第九話 育成②
『お?二レス、疲れたか?ほれ!』
コツン
…っ!!!!
ヒュン!ヒュン!ヒュン!
ドンッ!ドンッ!ドンッ!
ドカン!ドカン!ドカン!
ゴーーーーッ!
**********
……………ヒュッ…
……………ドンッ…
……………ドカンッ…
……………ゴーーッ…
**********
……ハァ…ハァ…ハァ…
…………ハァ……ハァ…
『…ほれ!』
コツン
…っ!!!!
ヒュン!ヒュン!ヒュン!
ドンッ!ドンッ!ドンッ!
ドカン!ドカン!ドカン!
ゴーーーーッ!
**********
……………ヒュッ…
……………ドンッ…
……………ドカンッ…
……………ゴーーッ…
**********
……ハァ…ハァ…ハァ…
…………ハァ……ハァ…
二レスの勢いが弱まるとエンゼスがラボウルを一蹴り…すると二レスが触発されて再度暴れる。
暫くすると二レスは疲れ大人しくなる…そしてエンゼスがまた一蹴り…
エンゼスは自分の一蹴りで二レスが異常に反応するのが面白くなり、自分が今どんな状況なのかも忘れキャッキャッと楽しんでいた。
二人のこのやりとりをアンゼスは暫く見ていたが…飽きた。
初めこそ二レスの傷の治る速度や体力の持続力等を観察していたのだが、延々と続く同じ事の繰り返しに心底飽きていた。
『…はぁ…もういい………エンゼス』
『きゃははは~!や~いバカ二レス、悔しかったら出てきてみろ!』
『………エンゼス』
『きゃははは~……ん?』
エンゼスは一瞬何か聞こえた様な気がしたが、誰もいるはずがないと思いまた遊びに夢中になる。
『………エンゼス』
『きゃはは…は…ん?』
また何か聞こえた気がしたエンゼスは、キョロキョロと辺りを見回し首を傾げるも、やはり気のせいかと二レスに向き直りもう一蹴りしようとしたその時…
『………エンゼス』
今度は確かに声が聞こえた。しかも、最も聞き覚えがあり、ここにいるはずのない人の声が…。
エンゼスの心臓は瞬時に止まりそうになる。
ペタ…ペタ…ペタ…ペタ…
『………エンゼス、随分楽しそうだねぇ』
エンゼスの肩がビクッと上がり、ギギギーと音が聞こえそうな動きでゆっくり振り返るエンゼス。
『…ぁ………パ…パ………どうして………あっちに帰ったんじゃ……』
『うん。帰ろうと思ったんだけどね…二レスの器が残り一体だったのを思い出して戻って来たところ…』
『っわぁーーーーーーーー!!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!』
エンゼスは瞬時に言い訳するのを諦めた。するだけ無駄だからだ。
アンゼスは、エンゼスのそうゆう無駄な事をしないところが結構好きだったりする。
『………大体の事は見てたから分かってるよ。』
『………はい。』
『それで?其方はどうしたいの?』
『………ふぇ?』
『二レスを育てる?やめる?』
ド直球で聞かれ、エンゼスは一言も発せれなかった。
『っ!!……………。』
正直なところ「やめたい」が本心だ。
しかし、自分でやりたいと言った手前「やめたい」とは言いにくかった。
何より……嫌われたくなかった。
アンゼスは、元々エンゼスに対して何でも自由にさせてくれていた。
叱る事もなく強制される事もなかった。
但し、自分で決めた事をいい加減にする事だけは「嫌い」だった。
そう…「嫌い」なだけで、強制はしない。
ただ、何も言わなくなるだけ。
そして暫くラボには来なくなる。
その事を誰よりも分かっているエンゼスは「やめたい」とは、どうしても口に出せなかった。
長い沈黙が続き…アンゼスが先に口を開いた。
『……………ねえ、エンゼス。』
『……………はい…』
『……其方は私と話すのは楽しいかい?』
『……え…?』
突然のアンゼスの質問にエンゼスは困惑した。
何故今それを?やめるかやめないかの話じゃなかったのか?この質問の意味は?
エンゼスが答えられないでいると、アンゼスはそれを察して言う。
『…あぁ、そんなに悩まなくて大丈夫。ただ、ちょっと聞いてみたかっただけだから。変に考えず、正直に答えてくれればいいよ。』
エンゼスは暫く黙ったままでいたが、意を決した様に顔を上げアンゼスを見る。
『…うん。楽しい…凄く楽しい…』
『……そう。ありがとう。
じゃあ、私以外に其方と話しが出来る者がいたらどう?』
『……………パパ以外に?……………それは…ちょっと…分かんないかな…』
『……じゃあ、私がいない時に二レスが其方と話しが出来たとしたら…どう?』
『………二レスが………………話せる?……………ん~あんまりピンとこないけど、暇潰しには…なるかも…』
『……そうか。』
『……???……パパ?』
『……少し昔の話をしよう。私が、真っ暗な世界から真っ白な世界に出た時……
最初は凄く嬉しかった。何もない世界なのは同じなのに…
黒から白に変わっただけなのにね…
何だか分からないけど、とても興奮して色々なものを想像し、それら全てを創造したんだ。
そして何もなかった真っ白な世界に、物があふれ返った。
……でもね、楽しかったのは最初だけ。
物はあっても、自分と楽しさや嬉しさを共有したり話し合う者がいない。
そう思ったら、急に寂しくなって…。
真っ暗な世界だろうが真っ白な世界だろうが、物が在ろうが無かろうが…
結局のところ、自分は「一人」なんだって気付いたら悲しくなってね…。
それで思ったんだ…
「誰かと話したい」…ってね。』
『……………誰かと…話したい…』
『そう。それで私は「イレス」を創ったんだよ。』
エンゼスはイレスに会った事がない。
イレスについて知っているのは、アンゼスの創造物である事、二レスがイレスの複製体である事、そしてアンゼスが最も大切にしている…という事。
エンゼスはイレスを見てみたかった。
創造物という時点で創造神である自分より劣る筈なのに…
アンゼスにラボを創らせるほど大切にされる存在とは、一体どんな奴なのか。
『…………パパ、イレスに会わせてよ!』
『イレスに?』
『パパがあんまりにも大切にしてるから…どんな奴なのかな…って…』
『…大切…そうだね。』
『どうしてそんなに大切なの?僕より大切?』
期待と不安の眼差しでアンゼスを見るエンゼス。
『……比べた事ないからねぇ……』
アンゼスにとってイレスは唯一無二の存在。そもそも比べる対象がないのだ。
それは期待した答えではなかったが、想定の範囲内だった。そして、ここぞとばかりに追及してみる事にした。
『じゃあ、イレスの何が…どんなとこがそんなに大切って思えるの?』
『う~ん………明確な理由がある訳ではないけど…強いて言うなら…
……「存在感」……かな?』
『…………存在感……』
よく分からないけど、その「存在感」という言葉でエンゼスは負けた気がした。
脱字、靴音(カツカツ→ペタペタ)修正しました。
※アンゼス達はサンダルを履いているのに、カツカツという表現はおかしかったので…(;^_^A




