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第90話 斬豪VS大将軍

 ほぼ番外編みたいなものでやりたかっただけです。ちなみにアリシア陣営内ではベスト10位内の化物同士の戦闘です。

 それから2週間、最悪王サタンが観察にやって来るまで残り1週間となった。

 忙しなく皆が働く中一際暇な存在がいた…ヴァイシアである。

 本人の役職上、戦争がなければ暇であり配下(マザー)の仕事処理速度が変態的である為上司たるヴァイシアに仕事がやって来ないのである。

 ついでにグランさんから矛が届いた。

 軽く2週間半掛かったが楽しい仕事だったと語り聞かせてくれた。

 しかし装飾も凝っており何よりオリハルコンが装飾素材に使われている。

 とんでも無い希少素材をふんだん盛り合わせで使用したようだ。


 と言う事で久しぶりに暇な時間がやって来た。謁見式も終わったから仕方ないね。

 しかしいきなりやる事が無くなると困るというものであるハッキリ言ってしまえば暇過ぎる。

 大将軍としての仕事も有るにはあるがチエの演算能力をフル活用する事で1秒もかからず全て終わらせ把握出来るのだ。

 そもそも各軍団の戦力状況等はウガイ教官やマザー更には各軍団長が把握調節しているので仕事量が根本的に少ないのである。


 そう、最近だと多忙過ぎたので圧倒的に暇、身体を動かしたい!!と言うことなのだが単純な運動はステータスが異次元過ぎて無理、。

  

 模擬戦に関してもヴァイシアとまともに闘り合える存在などもはやアリシア級や義姉等の化物揃い。

 つまり暇確定…。

「あ、いるじゃん。」


 ヴァイシアは思い出したかのように呟くと空間転移を行う。

 そこには一人の青髪の男が居たカカオである。

「ん?日向か、どうしたこんな所にわざわざ。」


「暇だから久しぶりに殺らないかと誘いに来た。」


 唐突な誘いだがカカオはニヤリと笑う。そして勿論返事はイエスである。

 二人とシュンそしてルーナが居た世界でのゲーム『異能世界』でカカオはSランカーであり基本一撃で沈めてくる化物として恐れられていた。

 そしてそのカカオと事実上互角に戦えたのは"黒沢 日向"つまりはヴァイシアただ一人である。




 ヴァイシアは魔王ラリアナの亜空間へのアクセス権を貰っており何時でも死なない戦場での模擬戦が可能な状態でありそこでやる事となった。

 何故アクセス権を貰ったのかと言うと簡単に言えば気に入られだからである。

 ラリアナが、産まれた時代が早ければ魔王はヴァイシアだったと言う程度には成長曲線が異次元なのである。


 まぁこの成長曲線の大元は大罪系スキルの中でもダントツの成長補正とスキル、ステータスを奪う能力のせいなのだが…。

 それでも本人が嬉々として戦闘を行う戦闘狂バーサーカーである為である。

 




 と言う訳で模擬戦の為の亜空間にやって来た二人だったのだが…。

「なんで居るんですか?」

 ヴァイシアの左側にはマザー、各軍団長(トリュフ不在)、悪魔5柱王とシュン、ルーナ、軍団長見習いのセイレンである。

 まだいつメンと悪魔5柱王は分かる…だが、何故セイレンが居るのだろうか?彼女には配下を100名集めると言う宿題を渡したはずなのだが…。


「なんで居るんですか?貴女100人集まりましたか?」


 私が聞くとドキッと肩が動く、確実に集まっていなそうである。


「現在、56人ほどは集め終わりましてマザー様よりヴァイシア様の全力戦闘が観れると言われ…その…。」


 マザー…あんた何やってんのよ、宿題まだ終わってないやんけこの娘。

 私がマザーを見ると

「自身よりも格上同士の戦闘の見物は成長に良いですから、問題と判断しました。」


 …まぁたしかに動き方とかをみて自分の身体の動かし方が最適化されるなんてよくあることだけどさぁ。

 まぁ良いか。

 だけどぶっちゃけ視える範囲の速度ではないと思うよ!?絶対、今回は私もマジで余裕ないから。

 私はカカオを見るそして質問をする

「身体は?」

 たった一言、それだけで化物コイツがこの世界に適応したのかが分かるのだ。

 何せ前回シュンとカカオの二人で私と戦った時私は化物コイツの動きが視えていた。

 普通なら"視えない"、異能世界は本人の潜在能力を強制的に引き出す効果がある。

 結果、本来なら出てくる筈のなかった化物達がぞろぞろと現れるようになった。

 そして奴の『異能世界』内での異能はステラ、つまりは立体的に猛スピードで動ける能力。

 怪物本来の力のアシスト。

 奴の本来の力はその剣才とフィジカルである。

 

「試せば分かる…まぁ、一言いうなら、初手で死ぬなよ。」


 そう言い終えるなり至って普通の動きで近寄ってくるカカオ。

 ヴァイシアは左手に矛を持ちチエに本気でアシストするように命令、完全に臨戦態勢、本気マジである。



…………………………………………………




 見物組、シュンとルーナは一気に血の気が引き全力で後退する軽く100m否、それ以上。

 軍団長達や悪魔5柱王はヴァイシアの勝利を疑ってはいないが、シュン達は知っている。

 カカオがガチになった場合ほぼ確実に狙っていない相手にも死が平等に振り注ぐのだ。

 そして喰らったら即終了。

「あんたらも逃げた方が良いよ!」

「逃げてっ!!」

 

 シュンとルーナの言葉を本気にはしていない軍団長達だったが彼等もヴァイシアが本気になっているのを観るとヴァイシアの攻撃には耐えられないと後退し始める。

 誰もカカオがヤバいとは理解していなかったのだ。


 しかし時既に遅し。


 ヴァイシアが先行を取った矛が振り下ろされると同時に爆発的なエネルギーが放たれ凄まじい距離に斬痕が生まれる。

 しかし、カカオは一切躱していなかった。

 受け止めたのである剣の柄を使い片手で、振り下ろされた矛の刃を…矛の柄がしなると同時にヴァイシアから零れたのは

「マジか…。」

 の一言である。

 ステータス差としては軽く100倍、そう100倍である。表向きならヴァイシアが圧倒的に勝利を掴んでいる。

 普通ここまでのステータス差ならば技量の有無が勝敗に関与できなくなるからだ。

 しかし、防いだ。

 そして、鞘から刃が引き抜かれると同時に、観戦組はシュン達の警告の意図を理解する事になる。


 "死ぬ!!"そう直感したマザーは即座にセイレン、メアリス、クロリス並びに悪魔5柱王を地に伏せさせ自身も身を低くする。

 ギメルもヤバさを理解したのか即座に上空へと飛び茨木童子は全力頭を下げる。


 頭上を凄まじい斬撃が飛ぶ、カカオから繰り出された斬撃であり…。

 同時に一撃即死の攻撃である。


「あ、ありがとうございますマザー様!!」

「本気で死ぬかと思ったぜ…。」

 クリスタとコハクが同時に呟く創生期から生きる彼女等でも始めての"完全なる死"それを強く予感したのだ。

 悪魔達からの感謝を聞きつつ同時に全員を抱えて一気に後退するマザー。

 

 死ぬと直感した、だからこそ"再生系能力"並びに"防御系能力"、が完全に機能停止になったのだ。

 何故なら死んだと思った、所有者が死亡したと認識した為であるそれ以上もそれ以下も存在しない。

 「なんなのですか!?化物アレは!!」


 珍しくマザーの感情が荒ぶりシュンとルーナに問いをぶつける。

 スキルが機能停止する一撃など聞いた試しがない故の完全なる死を直感したためである。

「元々、亜人種とは言えほぼ人間並にナーフされてたからまだ戦闘になってたんだよ…。」

「し、死ぬかと思った…てか、アクセル前回じゃんカカオ先輩?!」


 ルーナは完全にパニックっているがそれもそのはず一番カカオのヤバさを理解しているのは異世界組だからである。

 そしてヴァイシアに目を向けると、間一髪のギリギリで攻撃を凄まじいブリッチ体勢で避けていた。

 間髪入れずに振り下ろされた虚斬にもギリギリで躱している。

 …が、それでも肋に斬撃跡が浮かび血が噴き出す。

 

(チッ!!スキルが反応しなくなった!!フィジカル戦突入じゃねぇか!!)

『右から来ます。』

(無理無理無理無理無理無理無理!!!!)


 ギリギリ躱したつもりだったが足が斬り飛ばされるヴァイシア、横薙ぎの一閃だったが凄まじい威力である。

 腕鎌による防御を試みたが腕鎌ごと斬られたのでほぼ無意味な足掻きだったようだ。

 カカオは納刀と同時に腰を低くし居合い斬り"抜刀"の構えである。


(と言うか!!物理攻撃無効はどうした!!)

『一次的な機能停止状態です。』

(対策は?!)

『気合いと根性あとは…』

(あとは?!)

『運…ですかね。』

(マジかよ!!)


 そうは思いつつも実際運に頼らなければ一撃でお陀仏の攻撃である瞬時に残った足による蹴りを放ちカカオを吹き飛ばすも数km飛ばされた辺りで空中で停止。

 次の瞬間にはヴァイシアの背後へと周り斬撃を放とうとするが罠を張るには十分であった。

 チエによる地裂魔法:宮殿球体アースボールによってカカオを閉じ込め内部のカカオに向け地裂魔法:喰地盤の槍状の巨大な岩連続攻撃を放つ。

 更に大気魔法:真滅空によって酸素並びに摩擦抵抗を消し去る。


 普通なら串刺しに終わり肺内部の酸素ごと消したので肺が潰れて死ぬコンボ魔法ではあるがなんの問題もないとばかりにアースボールを八等分、スイカの切り身の様に斬り出てくる。


「刃毀れなし…すか?」


 流石にドン引きするヴァイシア、神器ゴッズ級とは言え大魔力をぶち込んだ大魔法、無傷なのは良いとしても刃毀れの一つや二つあると思っていたのだが…。


「斬るときに研いでるからな。」

「は?」

 予想外の一言である。

「だから刃毀れしてもしなくても斬った摩擦とか抵抗?とかで研磨して刃を常に研いでんの。」


 その場が凍りつく、何を言っているのか…それを理解出来た者など誰もいないのだ。

 強いて言うならば日本刀で斬ると普通なら多少の刃の変形や刃毀れ、キレ気味の低下は達人を超えた剣聖級でもほんの僅かに起こるものである。

 

 しかし怪物が言う事が事実ならば、常に最高品質の斬撃を放つ事が出来ると言う事である。

 そして再生能力停止、更に低下の原因はこの研ぐ行為でありとてつもなく細かな刃が大量に刺さり摩擦で溶け固まるので再生が追いつかなくなっているのである。

 神器ゴッズ級の剣の粉刃での再生妨害である。

 

「と言う訳でそろそろ斬るぞ」


 と言うなり抜刀するカカオ、ヴァイシアは未来攻撃把握を習得し応戦。

 本来ならばこの権能、完全に動きを把握出来る万能能力なのだが…把握した攻撃とは別方向から斬撃がとんで来た為に矛の柄が中央から真っ二つに斬り裂かれ腹もかなりの深さ斬られる。


 しかし両腕で矛を持っていたのでそのまま交差の連撃を放つも身体を回転され躱される。


 内臓が出ないだけ、いや、寧ろ真っ二つになっていないだけでも奇跡な状況である。


(この権能意味ないじゃねぇか!!アイツ…さては殺気で誘導しやがったな…。チエさん!権能解除!!普通に負ける!!)

『了解しました。未来攻撃把握を解除します。』


 新能力ではあったが相手が悪過ぎる故に反応誤算エラーを起こしまくると判断したヴァイシアは即座に権能を遮断するハッキリ言ってしまえば使っていたら本来回避可能(欠損不可避)の一撃を避けられないのだ。


 しかし唐突にこの戦いは終わりを迎える。

 ヴァイシアの首が斬り落とされたのである。

 

 カカオが納刀している光景が観戦組に写っておりカカオが抜刀したのだろうが誰にも反応出来ていなかった。


「しかし良いな、この身体慣れると動きやすい動きやすい。」


 カカオはそう呟くと模擬戦終了とばかりに座り込む。

 ヴァイシアは頭無しで動き出し頭を掴むと首に接合、再生した。虫なので普通に再生出来るのである。


「お前強すぎだろ…。前より強いじゃん、。」


 ヴァイシアも座り込むとカカオに語りかける。

 カカオは笑うと

「斬りやすいお前が悪い」


 と言う。ヴァイシアは苦笑い。

「まだやる?」

「ヤダ。」

「あそ〜。」

 

 こうしてヴァイシアの暇つぶしは完全敗北に終わった。

 

 

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