日中もし戦わば
今回はちょっとマジメなことを書こうかな。
えーと、もしこの小文を読んでいる読者の中に自衛隊員の方がおられたら、ぜひ感想を頂きたい!
最近、危惧していることがある。
書店にいくと「日中もし戦わば」的な本がいくつも出版されている。
たいていは日本と中国の戦力を比較し、中国の軍隊がいかに遅れているか、前近代的で装備も日本に比べてたいしたことないという内容の本だ。
まあ、一応は軍事の専門家が執筆しているのだからそうなんだろうけど、ちょっと危ないんじゃないか?
というのはこういう書物が書店に氾濫したことが、過去にもあったからだ。
それは日米開戦前の、昭和初期からさかんに「日米もし戦わば」的な本が、いくつも出された。内容は煎じ詰めると「アメリカは精神力で日本に劣る。だから日本の大勝利間違いなし!」というものだ。
日本と中国が戦争になる……可能性はゼロではないだろう。
リアルに考えると、中国はまぎれもなく軍国主義であり、年々、その軍備を増強している。
日本は結局、軍国主義であった時期は一度もない。
戦争中のことはどうなんだ? という批判があろうが、太平洋戦争のころの日本は、いわば「天皇教」とでもいえる宗教に支配された一種の「神権政治」のもとにあって、純粋な軍国主義とはいえない。
純粋な軍国主義となにか?
それは軍事がすべてを優先し、他のことは後回しにされる体制だ。
中国はその意味で確実に軍国主義だ。
純粋な軍国主義の体制では、そう軽々に戦争は起こさない。
軍事がすべてだから、もし戦争に敗れればすべてを失うからだ。
だから勝てると思えば、躊躇なく戦争に突入する。
チベットに軍をすすめたのも、ベトナムに宣戦布告したのも、勝てると思ったからだ。
チベットの時は当時のチベット政府が、軍事を廃止し、軍事の空白地帯が生まれたためだった。
ベトナムもアメリカとの戦争に勝利した後、ベトナムは中国の言うことをきかなくなって、それで中国は懲らしめのため戦争に突入した。しかしベトナムは圧倒的な中国軍に対し、懸命の努力で押し返し、中国は敗退してしまった。
中国は日本と戦争に突入するだろうか?
「沈黙の艦隊」「ジパング」などで戦争を色々描いてきたマンガ家「かわぐちかいじ」が(それにしてもひらがなのペンネームって、文章の中に入れると読みづらいね)「空母いぶき」というマンガを連載している。
日本が空母を建造、中国が尖閣諸島の領有権を主張し、離島に進軍するという内容で、日本と中国の開戦
となるというものだ。
読むとかなりリアルで、軍事専門家が助言しているだけに、兵器や国際関係の描写も「ああ、そうなんだろうな」と思う。自衛隊は中国軍との戦いで、次々と犠牲者を出しながら、必死の努力で辛勝を上げていくというものだ。
でも、これはマンガだ。
もし実際に戦闘が始まると、マンガのようにいくんだろうか?
確かに日本の自衛隊は練度も、装備も中国軍に対し優位な状況にあるんだろう。
しかし士気はどうだろう?
この場合、士気とは命令に対する忠実さとか、真面目に任務をこなす、という意味のほかに実際に戦闘に突入した際の覚悟だ。
戦争とは当たり前だが、敵を殺すことだ。
もし戦闘が始まって、銃器の引き金を引くことが、敵を殺すことだという認識があるばあい、そんなに非情になれるものだろうか?
中国はよく知られているように「反日教育」がさかんだ。
幼いころから日本は敵国だ。日本人は野獣と同じだと教育されている。特に戦争中の日本軍は、ナチスと同じかそれ以上の殺戮部隊だと教えられているという。
そんな教育をうけている中国人は、日本人を殺すことになんのためらいも感じないだろう。
自衛隊はどうだろう?
まさか自衛隊員が「中国人は敵だ。殺してもいい」なんて教育を受けているわけがない。むしろ「自衛隊員は紳士であれ、他人には優しく」という信条で構成されているだろう。
もし戦闘が始まって、命令を受けて中国軍と対峙した場合、自分の行動が相手を殺すことだという考えがちらっとでも頭によぎった場合、どうなんだろう。
現役の自衛隊員なら「十分訓練されているから心配いりません」と答えるかもしれない。
正直、どうなんですか?




