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成れ果ての不死鳥の成り上がり・苦難の道を歩み最強になるまでの物語  作者: ネクロマンシー
第1章 壊れ続ける日常
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第33話 重たい友情

 

「最近見かけなかったけど何かあったのか?」


「ん?ノアか、久しぶりだな。最近ちょっと忙しくて顔を出せなかったんだ」


 木の根元に座り込みナイフの手入れをしていたロイは、ノアに気がつくと手を止めた。


「そういやお前あれから一人でアヴァロンに行って白虎倒してきたんだって? 無茶するよなー。俺たちがせっかく助けに行ってやったってのに。なんかあったらどうする気なんだよ」


「あの時は本当に助かったよ。捕まった時は逃げる隙が無くて流石にどうしようかと思ったよ」


 ノアは、ロイと笑いながら雑談を交わしながら、目を細めてじっとロイの様子を伺っていた。









 ーーーーーー数時間前――――――


「ロイが隠し事?」


「ああ、最初は気のせいかと思ってたんだが、仕事中でも時々ちょっとしたヘマすることがあるし、最近あいつぼうっとしてることが多いんだ」


「ミスなんて誰にでもあることなんじゃないかな」


「確かにそうだがあいつは割と器用なやつだからこういう時は心配なんだよな。俺じゃあ何かあっても気づけねぇ。だから少し見に行ってみてくれねぇか?お前ならこういう事頼めるからな」



「わかった、一応様子くらいは見てみるよ」




 キュプラーはテトの料理を口にして寝込んでしまう直前に、そう言ってロイを心配していた。自分ではどうにも出来ないがノアなら何とかしてくれると信頼し、頭を下げていた。




 ――――――――だがノアだっていつものロイと比べて違和感を感じられるほどロイとの付き合いは長くはないし、やはり今のところ特に違和感は感じられなかった。


 それからも何だかんだでロイと最近の出来事を話し合っていると、テトが少し離れたところに立っているのに気がつく。どうやら2人で話しているところを邪魔しないかと遠慮しているのだろう。ノアが手を振るとテトは無表情ではあるがどこか嬉しそうに尻尾を揺らし、とととっ、と小走りでノアの側に来る。ボスのところへ行って来たようでおそらく仕事を貰ってきたのだろう。

 そんなことを考えているとロイがいきなり吹き出すように笑った。ノアとテトが目を丸くし、笑っているロイの顔を見るとごめんごめん、とロイは軽く謝りながらも笑う事をやめない。


「ノアは凄いな。何も口に出さないでもテトと通じあえるほど仲良くやってる。俺達がずっと話し合ったり悩んでもどうにも出来なかったことを簡単に解決してくれるんだからなー」


「うっ……。 ごめん、なさい」


 ロイ達がテトを気遣って声をかけた回数は一度ではない。そして今になるとそれは凄く申し訳ないことだともテトは自覚している。


「謝ることなんてないさ。お前も元気になってよかった。ノアには感謝するんだぞ?」


「……感謝してる」


「よしっ、ノアもテトのこと頼んだぞ」


 ロイはテトの現状をまるで自分のことかのように嬉しく思っていた。それはまるで本当の兄のように。

 ノアがその2人の会話を見ている時、まるで遥か遠くに浮いている雲を見ているような気分になった。何故かはわからない。だが心の中で違和感が消えないのだ。


「………」


「 おい、ノア!」


「あ、ごめん。えと、なんだっけ」


「まったく、本当に頼むぞ?」


 ロイはぼうっとしていたノアに声をあげて背中を叩きその様子に肩をすくめる。テトもノアに何か言いたげそうではあったが口を開きはしなかった。


「じゃあまたな。 ゴホッゴホ。最近寒くなってきてるからお前らも風邪ひくなよ」


 ロイは風邪気味なのか咳き込み身体を震わせながらノア達に手を振って別れた。


 ノアもロイと別れた後に頭の中にかかったもやを振り払うように歩き出し隣に歩いているテトにロイの様子を問いかけた。


「ロイの様子おかしかった?」


「別に普通、だったと思う」


「……そうだよね。キュプラーの勘違いかもしれないし。僕たちから何か言うのはやめておこう」


 ノアもテトと同じで別に変だと感じるところはなく、キュプラーの思い過ごしかロイが本当に言いたくないことでもあるのかもしれないと考え、今は自分達の仕事に集中することにした。












 その後、ノア達が仕事を終えて戻ってきたところにアルティナ達と鉢合わせた。


「あ!ノア。それにテトちゃーん!」


 ノア達に気づいたニーナはテトに勢いよく抱きつき、テトもそれを避けずにされるがままになっていた。テトは表情はこわばってはいるが触れ合うことを以前のように拒絶はしなくなっていた。それによりニーナ達は素直に受け入れてくれるようになったテトがよっぽど可愛いのか見かけるたびに撫でくり回していた。


「なんだノア、お前も遊んでやろうか?構ってやらんでもないぞ」

「そうですよノア。お姉さん達に遠慮なんてしないでいいんですよ」


 ノアは手をわきわきと動かしながら接近してくる双子達を華麗に避け、テトにその場を任せてボスの元へと向かう。


「あはは、もちろん遠慮しますよ。テト、僕がボスに渡してくるからみんなとここにいていいよ」



「まったく可愛くないやつだな」

「ほんとに可愛くないですね」


「あ、待っ...」


 ノアを逃して頰を膨らませた双子達はその分テトで遊び始めた。テトもノアについて行こうとはしたがニーナ達の手に遮られてしまい、そのまま耳や尻尾を弄くりまわされていた。











「ご苦労様、キミ達は仕事が早くて助かるよ。みんなキミ達みたいに働いてくれればいいんだけどね」


 ユグドラは楽しそうにワインを喉に流し込みノアに労いの言葉を告げる。


「さて、今回の報酬だけど…」

「僕にはまだ足りませんか?」


 ユグドラの言葉を遮りノアはこれで何度目かわからないセリフを口にする。

 ここへ来てノアが仕事をこなした回数も少なくはなく、力だって順調に蓄えた。ノアの中の焦りは加速する一方なのだ。



「ふむ、ここの暮らしは嫌かい?テトくんだって今は本当に楽しそうだし、皆もキミを仲間だと認めている。キミだって不自由な暮らしではないはずだけど」


「……僕も一時期はみんなを仲間と思えるようになりました。もう少しここに居たいとも思えそうでした。それでも、僕の中の記憶がそれを許してくれなかった」


 昔カナリアから教わった友情というものをノアは知りたいと思っていた。だがノアが友情に浸かりそうになった時、夢を見て気づかされた。そんな無価値な情愛は自分を狂わせるだけのゴミだということを。


 本当は一緒に生きてみたいと思ってはいる。でも、どうしても、皆んなと話しているとその分だけ虚しくなるのだ。


 そんな感情を芽生えさせる暇などない。自分はカナリアを殺したのだから。罪を、業を背負って走り続け自分の命を削りきろうとも成し遂げねばならないのだと。


 あの日、自分が無力なせいでカナリアを失った自分を忘れ、無力の自分を受け入れてこのまま皆とのうのうと生きていく未来を想像してしまう自分に嫌気がさした。



「ここにいる皆んなと話しているたびに頭によぎるんです。カナリアを生き返らせることを後回しにして皆んなとの暮らしに甘えてしまうんじゃないかって。いつかカナリアのことを諦めてしまうんじゃないかって、それが僕には恐ろしくて堪らない」


 ノアは心の底から捻り出すように言葉を漏らす。



「……そうか。うん、キミの今までの功績を評価するべきだ。キミはあの白虎も倒せるほどに成長した。そろそろいいかもしれないね」


 葛藤と戦うノアを見てユグドラは考えこんだ末に一つの提案をした。


「いいだろう。ただし条件がある。 キミにはバッカスくんと決闘してもらおう。その結果でキミの未来を決めよう」


 ユグドラは口元に三日月のような笑みが浮かばせ、脚に繋がれた鎖を大きく鳴らした。

 ノアはその言葉に闘志の炎を瞳に宿して重く頷いた。













 ノアの退出後、しんと静まり返った部屋の中でユグドラは先ほどの笑みが嘘だったかのように落ち着いた様子でため息を吐いた。


「力が強くなるほど精神はもろく、不安定になっていく、それがあの子の呪いの代償か。でもそれすらボクの願いを叶えるためには必要なものだ…」




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