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 フィオは、ラウルの誘いで彼のパーティに入って日々ダンジョンに潜っている。ひと月のブランクがあったが、訓練を欠かさなかった事で、どうにかみんなに着いて行く事が出来た。ようやく冒険者らしく、ダンジョンを冒険できて、フィオは嬉しかった。

 二度、三度と共に潜る内にパーティ間での信頼も芽生えて来る。

(なんだか、冒険者らしくなって来たな!)

 フィオは無事にダンジョンから帰って来て、晴れやかな気持ちになった。

(あ)

 ダンジョンから地上にワープして来たら、離れた場所にアーヴィンドが座っているのが見えた。不愉快そうな顔でフィオの顔を見た後、立ち上がって去って行った。

(アーヴィンドさん!)

 追いかけたかったが、二の足を踏んだ。

 彼は、フィオに世話になった事が嫌だったらしい。

「フィオ! 反省会開こうぜ!」

 肩を落としていると、ラウルに声をかけられる。

「あ、あぁ」

 ダンジョンから帰ったら、今日の反省会を開いてパーティの欠点を洗い出して、次への課題にするようにしていた。

 フィオは去って行ったアーヴィンドに後ろ髪を引かれるような思いをしながら、ラウルと酒場に向かった。

(アーヴィンドさんと話したいなぁ……)

 けれど今の彼に、話しかけるのは度胸がいった。


 酒場に行って反省会を開く、。

「今回の反省は、そんなところかな……」

 フィオは頷く。

「ねぇねぇ、フィオって黒帝に最初のバディ組んで貰ったって本当なの?」

 ヒーラーのリリーが聞いて来る。

「そ、そうだよ」

「黒帝ってアレでしょ。一人で、八十階を踏破したって言う……」

「七十階のレッドドラゴンを一人で倒したって話も聞いた事があるぞ」

 タンクのテオが言う。

「アーヴィンドさんなら、出来るんじゃないかな……」

 アーヴィンドが褒められると、フィオも嬉しくなってしまった。

「けど、気に入らない奴がいたら、ダンジョンに連れて行って埋めちゃうって話も聞いたよ……」

 リリーが震えながら言う。

「酒場に居た五十人の冒険者を半殺しにしたって聞いた事がある……」

 テオが青い顔で言う。

「……」 

 フィオは黙った。

(やりかねない人ではある……)

「けど、良い先輩だったよ……、なんだかんだ面倒は見てくれたし」

 フィオが今こうして冒険者を続けられているのは、彼に鍛えて貰ったおかげである。

「確かにフィオは強いよな。俺たちの中では一番鍛えてるのがわかる」

 師事を受けると言う事は、フィオの評判がそのまま先輩であるアーヴィンドの評判に繋がって来ると言うわけである。

(アーヴィンドさんの為にも、立派な冒険者になるぞ)

 そうしたら、アーヴィンドの不穏な噂も少しは薄まるだろう。

「なぁ、みんなノヴェリの日には、先輩に何を贈るんだ?」

 ラウロが別の話題を振ってくれる。

「私は、手作りの髪飾りを贈るの。先輩が好きそうな奴を作るの」

「俺は、パウンドケーキを焼こうかと思ってる。今度、釜を借りないといけないんだ」

「フィオは?」

 訪ねられて、フィオは首を傾げた。

「ノヴェリの日ってなんだ?」

 三人が驚いた顔をする。

「知らないのか? ノヴェリの日は、一年に一回ある先達に感謝をする日だよ。まぁ。基本的に自分が師事を受けた先輩に物を贈る日だ」

「へー!」

 この街にはそんな風習があるのか。

「アーヴィンドさんに、何を贈れば良いんだ……」

「なんか、好きそうな物とかないのか?」

「うーん」

 フィオは考える。

 そして、思いついた。

(そうだ、アレが良い)

「思いついた」

「何を贈るんだ?」

「えっとね……」



 ドニは受付に現れた男をじろっと睨む。

「アーヴィンド、フィオなら今日もダンジョンに潜ってるわよ」

「そうか……」

 アーヴィンドはそれだけ聞くと去って行こうとする。

「ねぇ、アーヴィンド。お礼は言ったの?」

「何故、俺が礼を言わなきゃならないんだ」

「あんたねぇ……記憶が無いとはいえ、フィオに世話になったんだから、礼ぐらいしなさいよ」

 アーヴィントは視線を反らす。

「もう……毎日、フイオが何してるのか聞きに来るんなら、さっさとお礼を言いにいけば良いのに。ダンジョン前で、待ってれば良いじゃない」

 アーヴィンドが睨んで来る。

「怖い顔で睨まないで!」

「ふんっ」

 アーヴィンドは尻尾をゆらめかせて、去って行った。

 ドニは首を傾げる。

(てっきり、お礼を言うタイミングを探しているのかと思ったんだけど……違うのね……。じゃあ、なんで、フィオの事を気にするのかしら?)

 最近のアーヴィントの行動の理由が、ドニにはわからなかった。


つづく



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