第85話 闘技大会編 魔法使いと不死者
「おん? 今なんかいたか?」
妹紅の放ったスペルとぶつかり合う前に何かが飛び出してきた気がする。
「気のせいじゃねぇか? そらよっと!」
少し間を空けたが、すぐに妹紅が掌から火を放つ。
「おぉっと危ねぇ、スターダストレヴァリエ!」
帽子を押さえたまま一回転して炎をかわし、勢いに任せて妹紅へと突っ込む。
「チィッ」
妹紅はギリギリのところで横に飛び、木に隠れる。
「中々やるじゃねぇか!」
「そっちこそだぜ!」
「 さぁいよいよラストスパート、白熱してまいりました!! 大接戦の妹紅さんと魔理沙さん。それを狙うは傍観に徹している藍さん!」
「戦略的には九尾が有利そうだけど……正直何が起こるか分からないわね」
「魔理沙さん厳しいですかね……」
「大丈夫よ」
早苗の言葉に一瞬で返す。驚いたのか、彼女は目を見開いている。
「まぁ魔理沙の認識次第って感じだけどね」
「魔理沙さんの認識……ですか?」
よく分からないといった様子で、早苗は首を傾げる。
「ほら、魔理沙って弾幕ごっこ強いでしょう? その要領であいつがこれを真剣勝負ではなく弾幕ごっこ。つまり遊びだと認識すれば、まぁ優勝するでしょうね」
微塵の躊躇もなく言い切る。
信頼なのか、それともまた違う感情なのかは分からないが、霊夢がそう言い切ると妙に安心感がある。
「そう……ですか……」
霊夢の言葉を頭の中で整理しながら、モニターで忙しく跳ね回る魔理沙に目をやる。
「認識……次第……」
早苗は小さく呟いた。
「ほらほらどうした魔法使いィ! 逃げ回ってばかりじゃねぇか!」
喋りながらも次々と魔理沙目掛けて炎を飛ばす。魔理沙をしっかり狙っているわけではなくとりあえず飛ばしとけ思考なので、非常に狙いが分かりにくいのがタチが悪い。
「恋心・ダブルスパーク!」
両手にミニ八卦炉を持ち、前に飛びながら妹紅に向かって二発のマスパを放つ。
「おぉっと危ねぇ」
だが妹紅は危なげなく簡単にかわしてみせる。
(普通に撃ったんじゃやっぱり当たらない、か)
止まることなく走り続けながら思考する。
「お返し、だッッ!」
妹紅が掌から先程よりも少し大きめな火球を放つ。
かろうじて避けると、その火球は着弾地点で大きな爆発を起こす。
(…………あれ使えるな)
ちらりと一瞬だけ妹紅のほうを見る。彼女は笑っていた。
完全に下に見られている。だが彼女にとってはその油断が命取りだ。
「もういっちょぉぉ!!」
妹紅が再び火球を放つ。
「そいや」
火球を放った直後、それに向かって魔理沙が何かを投げる。
「あん?」
魔理沙の投げたそれは、火球に当たると、
「んなっ!?」
爆発を起こし、周囲が煙で全く見えなくなる。
魔理沙が投げたのは着弾した場所が氷漬けになる魔法道具……の失敗作。だがそれが妹紅の火球を急速に冷却し、大量の煙を撒き散らすものとなったのだ。
「クソっ、どこにい……」
目の前の煙から、何かが飛び出してくる。
「そこだぁぁッ!」
完全に仕留めた。そう、妹紅は思った。
「なっ!?」
それの正体が分かるまでは。
「これはあいつが持ってた箒!? てことは……」
「もう遅いぜ、妹紅」
背後で魔理沙の声がする。
振り向けば、手を伸ばせばすぐに触れられる距離で、魔理沙が魔法を発動しようとしていた。
「魔砲・ファイナルスパーク!!」
「決まったぁぁぁぁ!! 魔理沙選手、逆転の一撃! 妹紅さんは不死身ですが今のを喰らえば普通の方なら致命傷! そう判断した審判が黒の旗を上げました!!」
「すご……あの状況からよくこんな方法を思いつくわね……」
地面に倒れ伏す妹紅を一瞥する。
「悪いな。私は弾幕ごっこじゃ誰にも負けないのぜ!」




