触82・触手さん迷宮九層目
男はテーブルを挟んで私の正面に立つと、その上に一束のカードと幾つかのコイン、さらに6面ダイスを一個置いた。
「ルールは至ってシンプル、交互にカードの上から一枚ずつ引いていき、ジョーカーを引いた方が負け。勝った方はお互いが賭けたコインにダイスの出目の倍率が上乗せされた枚数を得られ、全てコインを失ったら負け、もしくは先にコインが百枚に到達した側が勝利となります」
ふむ、完全に運任せの勝負か。
「手持ちのコインは各10枚、好きな枚数をベットして下さい」
言いながらコインを分けて両者の目の前に置いていく、少し大きめで鈍い銀色だ、1枚取って見ると両面に知らない文様が刻まれている。
「それでは始めましょう、カードのシャッフルはそちらがされても構いませんよ」
イカサマはしてないことのアピールだろう、それじゃあ⋯
「僕がやろうか」
後ろにいるクオが手を挙げる、んじゃ任せるかね。私が頷くとカードを手に取り素早くシャッフルしてテーブルの中心に置いた。
「先行後攻お好きな方をどうぞ」
うーん、流石に初手でジョーカー引いたりはせんだろ⋯というわけで先行で、コインを取り敢えず3枚ベッド、向こうも同数出してきた。
「尚、ワタクシの事はゲームマスターとお呼び下さい」
まずは一枚目、引いたカードは「ハートのA」続いてゲームマスターも、こちらは「ダイヤのキング」その後もお互い交互に引き続け⋯
ぐえー、ジョーカー引いたンゴ〜!!
半分くらい山が減ったところで死神が私に振り向いてしまった。ま、まあまだ最初だしー?よゆーよゆー。
死神を模したジョーカーが出たのでディーラー代わりのクオがダイスを振る、さて出目は⋯⋯
6!!
ギャー!!何でよりにもよってそれ出しちゃうのクオくーん!?
賭けられていたコインが計6枚なので6X6で36枚がゲームマスターの手元へ。つかこれ賭けてた枚数によっちゃ〜即試合終了で負けてたやん、おっかねー⋯⋯
気を取り直し2回目、私は今度も3枚、向こうは2枚ベットした。
さて最初の1枚は〜っと⋯⋯
ジョーカー!!!
嘘だドンドコドーン!!!
見事に1枚目で引いてもうた⋯⋯マジかよ⋯⋯んでダイス目は⋯3。
15枚がゲームマスターへ。これで私は残り4枚、向こうは56枚。ヤバイヤバイヤバイ、枚数差がマジでやばい、もうこっちそんなに出せねーぞおい。
すでに崖っぷちに追い詰められた3回め、もう余裕がないので1枚ベット、そして向こうは⋯⋯20枚!!ぐえ〜一気に畳み掛けてきたー!!!
⋯⋯やばい、またこっちがジョーカー引いてダイス4以上出されたら終わる⋯⋯
引くなよ⋯絶対引くなよ⋯⋯’
震える触手で恐る恐るカードを引いてめくり⋯⋯
ジョーカー!!!!!
アイエエエエエエ!!?ジョーカー、ジョーカー何で!!?
何で2連続もジョーカー初手で引くんだよおぉぉぉぉ!!クオくんんん!!!ちょっとおぉぉぉぉ!!?
これにはクオも苦笑い、いやシャッフルしたのあんただからね!?
⋯い、いやまだだ、まだダイスが残ってる、4以上が出なければ⋯⋯
場に緊張が走る、転がって出た目は⋯⋯
3!!
3、えーっとつまり⋯⋯コインは3倍になって63枚、あっちは36枚になってたから⋯⋯99枚!!
えーっと⋯⋯次お互い1枚出してもこっちがジョーカー引いたらゲームオーバーやんけ⋯⋯
もう後がない、また引いたらダイス関係なくこっちの負けである、意地でも避けないといかん。これで失敗したら終わってしまうので全枚投入、そして向こうは当然1枚だけベット⋯⋯
じゃない!!?
ゲームマスターはこちらの予想を遥かに超えてきた、何と向こうも全部ぶっ込んできたのだ。
おいおいどういうつもりだよ。
「このまま1枚だけ出して勝ってもつまらないですからな、ゲームというものはひりつく空気の中で行うのが最も熱く燃えるのです」
分からんでもない、お互い後がない状態での緊張感は魂に火が付いた感覚を覚えさせてくれる、どちらが勝っても最後のゲーム、楽しもうじゃないか。
最後にして最初の一手、場に緊張が走る中私はカードをめくる、引いたのは「スペードのクイーン」
続いてゲームマスターも引いて「クラブのジャック」
交互に引いていき、どんどんカードの山が低くなっていく。そして残すところ後2枚になった。私が先行なので次はゲームマスターの番、これでジョーカーを引けば私の勝ち、引かなかったらゲームマスターの勝ちだ。
さあ勝負の女神はどちらに微笑むか、ゆっくりとカードを手に取りひっくり返し。
「ふふ、貴方の勝利ですな」
ゲームマスターに微笑んだのは死神だった。
ふー⋯⋯’緊張が解けて安堵のため息が全部の口から漏れ出す、周囲では皆の歓声が沸き起こった。
「では最後にダイスを振って頂けますかな」
彼が私にダイスを手渡してきた、アレ?もう勝負着いたよな?
何か良く分からんが言われた通りにダイスを転がすと、6が出た。
「素晴らしい!それではこちらをどうぞ、次の階層でお使い下さい」
懐から何かを取り出すとそれをダイス同様に渡される、鍵⋯⋯?
まあ貰ったんで袋に入れとこう、
「さあお進み下さい、最後の階層が待っていますぞ」
ゲームマスターが指を鳴らすと彼の後に木製の大きい扉が現れた、あれを通れば最下層のようだ。
「それでは御機嫌よう、貴方に祝福あらんことを」
最初のとき同様に大仰に会釈をすると、テーブル一式と共にかき消えていった。
よーっし、色々あったけど遂にゴールにつくぞー。
私達は扉を開けて中にある階段を下っていった。




