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勇者飽きたから投資家になる  作者: 葉加多錬一朗


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勇者クローネ(個人事業主)


 とある日の夕方、草原。真っ赤な雲がまばらに浮かび外は薄暗い。

 街の高い城壁の長い影が草原を貫く。

 夕凪に乗り遅れた風が草がゆらゆらと揺らし、その草の合間を縫うように4人組に少年たちが一列になって歩いていく。

 先頭を歩く少年は白のTシャツ姿でズボンも穴だらけ。木の棒を振り回しながら歩いている。


「おれたちいつか、ぜってーに魔王をぶっ倒しに行こうな!ぜってーだぞ!」

 彼の後ろを背の低い少年が恐る恐る周りをキョロキョロしながら歩いている。彼は先頭の少年と違い服に汚れもなく身なりも整っている。

「クローネ、そんなこと大人になってからじゃなきゃ……城壁の外は危ないってお母さん言ってたし……」

 先頭の少年がくるっと振り返り後ろ歩きをして返事をする。

「うるせえマルク、それでも戦士かよ!てかもう城壁の外だし」

「せせせ、戦士だなんて、ま、まだ決めたわけでもないのに、それに僕たちまだ7歳だし……」

「ほら、リラもなんとか言ってやったらどうだ」

 彼のその更に後ろを歩いているのは女の子。

 丸メガネを付け薄着のローブを纏い身長と同じ長さほどの杖を持っている。もちろん彼女は……

「マルクにおしゃべり上手になれる魔法でもかけてあげようかしらね〜」

 その後ろを歩くのが最後尾の少年。青のパーカーに黒ズボンで弓矢を持ちぼーっと歩いている。

「そういうことじゃないと思うけど……」

「ユーロ、なんか言ったかしら?」

「い、いやいやあ…特に何も……」

 1番前の少年が突然止まり、腕を一杯に伸ばして持っていた棒を空へ差す。

「勇者クローネ、見参!」

「あぶな!いきなり止まるなよ!マルクが転んで泣いちゃうだろ!」

「リラ、そんないきなり止まったくらいでそんな___」

「うええええええんん!!痛いよーーー!!!」

(マジかよ……)

「待ってろ魔物!おれが必ず倒してみせるからなー!」




 それから年月は経ち、おれたちは大人になった。年齢で言うと21歳、もう立派な青年だ。

 おれは勇者クローネ、個人事業主として剣を片手に勇者をやっている。

 勇者とはどういうことをするかというと……

「お、クローネさん!今日はお願いしますね」

 おれが来たのは市街地から離れた郊外の山間部。

 仕事の依頼主は農家のおっちゃん。麦わら帽子にグレーのつなぎ、絵に描いたような農家のおっちゃんである。

「近頃うちの農場に草食獣が出るようになってね」

 おっちゃんはすぐ近くの裏山を指差した。

「ほら、あの林の辺りからわらわらと群れでやってきてうちの作物食っちまったりダメにしたりするんだ」

「なるほど、大きさはどれくらいでしたか?」

「う~んそうだなぁ……倉庫に置いてあるトラクターとほぼ同じか___」

 

 ガサガサ!!


 おっちゃんが指を指した方角から大きい物音が聞こえた。これはおそらく人間よりは遥かに大きい動物の類だろう。

「うわあ!出たぞ!出たぞ!」

 姿を現したのは体長2mを超える緑色の巨大な獣。背中には甲羅っぽいのもあるし足には鱗っぽいのもついている。長い下を時々ベロンと出してもいるので亀に似てるがどことなくトカゲのようにも見える。

 ギョロリとした目がこちらをチラッと覗いてくる。

「く、クローネさん、後は任せましたよー!」

「ええ!?ち、ちょっと〜!」

 この類の獣は温厚ではあるものの、変なことをしたりちょっかいをかけると毒を吐いたり捨て身の突進をしてくることもある。

 なので、こういうのと対峙するときは近所のおばちゃんの如く、遠くからゆっくりさりげなく近付いて急所を一気に突く。

 どんな種類、どんな種別かだって?知らないよそんなの。まあ適当に、“トラクターもどき”と呼称しよう。

 

 そんなことを考えてぼーっとしていたせいで5、6匹くらいのトラクターもどきに囲まれた。それぞれまるで私を獲物であるかのような目で見ている。草食なのに肉食おうとしてどうすんだよこいつら。

「あのクソジジイせめて野菜を見てくるとか言い訳作って逃げるんだな……」

 それにしても困った。3匹くらいなら何とかなるが、6匹はマズい。

 どうする、思い切り剣を振り回せばどうにかなるかもしれないが毒を喰らうと危険だ。剣の長さが大体120cmだか振り回しても当たらない可能性も高い。

 だが迷っている時間もない。

「もうとにかくやるしかねえ!勇者クローネ見参!!」

 危険覚悟で真正面に居たやつに斬りかかったそのとき

「スタンダードブリザード!!」

 小さい氷の粒を纏った空気の塊が周囲を覆い、同時にものすごい寒気が辺りを包み地面は凍りついた。

「クローネ、なんか苦戦してそうだったから助太刀してやったわよ」

「この声、まさか……」


続く(多分)

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