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成れ果ての不死鳥の成り上がり・苦難の道を歩み最強になるまでの物語  作者: ネクロマンシー
第3章 妨害し続ける身分
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第77話 生かされるための条件

 ノアは騎士達に取り押さえられ、頭を床に擦りつけさせられる。このままここで暴れれば逃げることくらいなら出来るかもしれない。しかしせっかく見えた道を、テトがくれたチャンスを無駄にしたくはなかった。


「待ってくれ……誤解だ」


「黙れ! じゃあ何故貴様はここにいた。待機命令を出したはずだぞ‼︎」


「僕はその子の悲鳴が聞こえたから助けに来ただけで」


 声をかけたのはノアを部屋に案内した騎士だった。だが確認するように少女に伺っても、少女はノアを犯人だと言うばかりだ。騎士達は新人を信用できるはずもなく、否定の声は誰の耳にも届かないままノアは牢獄にぶちまれた。












 石造りの床は冷たく、備え付けられてある毛布はカチカチに凍っていた。両手を拘束している手錠の冷たさが皮膚を刺すように痛ませる。鉄格子の隙間から入り込んだ雪は三日かけてノアの頭に積もっていった。その雪を振り下ろす気もなくなるほど、ノアは気分を沈ませていた。


 やってしまった。もっと賢ければあの場を切り抜けられた。おそらく少女は脅されて自分を犯人に仕立てるよう、あの男に言われたのだろう。それなのに口から出た言い訳は、少女の言葉が答えになってしまうものだった。少女に頼らない形で身の潔白を証明する手段を考えるべきだった。


 ノアは舌打ちをして今からどうするかを考える。このまま誤解が解けて解放される可能性はないだろう。何故なら王族が自分の罪を隠蔽するためにノアになすりつけたのだから。それなら諦めて脱獄するしかない。相当分厚くもなければ、壁を歪ませて穴を開けることくらいは出来る。


「それにしても、また失敗か」


 何がいけなかったのか。今回は何がダメだったのか。どこのどいつかも知らない他人を助けるなんて、らしくないことをしたからか。

 口から漏れる溜め息は途端に凍りつき、白い息吹となっていく。ぼっーと息が白くなっていくのを見つめていると、牢獄の中に足音が響き出した。ノアは即座に警戒して眼を開くと、その近づいてきた人物の正体に驚きを隠せなかった。


「よぉ、生きてるかー?」


 檻の外からノアを見下ろしたのは、茶色から先が白くなっている翼を背に生やしていた男、ホムラだった。ホムラはかつて、テトと力を合わせノアが雪の中に沈めたはずの男だった。

 あの傷を受けて生きていることもだが、ホムラが此処に来た理由もわからない。ノアが凍え死ぬ前に、あの時の仕返しに来たのか。だとしたら絶体絶命のピンチだ。あの時はテトと二人で互角だったのに、今のノアは凍りついた体で武器も全て取り上げられている。ノアはうるさく鳴る心臓を誤魔化すようにホムラを睨んだ。


「そう怒んなって、今出してやるから」


「え?」


 威圧するように睨むノアを笑い、宣言通りホムラは檻の鍵を開けた。ホムラは、戸惑っているノアの手錠も外すと武器と羽のコートを投げつけた。


「悪かったな。 どうせ王族のやつらに歯向かって罪をなすりつけられたんだろ?」


 ホムラは、部下から新人の事件のことを耳に入れた。そしてその内容から大体のことを予想した。長らく騎士隊長を務める彼にとって、王族がどんな人間なのかはよく知っていた。


(バレてるってわけじゃないのか?)


 あの時はマスクをつけていたはずだが、バレていた時の対処法もすぐさま考えなければならない。ノアは相手を探りながらも、笑顔を作って頭を下げる。


「助けてくれてありがとうこざいます」


「いいってことさ。ここでは真面目に生きても損するだけだぞ」


「……そうみたいですね」


 ホムラは、ノアが騎士として正しいことをしたことは知っている。だが、その行いが間違えになることも知っていた。


「そういやカラス、お前やっぱり騎士になりたかったんじゃねぇか。 あの時は断ったくせによ!」


「なっ!」


 ホムラはそう言って笑いながら振り向いた。その笑顔にどんな感情が込められているか理解できず、ノアは思考を停止させて剣をにぎった。


「あの時は酷い目にあったよ。 上にもめちゃくちゃ怒られたしな」


 やはりバレていた。その事実がノアに焦りを与える。ノアは剣を引き抜いて臨戦態勢に入り、全神経を尖らせる。


「ちょ、待て待て! 別に捕まえる気なんて無いって! っていうか捕まってたのを助けてやったんだろ!」


「……それもそうだ」


 確かに考えてみれば、最初から正体がバレてたなら殺すだけなら解放することはおかしい。騙しているのしても武器や防具まで返すのは不自然だろう。

 ノアは冷静に考え剣を納め、ホムラは誤解が解けたことにホッとする。だがノアはまだ完全にホムラを信用したわけではなかった。


「何で僕の正体を、素顔を知っている」


「知っていたわけじゃないさ。此処に来て、お前を直に見て確信しただけだ。 あの時のカラスがお前だってな。 一度剣を交えたヤツのことは忘れねぇよ」


「じゃあ何で僕の正体がわかって解放した。何故武器まで渡す」


「あー、まぁあれだ。 俺はあの時お前が気に入ったんだ」


「……は、お前は騎士だろ? 僕はこの城に侵入した犯罪者だ。そんな悪党を自分勝手に解放していいはずもないし、信用できるところなんて何一つない」


「別にいいんだよ。 騎士は王族の奴隷でもなんでもねぇ。 俺はやりたいようにする」


 騎士として、これほどまでな違反行為はないだろう。しかしホムラにとっては関係なかった。

 ホムラは騎士であることに疑問を抱いていた時期すらあった。だがホムラに騎士である意味を気づかせたのはノアだ。ホムラはノアと戦い、負けたことで新しい世界を見たのだ。才能に溺れ、ルールに縛られ、自分らしく生きたことのなかったホムラは、やりたいことができたのだ。


「ここで僕が君を殺すとは思わなかったのか」


「思わなかったな、勘だけど。だがその辺に関しては自信がある」


 解放した理由をあやふやに流され、ノアは信用していいのかわからない。だがホムラをこの眼で見たかぎりでは敵意は感じられなかった。エデンもそうだ。騎士という立場でありながら、自分というものを持っていた。強い騎士は奴隷でもなんでもない自由さを持っている。ノアはなんとなくそう感じた。


「……………わかった、信じよう」


 ノアは剣を下げて肩の力を抜く。ホムラの考えはどうあれ、助けてもらったことは事実だ。それに道を諦めかけていたノアにとって、解放されたこの状況は願っても無いことだ。


「すみません、助けてもらったっていうのに」


「はは、いいってことよ。だが助かったかどうかはまだわかんねぇぞ?」


  ノアは、言葉を敵意から普段のものに切り替えて対応する。

 助かっていない、その意味がわからずノアは首を傾げていたが、その意味は後で嫌でもわからされることとなった。




 牢獄を出ると、ノアは王族の間に連れて来られた。そこは広々とした空間、豪華なシャンデリアが煌めき眩しいくらいだ。百を超える数の騎士達が端を埋め尽くすように並び、全員が中心にいるホムラとノアを見ている。奥の椅子には数人の王族が座り二人を見下ろしていた。


「おい、何故こいつが此処にいる! こいつは使用人を殺しただけでなく、この俺にも襲いかかってきたのだぞ」


 勿論ノアに罪をかぶせた王族の男もこの場におり、ノアが出てきたことに怒りをあらわにした。王族が証言すれば、それは戯言でも虚言でも力と意味を持ち真実となる。だからここでノアやホムラが何を言っても無駄に終わるはずだ。しかし、ホムラには考えがあった。


「ええ、この者は罪を犯した罪人。王族を襲ったこの男には牢獄だけでは生ぬるいと思いまして。そこで、この者は罪人である以前に新人とはいえ騎士でもある。よってこの者に、〝あの姫様〟の守りびとにさせるという処罰はどうでしょうか!」



 ホムラはノアを助けるためにも、勝負にでた。ノアに生かす価値を与えるにはそれなりの条件が必要だ。ホムラが問いかけた視線の先、それは王族達の中心に座り、周りより一際目立つ存在である別格の人物だ。優雅に艶やかな脚を組んで、高慢な態度をとっている王女だ。その王女は第1王女であり、ここの絶対の存在であった。桃色の髪を伸ばし、首につけられているのは知識が無くとも嫌でも理解させられる高価な宝石。膨らんだ胸や引き締まった身体を際立たせる美しいドレス。第一王女には、どれだけ傲慢な態度を取っても文句を言わせない美しさを誇っていた。

 第1王女は爪を眺めていた視線を一瞬だけホムラに向けたと思うと、またすぐに視線を外した。その顔には退屈だと書かれており、興味なさげに欠伸をする。


「まぁいいんじゃない? 殺されたのも使用人でしょ? そこのクズが襲われたのもどうでもいいし、〝あの出来損ない〟の面倒見てくれるならいいことじゃない」


「なっ、ティアラ様!」


 第1王女の名はティアラというらしく、ノアの顔を一切見ることなく適当にホムラの案を承諾した。王族の男は、完全に証拠を消しておきたかったためノアを処刑したかったが第1王女の意見を覆すことができなかった。それほどまでに第1王女という肩書きは大きく硬い。第1王女からすれば使用人の死なんてどうでもいいこと。そんな価値観をホムラは嫌うも、今回は利用したのだ。

 王族の言葉を覆せるのは王族だけ。作戦が上手くいったホムラは心の中でほくそ笑んでその場を収めた。












「つーことで、まぁ頑張れよ」


 ホムラはそう言って笑ったが、ノアにはさっぱりわからない。助かるために必要だったことはわかるが、面倒なことにノアは誰かの守りびとにならなければいけないらしい。ノアは〝あの姫〟という存在も守りびとがどんなものかもわからないのだ。しかし、なったからにはやるしかない。せっかく繋げられたチャンスを逃すわけにはいかない。何としてでも、遠回りをしてでも掴みにいく。それは俄然変わりはしない。


「お前は今日から此処にいる姫の守りびとだ。 俺はお前を助けたが、まだお前は助かってない。 大変なのは今からだ」


「どういう意味ですか?」


「すぐにわかるさ。……どうか、あの子を救ってやってくれ」


 ホムラの表情は先程とは違い真剣そのものだ。そしてノアが連れて来られた場所は見覚えがある所であった。城から少し離れ、橋が架けられた塔。ノアが秘薬を盗み取った場所だ。その中にいる〝あの姫〟も、おそらくノアは見たことがあるだろう。あの日、目があった何かの存在を頭に思い浮かべる。


ノアはホムラに礼を言い、橋を渡って塔へと向かった。 これもまた、運命の歯車が動かした結果の一つだった。

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