、花音の友達とのLINEが不調になったり、インストールしているアプリが動かなくなったりと不調が続く。



翌日。


僕が仕事に出かけたあと、花音はどこかへ出かけようとしたらしい。


しかし彼女が玄関に向かおうとした瞬間、部屋中のスマート家電が暴走を始めるんだ。


ロボット掃除機が彼女の足元にしつこくまとわりつく。


電動カーテンが閉まって部屋が真っ暗になる。


玄関のスマートロックが「ガチリ」と音を立ててロックされる。


天井のスマートスピーカーから、不自然に抑揚のない機械音声が流れる。



『本日の外出予定は登録されていません』



花音、ひとりで出かけるのは危ないよ、君はここにいるべきだ。


僕が守ってあげる。


僕は、スマホの管理アプリを使って彼女の様子を監視し、リアルタイムで部屋を遠隔操作していた。




どうやっても外に出られない恐怖。


真っ暗な部屋で花音は、部屋の隅で声も出せずにうずくまっていた。



「ただいま、花音?」


そこへ、僕がいつも通り穏やかな笑顔で帰宅する。


「どうしたの、真っ暗な部屋で……」


僕がスマートロックを解錠して入ってきた瞬間、部屋のシステムは一斉に正常化し、温かい明かりが灯る。


「あれ、泣いてるの?」


「拓斗くん、この家おかしい! 外に出られないの」


彼女は僕にしがみつき、言った。


僕は彼女を優しく抱きしめながら、彼女から見えないようにスマホの画面をタップする。


部屋の監視カメラの録画データは「上書き消去」された。


僕は彼女の耳元で、優しくささやく。


「どこへも行っちゃだめだよ」


僕は花音を抱きしめた。


彼女のスマホには、もう僕以外の連絡先が残っていない。


玄関のスマートロックは僕の指紋しか登録されていない。


監視カメラの映像は自動的に上書きされる。


「外は危険だからね」


花音は震えながらうなずいた。


スマートスピーカーが静かに告げる。


『おかえりなさい、拓斗さま』


この部屋は、今日も正常に稼働している。







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