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勇者飽きたから投資家になる  作者: 葉加多錬一朗


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最近の勇者


「クローネ、なんか苦戦してそうだったから助太刀してやったわよ」

「この声、まさか……」

凍てつくような霧の向こうからローブを纏い杖を片手に歩く女性のシルエットが見えた。

「久しぶりクローネ。3年ぶりくらいかな」

 頭良さそうなやつがつけてる丸メガネ、そしてあの杖、間違いない。彼女は……

「リラ、こんなとこで一体何を……て、てか営業妨害でしょ!これらの獲物は私が狩る予定だったんだから!」

「あら、でもすごい囲まれてたし、もうやるしかねえ!的なことも言ってなかったかしら?」

(さては結構最初の方から見てたな……)

「それに、あなた偶然外れたから良かったけどあいつら毒液吐いてたわよ。どうせ気がついてなかったんでしょうけど」

「べべべ、別に~?気づいてたけど、()()()避けなかっただけだもんね~」

(あっぶねえええええええ)

「てかさクローネ、この残骸たちはどうするつもりだったの?」

「あ……そういえば……」

 いつもはこの類いのモンスターを狩ったときは、解体して近隣の人たちへ配ったり、適当なところへ埋めたりしていたのだが、ここは農場のど真ん中。下手に地面を掘り起こすとどんな悪影響があるか分からない。

(こりゃ困ったなあ……)


 凍り付けになった肉の塊をどう処理しようかと悩むおれとリラの元へ、依頼主のジジイ…もとい農家が来る。

「おやおやクローネさん、ぼちぼち終わりましたかな?あと、そこの娘さんは……」

 まるで私が全て片付けましたと言わんばかりの態度でリラが答える。

「はい!私は個人投資……いや、魔法使いのリラ!こんな貧弱ガリガリモヤシ勇者のサポートとして、このモンスターたちを冷凍肉にしてやりました!」

(自分が倒したからって好き勝手言いやがって……)

「ああそうかいそうかい。ま、勇者だろうが魔法使いだろうが、こいつら何とかしてくれたわけだし、とりあえずあんがとな。ほれ、これが今回の報酬だ」

 依頼主はそういって腰に付けていた布袋をリラに渡す。

 リラの手のひらに袋が手渡されたとき、袋はチャリンチャリンと良い音色を奏でた。

「それじゃ、お前さんたちこれからも精進しなよ~」

「いえいえこちらこそ。おじさんもがんばって」

 おれとリラは農家のおっちゃんに手を振りその場を後にした………




 何時間か歩き続け、おれとリラは街へと戻ってきた。おれたちが生まれ育った街トロイオンスへ。

 リラは辺りをじっくり眺めながら手を前に組んで歩いている。

「真っ白でバカでかい城壁が無くなった分、日差しよく差し込むしなんだか開放感あるわね」

「いや、城壁が全部真っ黒のビル群に化けただけだ。あそこに出入りする商人はみんな死んだ魚みたいな目してるし、みんな似たようなスーツ来てるし、開放感とは程遠いところの何かだと思うけどね」

「昔はトロイオンスも魔物対策だの魔王軍迎撃だの理由を付けて冒険者をかき集めたり……それこそ、街を囲うように高い城壁を築いたり色々してたのにね」

「今やこの街、いや……街どころか王国の総人口の9割が商人で残りの1割が冒険者。おれはその1割の冒険者かつ、数少ない勇者の生き残りって訳だ。昔は冒険者ばっかりだったのにな」


 昔はそれこそ、いくつものパーティが一丸となっても歯が立たないほど強力なモンスターや何千何万もの魔王軍の大群が街へ襲いかかって来ていた。

 しかし科学の急速な発展とそれに伴う王国軍の武装近代化により魔王軍やモンスターが弱体化。

 銃火器を駆使する規律整った軍隊と剣と弓でしか戦えない冒険者とでは天と地の差が生まれた。

 次第に冒険者の居場所は失われ、ある者は高層ビルで勤める商人へ、またあるものは王国の兵士として新たな仕事というへ何の面白みも無い道へ流れ着いた。

 おれこと、モカ・クローネはそんな世間でもめげずに勇者として冒険を続けている。(ぶっちゃけ就活めんどくさかっただけ)

 

 おれとリラはただ歩き続けた。冒険者のパーティでなくサラリーマンが行き交い、城壁でなく高層ビルに囲まれた都会を大通りをただ歩いていく。

「てかクローネ、あなたどこに何しに向かってんのよ?」

「どこって……まあ明日も仕事しなきゃだから、役場に何か依頼とかクエストとか無いか見に行こうかと」

「なんか、勇者っぽいわね」

「まあ、どうせまた雑魚モンスターを狩ってくれ的なやつしかないんだろうな。どうせ……」


 ふと下を向いた時、子どもだったときの思い出が蘇った。鮮やかでエネルギーに満ちていたあの頃の思い出が。

「おれたちいつか、ぜってーに魔王をぶっ倒しに行こうな!ぜってーだぞ!」


(懐かしいな、昔こんなこと考えながらあいつらと城壁の外で遊び回ってたっけ……)

 昔のことを一言一句思い出す度に、自然と頭も下へ傾き体の力が少し抜けていく。まるで元気(げんき)の「げ」字も無いほどに。

「近頃の勇者や冒険者って大変ね。私も魔法使いだから一応冒険者だし気持ちはよく分かる」

 そう言って、リラが少し潜り込むように私の視界へ入ってくる。

 そしてリラは突然止まり、私の手を取った。

「じゃあさ、私と一緒にちょっとした冒険でもしてみない?」




明後日ですら使えるか怪しい豆知識

個人向け国債は銀行の預金よりは利率が良いが、国債購入後1年間現金化できなくなる。

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