第84話 闘技大会編 銀と藍
「…………迷った……のか?」
もしかして、もしかしなくても、これは迷ったというやつでは? さっきから同じ場所をぐるぐるしている気がしなくもない。
見回してみれば周りは木、木、木。木しか見えない。
(さっきから同じところをぐるぐるしてる気がするし……いや俺に限ってそんなこと……)
「考えてても仕方ねぇ」
ゆっくりと目を閉じ、再び見開く。
現在銀の目に見えているのは風の流れ。何かが動けば風も乱れるし髪の毛などが1本でも飛んでいれば即座に分かるし反応できる。だが今は
「だぁぁぁ木があるから全っっっっっ然分かんねぇ!」
周りが木ばかりのこの場所では真っ直ぐ風が流れるわけもなく、もはやごっちゃごちゃに絡まった糸のようで正直分かったもんじゃない。だが彼はすぐに切り替える。
その場にしゃがんで地面に手を当てる。
(少し離れたとこで誰か戦闘して……ッ!?)
背後から感じた突然の殺気に感覚に任せて前に飛ぶ。
一瞬ののちにさっきまでいたところが爆発する。
(こいつまーだやられてなかったかぁ……)
木の裏から少しだけ顔を出し、さっき爆発した地点、それよりもずっと後ろの木の上を視る。
藍は涼しげな顔でこちらの様子をうかがっているようだ。
(ちっとまずいな……)
正面切って藍と戦った場合ほぼ確定で俺の負けだ。あいつは俺の能力のことを紫の次に知ってるし、修行にも付き合ってもらってたし。全力でやり合ってもたぶん倒しきる前に俺がやられる。遠距離でちまちまやられれば勝てるわけないし。
(一撃に全部かけるか……)
チャンスがあるとすれば、気づかれていないうちの背後からの攻撃。
藍の視線すら把握し、木々の間を走り抜ける。
(あいつはまだこっちを見つけられていない……今ならいける!!)
そう判断するや否や音も無く跳躍し、木を蹴りあがっていく。
ものの数秒で藍の背後の木を上りきり、彼女目掛けて拳を振り上げる。
(尾の動きを見切って……確実に……殺る!)
藍が未だにこちらに気づいていないのに少し違和感を感じたが、そのまま拳を振り切る。
ゆらゆらと揺れ動く尾の中に手が入り込んだ、瞬間。
「あー銀兄だーっ」
九本のうちの一本から猫のような少女が飛び出してくる。もちろんその子を殴るわけにもいかず、手を止めてしまう。
「そういうとこ、まだまだ甘いな」
驚きで硬直した一瞬の隙を突かれ、鳩尾にトンッ、と拳を置かれる。
「くっ…………!!」
咄嗟に腕を振り下ろして拳をどけようとするが間に合わない。そのまま拳から妖力が一点に放出され、地面まで一直線に吹っ飛ぶ。
「痛ってて……当たり前だけど容赦ねぇな……」
起き上がればすでに藍がこっちに向かってきている。
その姿を捉えた瞬間にはもう走り出している。
「おい藍! なんで橙がここにいんだよ!」
背後から放たれる弾幕を避けつつ叫ぶ。
「さっき呼んだだけだ。もう帰ってる」
ほぼ同速で動きつつ藍が答える。
(これどうすっかな……)
正直このままじゃジリ貧だ。
一瞬だけ後方に目をやると、藍が少し減速している気がする。
(チャーンス)
今のうちに距離を離そうと、もう一度前を向き足に力を込めた時、目の前を何かが高速で通り抜ける。
「嫌な予感」
そう小さく呟いた瞬間、左右からほぼ同時に声が聞こえる。
「マスタースパーク!」
「凱風快晴─フジヤマヴォルケイノ─!!」
両側から迫る二つのスペル。
さっき藍が減速したのは二人に気づかれないためか……。
そんな無駄なことを思い浮かべ、考えるのを止めた。
「あーっと不運にも二人のスペルに挟まれた銀さん! 惜しくも脱落です!」
「あれは……もう、なんて言うか不憫よね……」
「…………バカなやつ」
「銀さん負けちゃいましたね。霊夢さん」
「まぁあのメンバーじゃあいつは優勝はできないでしょうね」
残ったのは魔理沙、藍、妹紅。
優勝するのは……




