1. 首木健太郎
首木健太郎はしがないフリーライターとして、ほそぼそと生計を立てている。
今日も近所のスーパーで、半額弁当と缶チューハイを買って、袋をガサガサさせながらボロアパートに帰ってきた。
カンカンカンと足音を立てながら外階段を登り2階の通路を歩く。
奥から二番目の部屋が、首木の家だ。
鍵を開けてドアノブを引く。
外の明かりがほんのりと室内を照らしていた。
部屋に入るとすぐにちゃぶ台に半額弁当をだし、それをツマミにちびちびと缶チューハイを飲む。
テレビをつけて、適当なバラエティ番組を流す。
大して面白くもないが、全くテレビを見ないのも仕事柄困るので、テレビに出る程度の芸能人の名前と顔は分かるようにしている。
それから、使い込まれた焦げ茶の手帳を取り出した。
取材の目的の話以外の、なんとなく気になった話をメモしてある。
何が引っかかったのか、分からないような他愛のないものがほとんどだ。
あとで読み返して、自分でもなんでメモしたのかよくわからない。
だがそんな、とりとめのない話を、首木は手帳に集めていた。
仕事のスケジュールはスマホで管理している。
メモもスマホに打ち込んだほうが早いと思うのだが、なんとなく手書きで手帳に書いてしまうのだ。
今日書いたメモに目を通しながら、缶チューハイをぐび、と飲んだ。




