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創造神と愉快な仲間たち  作者: 川森 朱琳
第三章 新たな創造神
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第二十四話 哀しみの渦④


イデスとアデスの戦いは、イデスが手加減する事で五分五分になっていた。イデスもまたアデスに対して全力をぶつける事に躊躇いがあったのだ。


対してアデスは最初から自分の思う全力をぶつけていたが、イデスが手加減している事に気付いていた。

それが悔しかった。


『イデス様!貴方の全力はそんなものですか!違うでしょ!遠慮なくやって下さいよ。モタモタしてるとイネス様がどんどん窮地に陥りますよ!!』


アデスは敢えてイデスを煽った。手加減されたままでやられるなんて、悔しいどころか無様だと己の矜恃が許さなかった。


『っ!イネス…アデス!悪いが手加減は終わりだ。俺はイネスのとこに行く!!』


『…ふっ…行かせないと言ったでしょーーーっ!!』


二人は同時に全力の炎を放つ。互いの間で激しくぶつかる炎は、どんどんアデスの方に押され目の前まで迫っていた。


『アデス!もうやめろ!!お前に怪我させたくない!!』


『…ぐっ…だからぁ…行かせない…と…ぐっ…言った…でしょーーーがぁっ!!』


お前では勝てないと言われたような気がして、怒りでアデスはプツンと何かが切れた。


アデスの体から黒い炎が噴き出し、押し負ける寸前だったアデスの炎がみるみる膨れ上がり、イデスの方へ押し返す。


イデスは直ぐ様体勢を整え力を込める。アデスの炎の勢いは先程までとは比べ物にならない程になり、イデスは本気で全力を出すしかなくなった。


踏ん張る足元がアデスの炎に押され、ザザッザザッと後退していく。

イデスは腹を括った。


『…ぐっ…この…わからず屋がーーーっ!!』


イデスはアデスの炎に向けて渾身の力を込めて放つ。


イデスの体から赤い炎が噴き出し、イデスの放つ炎の色も赤みを増し熱量が上がっていくのが分かる。

それでもアデスは耐える。アデスの黒い炎はイデスの赤い炎に押され始め、徐々に近付いてくる。


『…ぐっ…くそ…くそ…くそ…クソったれーーーっ!!』


アデスは最後の力を振り絞った。体から出ていた黒い炎が一瞬で真っ赤に染まり膨れ上がった。


『…何っ!!…ぐっ…クソっ!!』


『…ぅりゃーーーーーーーーーっ!!』


アデスは大きく目を開き雄叫びをあげる。そして体の奥底にある何かがパリンッと割れた。


アデスは何故か頭がスッキリする。


『……あぁ…これが…全力…か』


アデスにはもう、力がこれっぽっちも残っていなかった。目の前のイデスの驚愕の表情を見ながら、意識が遠のいていく。


倒れゆくアデスの体が白く光り、徐々に体全体を包む。真っ白な光の塊になって横たえた。


イデスはアデスの全力を真面に受け、体ごと吹き飛ばされる。


ドッカーーーンッ!!


辺りを大量の砂埃が舞い視界が閉ざされる。


『……ぐっ…っはぁ…はぁ…いって………っ!アデス!!』


イデスは起き上がると、痛みを諸共せずアデスの方に駆け寄る。

アデスの体は白い光に包まれたままだ。


『アデスッ!!しっかりしろ!アデス!!』


この時、イデスの頭にイネスの事はなくアデスの事でいっぱいだった。自分の攻撃でアデスを死なせたのでは…そう思うと怖くて堪らなかった。


次第にアデスを包む白い光が薄れていき、アデスの体が見え始めた。


『……ア…アデス…?』


姿を現したアデスは人型になっていた。


日焼けした浅黒い肌に黒い長髪、体はイデスの一回り大きく、分厚い胸板に腕や足はイデスの倍程の太さで筋肉に覆われ逞しい。

顔もまだ目を開けていないが、大鷲の名残か鼻筋は高く鋭い。唇は薄く大きい。眠る顔は穏やかで、どことなくスッキリしているようにも見える。


『……ぅ…』


『っ!アデス!!』


アデスはゆっくり目を開き、少しの間ぼんやりした後、イデスと視線を合わせる。


『アデス?分かるか?俺だ。イデスだ!分かるか?』


『……ぅ…イデ…ス…様?』


『っ!アデス!!良かった!無事で良かったっ!!』


イデスは泣きながらアデスを強く抱きしめた。


『…ぅぅ…アデス…ごめん…ごめん…』


『…イデス様…ハハ…イデス様の全力…結構…キツいっすね………はぁ…生きてて良かったぁぁ…』


アデスの瞳はイデスと同じ灰色で、大鷲の時と変わらない大きめの目と、髪色と同じく黒いキリッとした眉に長いまつ毛。


人型のアデスは凛々しく男前だった。


『アデス…お前…もう鷲の姿には戻れないのか?』


『……は?鷲の姿?何言ってんですか、イデス様?』


『…え?いや、お前…今の自分の姿、分かってる?』


『……ん?今の自分の姿って………………

…は?…何じゃこりゃーーーーーーーーーっ!!』


アデスは自分の体や顔を忙しなく触り、驚き困惑した。


『アデスお前…覚醒したんだな…凄いな…』


『……俺が…覚醒…』


二人は暫く座ったまま呆然となる。


『…アデス…悪かったな…』


『…ん?何がですか?』


『……俺、お前の事…俺には勝てないだろうって…その…見くびってた…』


『…あぁ、そんな事ですか?まぁ、少しは腹立ちましたけど、実際そうだったから仕方ないですよ。』


『……けど、お前の全力に俺は吹き飛ばされた…』


『えっ!?そうなんですか!!あぁ、それ見たかったぁ〜』


ゴンッ!!


『痛っ!!何すんですか、イデス様!!』


『見せるわけないだろ!調子に乗るな!!』


『ハハ…少しくらい良いじゃないですか〜。俺頑張ったんだからぁ〜』


『フンッ…俺も…頑張る…次は…瞬殺してやるからな!覚えとけよ!!』


『えぇ〜!瞬殺はやめて下さいよ!せめて分殺?』


『バーカ!瞬殺だ!!』


『いーや!俺だって簡単にはやられませんからね!』


『『…ふっ…アハハハ…』』


二人は手を取り立ち上がる。そしてガッチリと握手をして互いを抱きしめ合う。

この時、二人の絆が強まりイデスの内面にも変化が現れる。


イデスは頭の中が妙にスッキリして、胸の奥で縛られていた何かがフッと消えた気がした。

それはイデスのイネスに対する「依存」と「執着」が消えた事を意味するものだった。


イデスはイネスの現状を思い出したが、さっき迄とは違い、傍で守るのではなく離れて見守る事にした。


そして、二人はアンゼスが何故手を貸さないのかを漸く分かった気がしたのだ。



『……あの方は…凄いな…』


『……そうですね…ま、無茶が過ぎる気もしますが…』


『…ふっ…違いない…』


『……でもまぁ…』


『……信じよう…』


『……ですね…』



アンゼスとイレスはニッコリ微笑むと、ふぅ…と一つ息を吐いた。


『『……危なかったぁ…』』


二人はホッと胸を撫で下ろした。


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