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11.海賊船の改修

 翌朝に目覚めると、漁村の民たちが船の墓場に集まっていた。

 一体何事かと思いながら起き上がると、漁村の民と話をしていたグラディウスがこちらを見て言う。

『おはようお父さん』

『ああ……それよりも、この人だかりはなんだ?』

『船の修繕を彼らに手伝ってもらおうと思ってね、ここまで呼んで来たんだ』


 相変わらず手際がいいと感心したが、ふと疑問も浮かんできた。

 人間は基本的に無償で動くことはないはずだ。一体グラディウスはどんな対価を出して、彼らをここに呼び寄せたのだろう。

 そう思っていたら、漁民の1人が不安そうにこちらを見た。

『おい、一角獣のダンナ……』

『なんだ?』

『きちんと船は使えるようにしてやるからよ。食った悪霊どもを吐き出さないでくれよ?』


 は……? と思いながらグラディウスを見ると、何食わぬ顔で一番状態の良い船を眺めていた。

『ちょうど船尾の辺りの損傷も激しいから、ここはそっちの状態のいい船とドッキングしてプロペラを取り付けよう』

 グラディウスはこちらを見た。

『お父さん。確かお父さんは錬金術で、木材を加工するのが得意だったよね?』

『あ、ああ……やってみよう』

 小生は錬金術の専門家ではないため、岩をパンに変えたりすることはできないが、枯れ葉や朽ち木から木材を再加工したり、貝殻からコンクリートを作ることくらいならできる。

 


 海賊船として修復できそうな船の中に入ると、傷んでいる個所やシロアリに食われている場所から重点的に再錬成を行い、半日ほどで主だった場所の修繕を終えることができた。

『これで沈むことは無いと思うが、内装は壊滅的だな……エンジンの方はどうだ?』

 レンチは船の図を眺めながら答えた。

「これを動かすとなると……ここからここまでを機関室にしないといけないわね」


 けっこう広い部屋が必要なのだなと思っていたら、彼女は更に言った。

「あの鉄の車のバッテリーを搭載しても、稼働限界は5時間と言ったところでしょうね。それを越えて動かすとなると、貴方が動かしながらグラディウス君が魔力を充電する……みたいなややこしいことをしないといけなくなるわ」

『それまでに海流か風を捕まえろ……ということか。ちなみに……速度はどれくらい出る?』

「いえ、それよりも前にね……船を動かすには、エンジンだけでなく大きなオールのようなもので、船に推進力を与えないといけないの。それをどうすればいいのか……」


 その言葉を聞いたとき、小生の頭には風車や水車のイメージが浮かんだ。

 あれは小麦などを引くカラクリだが、逆のことを船尾で行えば推進力を得られるように思える。

『丈夫な風車のような装置を、船尾につけて高速回転させる……というのはどうだ?』

「プロペラ式。実現可能かしら……」


 レンチは少し思案していたが、すぐに表情を変えた。

「プロペラを海中に置くのだから塩水による腐食が問題ね。それに、回転中に海藻が絡んで止まる危険性……そもそも水かきの金属部分を、ミリ単位の誤差も許されない形状にしなければならないから、それこそ職人的な腕がないと実現が難しいわ」

 その話を聞いた小生も、自分の考えていることが如何に困難なことかが理解できた。

『仮に製作できたとしても、プロペラを止めている間に貝でも張り付けば、故障の原因にもなりかねんな』

 レンチも悔しそうに言った。

「多分だけど、ファルシオンのようなことを考えた人はいると思う。けど……困難が多すぎるわ」


 ここは、素直に帆とオールによる航海を目指すしかないだろうか。いや、オールで動かすとなれば、それこそ何人もの人間を船内に入れることになる。

 そうなると食料の問題はもちろん、ウマに指図されて反感を強める人間も現れて争いが起こる危険性も出てくる。


 しばらく悩んでいると、グラディウスが視線を向けてきた。

『ねえ、父さんにレンチさん……』

『どうした?』

『これと鉄で、合金を作ることってできる?』

 グラディウスが持ち出したのは、ボーキサイトと呼ばれる装飾用の金属だった。どうやら打ち上げられた船の残骸の中に、大量に入っていたようだ。

「これ、お金持ちの間で流行っている装飾品の原料じゃない!」

『資金調達でもするつもりか?』

 グラディウスは首を横に振った。


『愚生たちウマや彼らのような民草が財宝を持っていても奪われるだけでしょ。それよりも、魔法筒の応用で……船に推進力を与えられないか考えているんだ』

 魔法筒とは、魔王軍が好んで使う魔法を撃ちだす大砲のことだ。杖や魔導書で放つ場合は一流の魔導士でも50メートル程度の射程でも、魔法筒で圧縮を行えば倍以上の飛距離を出すこともできる。


「魔導砲ね……構造は知っているけど、資金と資材不足で作れなかったわ」

『構造の応用だな。つまり船底から海水を取り入れ……水を圧縮して船尾に放出するということか?』

『うん。圧縮なら愚生ができる。問題は圧縮した水を船の外に放った時に、ノズルが壊れないかどうか……ということなんだ』

『明日の朝にでも、錬金術で試してみるか』


 翌日。小生は拙いながらも錬金術を用いて、鉄くずを再加工すると、続いてボーキサイトからアルミニウムという金属を取り出した。

 それだけでなく、鉄とアルミニウムを粉末状にし、ムラなく混ぜ合わせているとグラディウスは言った。

『お父さん。かまどを作ってもらったよ!』


 粉末状の粉をかまどに入れると、小生は炎の角を光らせて高温高圧で熱して溶かし、鉄とアルミニウムを合体させた。

 それを、あらかじめ作っておいた岩製の型へと流し込み、冷やせば完成である。

『同じものをもう一個作ってね。2ヶ所から同時に発射しないと、船が真っ直ぐに進まないから』

『ウォータージェット式の推進口……とでも言っておくか』


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