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妖しい馨  作者: 月猫百歩
黄金色の箱庭
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終ノ怪


 紅い月は変わらず照らす。

 部屋も、着物も、衝立も、わたしも、何もかも。


 今日もわたしは紅い月を眺めて日々過ごす。

 時折訪れる紫色の煙に諭され、語られ、香を炊かれる。優しい香りがわたしを包んで、目を伏せているわたしを宥める。


 紅い鬼はわたしの傍へ毎日寄り、何度も何かしらを唄い髪を梳く。

 ただ寄り添うだけで、かつての無理強いや無茶を押し付けたりはしない。


 でもそれでも。わたしを放さないことには変わりない。

 紅い紐で縛られなくても、足が動けるようになったとしても、鬼の傍から離れられない。


 わたしが涙を流せばそっと舐めとって鬼は背中を撫でる。

 それから必ず「泣くな」と宥めてくる。


 生ぬるい常闇の風が吹けば、自分の体から妖しい馨が立ち込めた。

 あの肉を食べてから、ずっと絶え間なく香る妖しい馨。常闇の花の香りに似た、甘い馨。


 静かに目を閉じれば穏やかな日々が浮かぶ。思い出される仮初かりそめの太陽に照らされ、黄金色に輝いていた箱庭の思い出。


 きっとわたしはこれからも紅い鬼の隣で、この馨に包まれて暮らしていくのだろう。



 あの常闇の花に似た、妖しい馨に。





 ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

 お疲れ様でした。


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