第八話 育成
更新に随分と間が空いてしまい、すいません(>_<)
エンゼスが二レスの育て方に頭を抱えている頃…
『イ~レス、イ~レス、待っててね~♪』
神界へ続く間へ向かって歩くアンゼス。無表情ながらも背筋がすっと伸び、白金色の長い髪が風にそよぐ様は優雅で美しく、傍から見れば頭の中がイレスの事で浮かれているとは到底思えない。
アンゼスはラボにいる時は、何故かあまり感情を表に出さない。理由は本人にも分からない。
『………あ、そうだ。二レスの器が残り一体だったのを忘れてた………仕方ないな。育てるのは初めてだし、こっそり予備を造っておいてやるか。』
そう言いながら、アンゼスは向きを変え先程までいた種核へ戻る事にした。
アンゼスが種核へ戻ると、エンゼスが二レスを起動しようとしている丁度その時だった。
アンゼスは咄嗟に気配を消し、様子を見ようと柱の陰に身を潜める。気配を消した時点でアンゼスの姿は見えなくなるのだが…条件反射だった。
『ふふ…こうしてると、イレスとかくれんぼした時の事を思い出して何かワクワクする~♪』
心の声は非常に楽しそうだが、表情はやはり無だった。
『………もう、やるしかないかぁ…考えても正解が分からないし…』
エンゼスはぼやきながら、二レスを起動させた。
ポチッ…
ウィーン………
透明の保管ケースの中に横たわる二レスを見ながら、エンゼスは不安でいっぱいだった。
そして、頭の中で先程まで見ていた様々な「育てる」について、真剣に考えていた。
こう見えて、エンゼスは根は真面目な子なのだ。
普段、駄々をこねたり文句を言ったり直ぐに飽きて放り出したりと気分屋の子供の様だが、アンゼスに言われた事には口では不満や文句を言いつつ、これまでもきちんと熟してきた。
それらは、アンゼスが好き過ぎて嫌われたくないという思いからの行動ではあるが、実のところ任される事案はどれも然程嫌ではなかった。
本人も気付いていないが、アンゼスはエンゼスの性格や好みを考え、楽しめる範囲の事を任せていたのだ。だがそれは、アンゼスにとっては「気遣い」というより「強制したくない」「強制の先には何も生まれない」という思いからだった。
「想像は自由」
それがアンゼスの理念の一つなのだ。
ピピピ…ピピピ…
二レスのデータ注入と定着が終わった。
普段ならこの後共存エリアへ転送して本起動となるのだが、考え事に夢中になっていたエンゼスは転送していないのに本起動をしてしまう…。
保管ケースの蓋がゆっくり開き始める。その間もエンゼスは、頭の中のページを捲り「育てる」為の情報を集めている。
保管ケースの蓋が完全に開き停止した。
目を閉じ横たわっていた二レスの目がゆっくりと開き、視界が徐々にクリアになっていく。
数回瞬きをした後、上半身をゆっくりと起こし辺りを一瞥する。
そして、直ぐ近くにいるエンゼスを視界に捉えた。
エンゼスは考え事をしていた為、二レスが起き上がった事に気付いておらず、胡坐をかいて座ったままだった。
二レスは、動かないエンゼスを攻撃対象かどうか判断する為に全身をスキャンする。
そして、ふと二レスが起き上がっている事に気付き、エンゼスが立ち上がり二レスの方へ歩き出す。
『なんだ、もう起動してたのか…って…うわぁっ!!』
ヒュン、ヒュン、ヒュン!!
ドカン!ドカン!ドカン!
二レスはエンゼスに向け氷弾を放った。
エンゼスは咄嗟にそれらを弾き返した。突然の事だったので弾き返す方角を考えておらず、弾いた氷弾は種核内の装置や保管ケースに当たり、辺りに煙が立ち込める。
『バカ二レスッ!!何すんだよっ!!!!』
一旦止んだ攻撃も、エンゼスの声を聞き二レスは再度声のする方へと氷弾を数発放った。
ヒュン、ヒュン、ヒュン!!
ドカン!ドカン!ドカン!
エンゼスの罵声と二レスの氷弾の攻防は暫く続いたが、エンゼスが声を出すと攻撃が来るという法則に気付き、二レスの背後に瞬間移動する。
気配に気付いた二レスが振り返るより先に、エンゼスは二レスの体を電流で縛り動きを抑え、直ぐに透明な球体…ラボウルを創りその中へ二レスを閉じ込めた。
それはアンゼスが創る防御壁と同じもので、ラボでの実験観察用に改良されたものだった。
その為、中で二レスがどれだけ暴れても外部には全く被害は及ばないのだ。
閉じ込められた二レスは直ぐに電流の拘束を解き、ラボウルを破壊しようと幾度となく攻撃をするが傷一つ付ける事が出来なかった。
エンゼスはラボウル内で暴れる二レスを横目に、漸く冷静になり一息つく。
そして…種核の惨状を見て心臓が止まりそうになる。
『あ”あ”あ”ぁぁぁぁっ!!!!………………マズイマズイマズイマズイ………』
エンゼスは真っ青になり、膝から崩れ落ちる。
アンゼスは傍で一部始終を見ていたが、この後どうするのかもう少し様子を見る事にした。
『……はぁぁぁ……どうしよう……………パパは向こうの世界に行ったばっかだよな…とりあえず、ここを元に戻さなきゃ…』
エンゼスはボロボロになった種核を復元し始めた。
大方の復元が終わったところで、ラボウルに目を向ける。
中では二レスが外に出ようと攻撃を続けていた。ラボウルの壁は透明な為、二レスの視界には動くエンゼスをずっと捉えているものの、閉じ込められている状態でどうにも出来なかった。
二レスは、カプセルの中であらゆる攻撃をするが、見えない壁は壊れる事もなく傷一つ無い。寧ろ、傷が増えているのは二レスの方だった。
狭い空間の中で自分の攻撃による反動を受け、攻撃をすればするほど自身の体は傷付いていく。そして、同時に体力も削られ攻撃の威力も徐々に落ちていった。
『二レスも大分疲れてきたみたいだな…ったく、諦めの悪い奴め!』
エンゼスはそう言って、ラボウルをコツンと一蹴りした。
すると、勢いを失っていた二レスが再び勢いづく。
『あーーーーーーっ!!!何でまた元気になるんだよっ!!』
それから暫く二レスの勢いは続いたのだった…




