表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀河連邦惑星特殊調査官  作者: 白猫
10/10

失った仲間






 ・・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・・

 

 絵本なので瞬殺だった。

 二冊読むのに分もかからなかった。

それでも少しわかった。


 一冊目は『塔のお姫様』

王子様がドラゴンをやっつけて、お姫様を助けるお話


 王子様は囚われの姫を救い出すためドラゴンに挑みましたが、ドラゴンは強く王子様は負けてしまいました。泉で傷を癒していると、泉の精が話しかけてきました。自分たちもドラゴンの火の息吹で困っているので、力を貸してくれると言ってくれたのです。

 泉の精が魔法を唱えると、王子様の髪が赤くなりました。力を貸す約束の印です。

 王子様は再びドラゴンに挑みました。

 王子は髪を切ってドラゴンに投げつけます。

 髪は巨大な水の竜巻になってドラゴンの炎の息吹をかき消しました。

 でもドラゴンのウロコは王子の剣を通しません

 王子は自分の左手を切りました。

 王子の手は風の刃となってドラゴンをやっつけました。

 王子様は助けたお姫様と末永く幸せに暮らしました。


 (力を得るには自分の身と交換ってこと?)


 二冊目は『星の仲間たち』

派生人種(ヘテロ=ヒューマン《いじんしゅ》というらしい)の発生にまつわる神話


  神は昔一人だった。長い年月一人だったので話し相手が欲しくなった。

  そこで神はもうひとり草原から神を作った。

  草原から生まれた神と仲良く世界を治めていたが、ある日喧嘩をした。

  空にある二つの月カリンとユリのどちらがきれいかでもめたのだ。

そこで神は空を飛ぶものの中から神を作った・

  三人の神は仲良く収めていたが、ジレイの実が一個余ってしまうのを見て嘆いた。

  そこで神は山から神を作った。

・・・・・・・

そんな風に神が増えてみんなで酒盛りをしましたというオチだった。


 本を返そうとマリアの部屋に入る。

 まだ寝ている。

 起こさないようにそっと本棚にしまう。

 そこに大きな地図が貼ってあるのに気がついた。

 海が書かれていないので、世界地図ではない。

 地図の右下に可愛い旗が書かれている。

 きっとマリアが書いたのだろう。

旗の書かれている街はこの街だろう。

 (確かインデの森のなかの川べりっていっていたっけ)

 旗が立っている街はビ・・ヨル・・ン・・カ。

あってるよね。

指で街の周りをなぞる。

キサラのしっている地図より大分イラスト化されている地図で森のイラストが書いてあったのですぐわかった。

(インデ・・・大分読めるようになってきたじゃない)

森の中の革をたどる。

・・・海に出た。

逆をたどっていく。

開けた平原の中に城が書かれているイラストの脇をとおって、地図の上の山に向かう。

キサラの指は城で止まる。

ここだ。





キサラたちはダーウィンの反応があった城を偵察することにした。

動員戦力の割り出しのためだ。

城に上陸線で乗り付けるわけには当然行かない。

城の上空視認できる範囲外から近づく。


上空からみるかぎりでは、廃墟で生命の痕跡さえない。

「これだったら、我々の火力でもいけるのじゃないか?」

「魔人と実際に戦闘した世代は少ないが、資料によると1個体の戦闘力はばかにならない。」

「確かに生命反応は2000ほどあるがこれが全部魔人とは限らないかもな。」

「魔人と共存してるって?」

「いや、隷属かも。」

「殲滅兵器を使ったら魔人じゃない人も殺すということ?」

「キャプテン。あれ、なんでしょう?」

キサラの指が外辺を差す。

地面に赤い線のようなものが有り、それが都市を囲うように続いている。

「ミナト、分析できるか?」

「やっているが・・・反応が弱い。降りないと」



「わかった。これはエネルギーバリアーの一種だな。」

「上空からわからなかったのは」

「連邦のそれと違って、安定していないから、遠距離からは反応が出にくかったからと思う。まさかこの科学力でバリアーなんぞあると思わなかった。申し訳ない。」

「いや、近づいた甲斐があった。エネルギーバリアーとすると連邦の攻撃は通るのか?」

「通るはずだ。だが、減衰することは間違いない。詳しいことはもう少し分析して見ないと。」

「ここでできるか?」

マナトはうなずく。

「一時間ほどまってくれ。」

「よし。ミナトは解析。キサラは護衛でのこってくれ。ユーレイアとテクワは俺と付近の探索。これが何のためにあるかわからない以上、ただの線として気軽に踏み越えないこと以上。」


「「「了解」」」


護衛といっても見晴らしの良い草原だ。

危険な生物が近づけばすぐわかる。

むしろ、危険なのは普通安全なはずの都市の方か。

キサラにミナトの作業が手伝えないので、手持ちぶさただ。

少し離れたところに蟻塚のようなものがある。

ミナトが自分を必要としていなさそうなので警戒しつつその蟻塚に近づく。

よく見ると地上にえがかれた赤い線上にある。

そっと触れてみる。

ザラットした感触かと思ったらしっとりしていた。

手触りがなんとなく良くて手をそのままにしておく。

(・・・・・。)

何か声が聞こえた。

キサラはミナトをみる。彼が読んだのかと思ったのだ。

だが、違ったらしい。

(・・・・・。封印がとけかけている。早く。)

「誰!」

声を出して気がついた。

この声は直接頭にひびいている。

「どうした?キサラ。」

ミナトがキサラに呼びかける。

「なんでもない。わかった?」

振り返りつつミナトのもとに帰る。

「ああ。キャプテンに連絡した。」


「まったくしんじられない。馬車が走っている世界に、なんでバリアーがあるのよ。」

テクワの言葉にミナトが同意する。

「全くだ。しかも複合バリアのようだ。」

「複合バリアー?」

「わかりやすく言うと2層の違った種類のバリアーが近接している。」

「かわをむくと、ちがったかわがもう一枚?」

「服を脱がせても、違う服がもう一枚。」

「空気を軽くしてくれてありがとうな。一枚目はさっきから言っているエネルギーバリアーだな。もう一枚あるんだが、よくわからない。揺らいでいるので、バリアーの強さに粗密ができている。その薄いところでもう一度解析すればはっきりする。」

「その薄いところはわかるか?」

「ここからじゃ、分からないが測定しつつ周りを見ればとおもう。」

「周りを歩いていて、気になるところがあった。よし。とりあえず、そこまでいってみて、もし測定できなければ、今日は帰還しよう。」



川は大きく川幅は30メーターほどあった。

「赤い線、河原にもありますね。」

「不思議なんだ。」

地上に書かれた赤い線なら雨で増水した時に消されていなければならない。

なのに平原と同じ濃さと太さで残っている。

「河底に書かれているのかもしれない。」

「河だけ書かれていないという方がこの場合帰って不自然か。」

「光学処理してみてくれないか。」

「了解キャプテン。」


「河の中には引かれていないみたいだ。」

「どうする?」

カイはしばらく考えていたが

「俺とミナトで川の流れの緩やかなところを選んで、測定してみよう。

テクワたちは警戒と命綱を確保しておいてくれるか」


流れは豊かだが、河は怖い。

キャプテンとミナトの姿が突然消える。

「なっ!」

川べりの木に縛り付けておいた綱がしなる。

流されたのかと、川下を探す。

「ありえない!」

引っ張られる方向は、上流の方。

「巻とろう!」

キャプテン!ミナト!

何の予兆もなしに起こった。

二人共異常を知らせる声を出していない


テクワが二人のいたところに走っていく。

キサラとユーレイアは縄の巻き取りウインチを操作する。

木がみしみし、めりめりと嫌な音を出す。

「そんな!」

テクワの声が響く。

二人は顔を上げる。そこにてテクワが映らない。

「テクワ!」

「キサラ!行ってはダメ」

河にかけ入ろうとするキサラをユーレイアが止める。

「でも!」

「縄の先にはみんながいる。」

と言われて、我に返る。

きが折れるのが早いか巻き取るのが早いか。

「キサラ!モリソンに連絡して!」

非常事態だ。母船で降りてきてもらえば助かる。

「わかった!」

通信機を出して連絡する。

「モリソン!キサラです!キャプテンたちが大変なの!母船で・・モリソン?!」

感度がない。

河川敷だからか?

「ユーレイア!どうしよう、応答がない!」

「上からかけて!」

「でもここは!」

「いいから!」

転がるように平原にあがる。

「モりソン!」

『キサラか?』

「よかった!キャプテンたちが大変なの!すぐに母船でスキャンして1」

『わかった。』

フウと息をついでユーレイアを見る。

そこにはユーレイアはなかった。

「ユーレイア!」

「キサラ。キャプテンたちのマーカーが見つからない。城の付近にいるって言っていたが移動したのか?」

「ユーレイアも飲まれた。」

「飲まれた?何に?」

「私のマーカーは?」

「感がある。転送するか?」

「みんなをおいてはいけない。上陸船もある。・・・そのままトレースして」

キサラもキャプテンたちのいた場所に行く。

何もない。

何も起こらない。

ぐっと拳を握り締めるとキサラは上流に向かって河を登り始めた。

2、3歩くか歩かないうちになにか前方に抵抗がある。

空気の抵抗のようなものだ。

力を込めて突き抜けようとして時

(去ね!)

声無き声がまたした。

全身をはじかれるような衝撃が来てキサラは気を失った。

最期に目にしたのは河面に流れる幾筋もの赤い線。

生きているとは思えない程の量の赤い流れ。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ