第76話 魔蟲四姉妹、次女と三女
魔蟲族とは二つある昆虫型の魔物の一つの総称であり常に四体の絶対的支配者が頂点に君臨する完全実力主義の種族である。
もう一つの魔虫族とはまるで違う戦闘能力と知性を持ち圧倒的数と質の暴力を誇る。
ヴァイシアのような新参でありながら圧倒的な速度で力を増大させていく怪物は"例外"である。
しかしその例外の怪物でさえ一切手に負えない怪物が三名存在する。
そして彼女もそのうちの一人
「フハーッハッハ!!どうした【加護の勇者】!!私に一撃入れてみろ!!」
人間の定める枠を凌駕し魔族全体の中では魔王9名に次ぐ準魔王級の実力者の一人、魔蟲族【殺戮蜂】ヴァルアである。
魔蟲族の支配者達四体の中では一番被害を出し有名な存在である。
そして奇しくも相対する勇者は【加護の勇者】グロウスであり過去の因縁の対決となったのである。
御伽通りの、先祖から伝わっていた通りの実力と感嘆し同時に恐怖を覚えるグロウス。
当然である。死神の加護による再生妨害を受けて尚目に見える速度で再生し加速の加護による出鱈目な剣速の剣技にもヴァルアは対応してきていたからだ。
人としての領域を逸脱した存在にのみ与えられる加護である剣聖の加護もフル活用しているにも関わらず一切致命傷を与えられない。
しかし残念ながら"現状"ヴァルアもまた攻撃がグロウスに通る事は無かった。
初見の加護と予見の加護による完全防御並びに勇者として固有能力である絶対防御があるからだ。
条件をクリアしない限りダメージが通らず、逆に条件をクリアしても絶対防御で阻む事が出来る。
まさに"絶対"の防御能力を持っていた。
しかしグロウスは着々と追い詰められていることを感じていた。
出し惜しみ出来るような相手ではない上にピンポイントで条件をクリアした攻撃を繰り出してきていたからだ。
(まずいね、確実に条件を攻略した攻撃が増えてきている。絶対防御を破られたら多分一撃で死ぬ高火力攻撃で条件を攻略されている。)
それは明らかなる現実であった。
そもそも同じ位置に同じ威力で同じ角度で攻撃しなければダメージが入らないという無理難題の防御を神がかり的な速度の超剣撃の前に攻略すること自体不可能である。
しかし相手が格上ならば話が変わる。
格上が上であればある程に余裕があり余裕が大きいほどに条件を攻略することなど容易くなるのだから。
ましてや知性を持つ存在が目の前のヴァルアだけではないとすれば尚更であった。
『うっしー!だいたい分かったよヴァルア!コイツ、絶対防御も持ってるわ!』
(攻略いける?)
『余裕〜。アルティメット3つよ?余裕も余裕よ!任せな!』
ヴァイシアのチエと同等格の究極能力である『分析之王』ルリアである。
圧倒的な分析能力により現状確実にグロウスの行動を先読みし対処する事が出来るようになっており攻撃を99%の条件攻略に引き上げていた。
そして、ルリアから絶対防御を攻略したと合図を受けグロウスとの対決を終了させるべくヴァルアの攻撃がより正確となった。
(マズッ!)
毒針の一斉射撃。
数千万を超える毒針が一斉にグロウスを襲うが山一つ斬り裂く奥義 煉風練斬 により対応する。
しかしコレは揺動であった―大技直後の行動遅延を狙った揺動。
グロウスは気力を振り絞り接近する数千万の毒針を一気に斬り捌いていく。
捌ききった!という達成感と同時に即座に接近するヴァルアを斬り裂く一撃を放った。
しかし
ヴァルアの一撃は既にグロウスの脊椎ごと半身を左腕ごと抉り飛ばしていた。
究極能力ですら突破不可能とされる絶対防御を破るのは並大抵のことではなかったがヴァルアの究極能力『法則之王』により絶対防御は崩壊したのだ。
更に究極固有身体である『暴死毒針』の死毒、死酸、流出血、死痛、衰弱死、呪死、死蝕を含む激物である"死常の針爪"により流し込まれている。
勿論、《法則之王》による法則操作によってグロウスの絶対弱点となっており一筋の生きる希望など無く、存在破綻により魂ごと完全消滅する為、未来永劫復活することもない。
完全なる死をグロウスは感じていた。
「まさか、僕の無理難題の防御を突破して…僕の事を殺す相手がいるな、てね。」
地面に倒れ痛みに悶えながらグロウスは呟く。
「ま、私だから勝てた節はある正直言えばお前相手では私の妹であるウネヴァやヴァイシアでは勝てなかっただろう。
姉様では秒殺であっただろうし…ま、誇れ人間!貴様は最恐たる四体の支配者二体よりは強いのだからな!」
ヴァルアは既に息絶えたグロウスに向け言い放った。
妹を殺しかけその姿すら変えた忌まわしき人間の中ではマシな者であったと感じ見送った。
しかしグロウスは知らずに死ぬことができ幸運だっただろう。
何故ならグロウスの代々受け継がれてきた究極能力『加護之王』と勇者固有スキルである絶対防御はヴァルアにコピーされていた為である。
自らの力で相手を強化してしまったなど、彼にとっては屈辱以外の何物でもないのだから。
ウネヴァは斬り落とされた片腕を見て感嘆としていた。四姉妹の中でも最高硬度を誇る自らの防御を容易く目の前の女が突破し腕を切断したためである。
目の前女 メイン・ジズナーには勇者の中でも有数の覚醒勇者と呼ばれる存在である。
覚醒勇者とは階級【勇者・魔王級】を凌駕した存在であり存在値1億の壁を突破した存在ともいえる。
現在確認される覚醒勇者は三名でありフェネルフィシア国王もまたその一人である。
【化物を超えた化物】という二つ名を持つ彼女だがそんな彼女でも誤算であったのは一重にウネヴァの圧倒的な防御能力である。
勇者の固有スキルである絶対切断を神器級に多重発動させ更に本気の身体超強を発動させてようやく切断出来た程には硬い。
更に数発の超丸である崩壊弾すら数十発と耐える単純な防御能力を突き詰めればここまでの脅威になるものか!とジズナーは感嘆していた。
しかし右手に持つ神器級:亜銃・激に戦闘中に溜めていたMPは満タンである。
最大出力の崩壊弾を放った。
崩壊弾とはあらゆる崩壊を招く虚無エネルギーを流用した超攻撃であり防御など喰い破り存在ごと崩壊させる攻撃である。
しかし人間の扱える虚無など限界がある為に本来なら即死の攻撃がまるで意味を成さなかった。
「どうなっているんだ貴様は!」
当然である。
ダメージ自体は入っている筈であり再生も妨害しているが全ての攻撃を軽傷で済ませられているからだ。
「…いや、けっこう効いてるよ君の攻撃…一割も削られたのは生まれてから数百万年で初めてだ。」
その言葉にジズナーは絶望すら出来なかった。
まだ一割しか削れていない、という事実を突き付けられつつも攻撃自体は通っているという希望があったからだ。
まだこの少女を倒せる希望はある。
そう考えたジズナーは更に身体強化を発動し戦闘能力を増幅させていく。
更に戦闘開始時から準備を整えていた最高火力攻撃の準備が今整った。
ジズナーにはむしろ希望が見えていた。自分がかつという希望が、。
自身の持つ究極能力『崩壊之神』は使用までにかなりの時間が必要となる。
その時間は戦闘開始時から10分である。格下ならば10分は持たず格上ならば耐えられるかどうかのラインである。
しかしこの10分という制約を受けている分、その火力は確認される究極能力の中では最恐格とされる。
剣と銃を同時にしまい両手を前に出しその力を解放する。
ウネヴァとジズナー含めた全ての空間が白き崩壊の光によって照らされていく。
莫大なエネルギーが一点に集中し虚無のエネルギーが臨界点に到達しようとしていた。
そしてその制御の為に使用されるのは神祝子エネルギーである。
一度亜空間外で放たれれば星もろとも銀河系の約1%が一瞬で消失する程の破壊力である。
ウネヴァからすれば完全にふざけんなという話である。
今、手を出せばラリアナがまだ亜空間強化を間に合っていない為この亜空間が保たない。
亜空間が崩壊すれば周囲の存在全てが死滅することがほぼ確定であり更に姉や妹にも同等の被害が発生する可能性が高かった。
一気に不利な状況となったが、コレはウネヴァの落ち度ではない。
いきなりゼロから魔王の生み出した亜空間崩級の虚無エネルギーを生み出し神祝子エネルギーを両立させたジズナーの能力制御が予想以上であったのだ。
ならば最初から全力で対応すれば良かっただろうと考えるだろうがウネヴァの究極能力《重力之操》は『精査之王』が本気で制御しても制御仕切れない程の力を有しているせいでまともな使用が困難なのである。
究極能力へと至った世界系のスキルの弊害といえる。
「私のほうが一枚上手だったようだね、さようならだ!"集結死帰結"!!」
あまねく存在を許さない最高位エネルギーとあまねく存在を祝福の名の元に葬り去る神祝子エネルギーの絶対的な対消滅エネルギー。
銀河系の約1%を破壊する理不尽攻撃でありジズナーの最大火力奥義であった。
ウネヴァは速やかに究極能力『堅牢生体』を最大出力で発動した。
更に『重力之操』を展開し対消滅エネルギーを相殺する。
しかし単純な火力に侵蝕する効果まで付随した最悪のエネルギー波までは防ぎきれず全身に今まで感じた事のないような激痛を感じる。
しかし最後にはステータス由来の素の防御能力の御蔭で何とか生き延びた。
既に満身創痍であり、辛うじて生きているという状態である。
(だぁ〜痛ッ!!最悪だわ〜。けど相手ももう…)
ウネヴァの目の前には莫大な侵蝕エネルギー波を放ち自らのHPを三桁まで削った存在が同じく満身創痍で生きていた。
自分で発動した最終奥義だが自爆技であり到底耐えられるものではなかったらしい。
それでも自身の攻撃という最大の理由によって死を免れたのだ。
「貴様、まさか生き延びるとはな、。」
と息も絶え絶えの声でいう、
ウネヴァは少し不満そうに、
「流石にここまで減らされるのは予想外だったよ。人間の割にやるじゃん。」
そして、その言葉の直後、亜空間が揺らいだ。
何を隠そうウネヴァの最大出力の攻撃が発動するからだ。
「とっておき観せたげる。」
ニヤリと笑いながらウネヴァは思念伝達を行う。その相手はラリアナである。
(ラリアナ様、本気で行くので亜空間の補強お願いします。)
すると不満そうに
(マジか〜。さっきのでも割と疲れたんだけど?、まぁ良いやそれで倒しなよ?)
(言われなくても)
そしてジズナーは最悪の奥義が解き放たれる前にウネヴァを倒そうと銃を抜く。
しかし…既に遅かったようだ。
「バイバイ、"全方位無制限重力"」
文字通りの圧殺であった。
いや、正確にいうならば集殺と言ったところだろう。
発動された全方位無制限重力はジズナーを起点としてその絶大な力を発揮していた。
全方位、360°上、下、左、右、斜め、そして内側と外側ジズナーを構成する原子全てに過干渉を起こし結果的に原子レベルで何も残らず完全に崩壊させた。
コレはまさしく神業と呼ぶに相応しい力であり想定されていた時空間への干渉すら無くジズナーという存在のみを崩壊させたのだ。
まさしく怪物である。
「ゲッホ、ゲッホ、流石にしんどい。ラリアナ様〜しばらくここで休んでいいですか?」
『いいよいよ!てか休みな!』
「ありがとうございま~す。」




