20.バカ国王のつぶやき(語り部:ハゲ国王)
あのエセ勇者め。自分が語り部だからと、ワシのことをハゲとかバカとか好き放題言いおって。というかサブタイトルにまで……こっちはスィグの仕業だな……
この作品が終わったら、たっぷりと灸を据えるから覚えておれよ。あのバカ2人!
まあ、その話は退けておくとして、ワシの話でもするとしよう。
わしが愚娘ミツボーの反乱を知ったのは、反乱が起こった2日後のことだった。
まさか、あのタイミングで反旗を翻すとは、ワシ自身も予想しなかった。あの娘は、まさかと思うタイミングで行動を起こすから侮れん。
おかげで国を二分する大乱になりそうだ。くそ、こんなことなら真っ先に始末しておくべきだった。
しかしまあ、備えさえあればどうにかなるものだ。
備えとは、まだ乳飲み子の皇太子と、側室である妻を同行させていたことだ。
小娘とはいえ、黒い噂の絶えないミツボーと一緒にするのは不安だったので、影武者を王宮に残し、本者はこうして手の届く範囲に置いていたのだ。
この子は晩年になってやっと授かった男の子だ。ワシの血を引くこの世で唯一の男の子だ。今までどんなに望んでも生まれず、苦しんできたか数えきれない。
絶対に手放さんぞ。ワシが生きているうちに邪魔になるものはすべて排除し、我が子が仕事をしやすいように全て整える。
予定より早いが、まずはなんとしてもミツボーの奴を倒すことに専念する。あいつはワシから見ればすでに姿を現している獣だ。国を二分するほどの戦いになりそうだが、今までに何度となく戦いを経験してきたワシを甘く見るでない。必ずうち滅ぼしてくれるわ!
そう自分を奮い立たせていると、道の隅を歩いている農民の姉妹が見えた。頼りない妹としっかり者の姉という印象だ。
なんだか気に入らん。しっかりした姉を見ていると、どうしてもエマニュエルのことを思い出してしまう。すでに行方不明となった女だが、頭から離れん。
皇太子が生まれた時、真っ先にエマを嫁に出して皇太子の邪魔にならないように計らおうと思っていたが、気の利かぬ家臣どもが猛反発しおった。
皇太子の年齢では、家を告ぐのは無理だと言うのだ。せめて、エマニュエルを後見人として立て、妻を娶れる歳になるまで庇護を受けろなどと抜かす者までいた。
そんなことをすれば、完全にエマの傀儡となってしまうではないか。
ミツボーのように、あからさまに野心をむき出しにする者は危ないが、エマのように我を出さない者はもっと危ない。
エマの全てを見透かしたような目を見ていると、弟のことを思い出す。
父上がご存命の時は羊のように大人しかったが、死んだ途端に本性を現して謀反を起こした危険な男だった。家柄も大したことが無いくせに、何人もの重臣が弟を新たなリーダーに選び、ワシは王都から敗走するほどに追い詰められた。
たまたま嵐が来たから助かったが、もし来なければ討たれていたのはワシだっただろう。
とにかく、エマが死んだという確たる証拠が見つからない以上は安心できない。今までは跡取りがいなかったから目を瞑ってきたが、あの弟のような眼差しが嫌で仕方がない。
反乱を起こしたミツボーともども、皇太子の邪魔になる存在は確実に排除しなければな。
馬車が止まると、みすぼらしい格好だが目つきの鋭い男が走ってきた。こやつはワシが重用している密偵だ。なにか良いニュースが得られれば良いのだが……
「陛下!」
「なんだ?」
「反逆者エマですが、目撃者の話によると……黒毛と赤角のユニコーンと行動を共にしていたそうです」
黒毛と赤角という言葉を聞き、ワシは背筋からじわりと汗がにじみ出ていることに気が付いた。黒毛と赤角の一角獣だと!?
「何かの……間違いではないのか? 奴が……まさかファルシオンが生きていたとでも……」
「確かに、騎士殺しは死んだはずです……討伐隊が角を持ち帰りましたから……ですが……」
そう言うと、密偵はバツが悪そうな顔をしたまま黙り込んだ。
「なんだ。言いかけたのなら最後まで言え!」
「ははっ……角は私も拝見しましたが、若馬のモノのように美しいものに感じました。倒したのは……ファルシオンではなく……言いづらいですが……」
「親族……それも仔馬に過ぎなかったと?」
密偵は表情を曇らせたまま「ははっ……」と答えた。
確かに、当時の騎士団長さえ返り討ちにし引退にまで追い込んだ一角獣が、たった5人の騎士に討たれことには違和感があった。
「…………」
もし倒した黒毛ユニコーンが仔馬だったとしたら……親の、本者のファルシオンは怒りに燃えているだろう。そんな奴がエマを見たら、憎き王家の人間として殺される。そうに決まっている。それしかありえない。
「考えすぎだ。黒毛で赤角のユニコーンなどいくらでもいる。とにかく今の段階では情報が少ない。もう少し集めてきてくれ」
「は、ははっ!」
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