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成れ果ての不死鳥の成り上がり・苦難の道を歩み最強になるまでの物語  作者: ネクロマンシー
第2章 変わり続ける感情
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第53話 遺跡と企み

「どけ! 俺の前をトロトロ歩いてんじゃねぇ」


 人一倍大きい体をした男が、目の前を歩いていた職員に怒鳴り散らし、自分がいつも座っている席にいた年配の男を蹴り落とした。


「ここは俺のだ! 常識まで忘れたか?このジジィはよ」


 横暴な態度で怒りを露わにしていたのはドープルだ。ドープルは大きな図体と声量で周りを威嚇しているため、他の者達は歯向かうことができず縮こまるしかなかった。だがそれはただ乱暴なだけでなく、Aランクのハンターという肩書きを持っているのが大きかった。ハンターである者達でさえAランクのドープルには口ごたえ出来ず、言えたとしても殴られて終わりだろう。それほどAランクというものは大きなもので、実力は確かだという真実が一番の問題だった。

 そして苛立ちを隠そうともしないドープルは、最近の怒りの原因がギルドに来たのを確認した。それはノアだ。いつも自分に愛想よく話しかけてくれたアテナが、今では何故か平凡なCランクのガキに夢中になっていることが耐えられなかった。アテナはいつ見ても忙しくノアを追っているようで、話しかける暇もなく何処かへ行ってしまうのだ。他にも自分と同じAランクのルドルフ達とも仲が良く、ドモンすら認めたということも原因の1つだった。なんであんなガキが、そう思わずにはいられなかった。

 だが肩をぶつけられてよろけているノアを見て何か思いついたようにドープルは、脂ぎった手で顎を撫でて二チャリと笑った。








「おい! おい、お前だ!」


 ノアは少し離れた席から自分を指差し、大声を上げている男を見て首を傾げた。そんなノアを見てか、その大男は「早く来い」と怒鳴る。だがノアが近くに寄るとさっきまでの怒りの形相が嘘かのように男は笑みを浮かべ始めた。


「お前が最近ルドルフのパーティーと同行したCランクのガキだよな?」


「? 、はい」


「提案なんだが、俺とも一緒に行かねえか?これでもAランクでな。 俺もお前に興味があるんだよ。中々ないぜ?俺が誘うなんてことは」


 ドープルは握手を求めるようにノアに手を差し出して口角を歪めた。

 ドープルはノアを遺跡へと連れて行ってくれるという。Aランク以上のハンターの同行としてならば遺跡への立ち入りも許可されるため、ドープルがいればノアも遺跡の中へと入れるのだ。

 ドープルは新人の教育をするのもAランク役目だと言い、いろんな体験をさせたいとノアを友好的に誘った。今日はアテナもルドルフもおらず、受けられる依頼も限られていたためその言葉はとても有り難く、ノアは二つ返事で頷いた。

 その様子を周りの者は呆れる者もいれば、ドープルと同じ類の笑みを浮かべる者もいた。


 遺跡はとても危険で機械生物だけでなく、その荒れた環境で命を落とすこともある。だが遺跡に行くだけでも大変で、猛毒の大地を何日も歩き続けて険しい道のりを進み続けなければならない。そのためノアはドープルに出発する前に準備をしに一度帰る許可を貰い、タルタロスへ戻った。



 ノアは特に準備することもないのだが、テトに数日の間帰らないということだけは伝えたかった。テトは日が暮れれば、いつもの帰り道にノアを迎えに行って自分を待っていたと思っていた。だがテトは、ノアがギルドへ行くのを見送ってからそのままずっとその場で待っていたのだ。何度かタルタロスで待っていていいと伝えたのだが中々首を縦に振らなかったのだ。なので伝えなければ永遠と帰り道で待っていそうだと思い、足を早めた。すると案の定いつもの場所に座り込んでいるテトを目にする。ノアに気づいたテトは、いつもよりかなり早く帰ってきたノアを見て無表情ではあるものの、嬉しそうに立ち上がった。だがノアが何とか説明して数日間は帰れないということを説明するとしゅんと、うな垂れた。ノアはなんとか元気づけたいと顔を下に向けているテトの頭を撫でた。しばらく目を瞑りされるがままだったテトは顔を上げ、真っ直ぐノアの瞳見つめた。


「……絶対、帰ってきて」


「うん。 約束する」










 そしてノアはドープルやドープルのパーティーメンバーと共に遺跡へと向かった。ルドルフ達の依頼に同行した時、毒が体内へ取り込まれるのを防ぐマスクがない事を呆れられたことから学び、今回はきちんと前もって購入していた。だがノアはそのマスクの有無をあまり気にしていなかったため、店で一番安い物を購入した。そのせいかドープル達がつけているマスクとは明らかに質が違うためかなり目立ち、ドープル達の指示で一番下っ端だからとノアが全員分の荷物を背負っていた。そのため、ちらほらとすれ違うハンター達からは哀れみの目を向けられていた。だがしばらく霧の中を歩き続けると、すれ違うハンターの数も極端に少なくなり霧はどんどん濃くなっていった。荷物はかなり多いとはいえ、この程度では疲労感は感じない。だがその日は夜までひたすら足元が悪い中歩き続け、足が痺れていくのは感じた。


「お前は見張りをしてろ。ここはもうかなり遺跡に近いからな。 機械生物がうろついている可能性もある。寝るんじゃねぇぞ、これも経験だ」


 ドープルはニヤつきながら夜の見張りをノアに任せ、自分達はテントの中で休憩を始めたがノアは眠ることがないため別に気にはしなかった。


(僕を信用している、というより肝が座っているのかな)


 新人に見張りを頼んでよく眠れるものだとノアは肩をすくめた。



「なぁリーダー。遺跡の中に足手まといなんか連れていって大丈夫ですかい?そもそもあのガキが強そうにはとても…」


 ドープルのパーティーメンバーの1人がテントの中、小声でドープルに尋ねた。その言葉を聞いてドープルは楽しげに卑しい笑みを浮かべる。


「ぁあ? いいんだよ。あいつは古代兵器と鉢合わせたら(おとり)にするんだよ」


「そりゃあまた…」


 遺跡を護る為に造られた古代兵器。それは破壊そのもののような存在であり、自分達でさえ1人で戦うなど考えるだけでも恐ろしいほどで。ましてや、Cランクなど鉢合わせてしまえば死は免れないだろう。つまりドープルはノアを殺す気なのだ。


「全部あのクソガキが悪い。俺のギルドで調子に乗るとどうなるか身をもって知るがいい」


 ドープルは体の肉が揺れるほどゲラゲラと笑い、それからしばらくすると大きないびきをたてながら眠った。


 濃い霧の中でも、ぼんやりとだが辺りが明るくなるのは感じられ朝が来たのはわかる。朝になるとドープルはノアがしっかり見張りをしていたかを確認するためにテントから顔を出した。するとノアは短剣を研ぎながらも、周りを見渡しているようだった。それ見てドープルは鼻を鳴らし、ノアにテントの後片付けや荷物の整理を命令する。それを文句1つ言わずに黙々とこなしていくノアを気に食わないと思うも使える駒には違いないと心の中で笑い、メンバーに出発の合図を出す。

 出発してからは急な上り坂が続き、ゴツゴツとした石がそこらに転がっており下手に歩くと足を挫きそうだった。もともと草木は少なかったが、ここまでくるとほぼ無くなり、歩くたびに温度が高くなっていった。

 ノア達はゆっくりと坂を登り、頂上へとたどり着く。熱が顔を照らすほどの温度、そこはまさに火山だった。その手前にある大きな門があり数人の警備が立っていた。ドープルのハンターの証を確認するとその門は重い地響きを立てながら開き始めた。この門はハンターランクの確認の他に、機械生物が遺跡の中から出てこないために設置されている。


「この中が遺跡だ。 早くいくぞ」


 ドープルはそう言って指を指した方向は赤い溶岩だった。にわかには信じがたいことだったが、眼で見ればそれは真実だと納得せざる得なかった。その溶岩という境界線の向こうに違う世界が広がっているのがわかる。


(いよいよだ)


 ノアは周りに漂う火の粉で乾燥した唇を舌で湿らせ、溶岩の中に飛び込むように跳んだ。













 ーーーーーーーーーーーーーーー


「テトちゃん、こんなところでどうしたの?」


 ニーナは、タルタロスに帰る途中で座り込んでいるテトに声をかけた。するとテトはビクリと肩を跳ねさせ、ゆっくり顔を上げた。それを訳ありと感じたニーナは、テトの隣に座って話を聞いた。



「そっかー。じゃあ一緒に行けばいいじゃん」


「…私が行ったら、きっと迷惑」


 ニーナはテトが寂しがっているということに気づいて同行することを勧めるが、テトはギルドについていき自分の正体が万が一にもばれてしまえばノアの未来を潰しかねないことはわかっていた。


「でもテトちゃんはそれでいいの?」


「……いい」


「でも今すごく辛そうだよ?」


「………」


 テトはきゅーっと締め付けられる心臓を握りしめるように胸に手を添える。自分がどうしたいか、そんな事言えるほど自分は強くはない。

 そんな時、1人男の足音が聞こえてテトは耳を立てた。ニーナもその足音は聞こえたらしく顔を上げた。ノアが帰ってきたよ、そうテトに声を掛けようとしたがテトはわかっていた。ノアの足音ではないことを。いつも聞きたいと願った足音くらいは覚えているのだ。


 その男は2人を見比べて口を開く。


「………お前だ」


 2人の少女に向かって男の手が伸ばされ、大きな爆発音とともに辺りは崩壊の波に飲まれた。




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