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成れ果ての不死鳥の成り上がり・苦難の道を歩み最強になるまでの物語  作者: ネクロマンシー
第1章 壊れ続ける日常
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第26話 毒猫

拝読してくださりありがとうございます。何箇所か訂正した部分があります。感想や間違えの指摘がありましたら教えて貰えると助かります。これからもよろしくお願いします。

 ノアは眠りから覚めると辺りを見回した。するとここはどこかの檻の中で鉄格子を挟んで奥には数人ほどでこちらに剣や杖を向けて警戒している仮面を被った人達に囲まれている状況だった。


「お目覚めか。気分はどうだ?」


 声の主は白虎のティグリス、下界の西区を治めている元締めだ。ティグリスは椅子に腰掛けて火がついた葉巻をくわえて煙を吸う。そして部下にノアをずっと見張ってろと命じて立ち上がると部屋から出て行こうした。


「僕をどうするつもりですか?」


 ノアは鉄格子を握りしめて威圧するように問いかけティグリスの足を止めさせた。ティグリスは振り向き上機嫌に笑いながら煙を吐く。


「そんなの決まってるだろ?憲兵に突き出すんだよ。お前は賞金首、悪者だ。街のみんなが怖がっちゃいけねぇ、だから俺様がみんなの平和ってやつを崩さねぇためにもお前を捕まえてやったのさ」


「貴方がそんな人には見えませんけどね。本当の理由くらいは教えてもらえませんか?」


「ガハハ!理由が知りたいか?教えてやるさ!金お前を捕まえれば金が貰えるから、それだけだ」


 ティグリスは檻の中のノアに人差し指を立てて、いいかと前置きすると口角を上げて盛大に笑う。


「この世は金が全てだ。金がありゃ何でもできる。食いもんも宝石も女も夢も!全て思いのままだ!金が無けりゃ何も出来やしない。お前だって金のために盗みを続けてたろ?おんなじだ。俺も金のためにお前から自由を奪う」


 ティグリスは葉巻をノアの顔に擦り付けて火を消す。

 ノアは冷静に逃げ道を考えていた。恐らくここで抵抗しても無駄に散るだけだろう。だがもしかするとこの男達には追跡能力か何かがあるのかもしれない。ノアは賞金をかけられたが手配書には場所も顔も載ってはいなかったし貴族の屋敷に侵入した時もマスクを被っていた。だがこいつらは自分の場所を特定できた。その理由を考えているとティグリスはニヤついた笑みでノアを見た。




「教えてやろうか?何故正体と場所がバレたのか。それはな、お前の仲間がお前を金で売ったからだ。俺たちにお前のことを話してくれたよ。いつ何処で襲うのが最善かってこともな」


 ティグリス達はノアが疲労した後、人のいない場所に来る時を狙うためにティグリス達は前もって知っていた情報で報酬を分けにテトの所へ行ったところを襲ったのだ。

 ティグリスはノアを鼻で笑うと部下に命令を下しその場を去った。


「憲兵に渡すまで絶対にこいつから目を離すなよ。呪い持ちかもしれねぇからな」



 それからの間、一瞬の隙すら見せずに目の前の部下達はノアを見張りつづけた。眼の力で檻から脱出しようとすると部下達が何かを察したのかすぐさまノアの頭を鉄棒で殴りつけた。ノアは完全に詰みの状況、タルタロスにいる間もバッカスや他のメンバーと接する時も念のため常に警戒を怠らず気を張っていたがやはり力にねじ伏せられて全てが無駄になってしまった。売られたとしてもタルタロスのみんなが悪いのではない、力がなかった自分が悪い。ノアは自分の力の無さにまたもや溜息をつく羽目になった。

 賞金首は捕まった場合どこかに連れて行かれるのか、それとも即処刑でもされるのかなど詳しいことはノアは知らない。だがノアは諦めておらずどうにか見張りをを殺してでも逃げ出してやろうと考えていた。ノアは今マスクをつけていない。渡されるどころか憲兵達に素顔を見られるだけでもかなりまずく、今後ハンターになることもできなくなるだろう。だから憲兵が来る前にここから脱出する必要があった。

 しかし結局数時間の間一度も逃げることができずノアが行動を移す前に近くに憲兵達の馬車が止まったのが見えた。憲兵達が到着したのだ。

 ノアもいよいよ覚悟を決めようとした時だった。周りの見張りが騒ぎだし憲兵達も何かを叫んでいた。ノアも不思議に思い鉄格子の隙間からの外の様子を覗き込んだ。そこには憲兵と部下達に囲まれている仮面を被った2人の人物がいた。それぞれ太陽と月の形の紋章を刻んだ仮面を被り金と銀の髪を揺らめかせるエルフ、アウルムとアルティナだ。



「やれやれ、新入りを返してもらおうか」

「あれでも可愛い後輩ですからね」







 ーーードォォォォォン‼︎


 金色の爆炎と銀色の暴風で壮大な爆発音を響かせ、敵を一気に蹴散らした。

 爆風とともに2人はノアのもとへ駆けつけた。

 にやりと笑いその2人の姿にノアは目を疑った。


「な、何しに来たんですか?」


「は?見てわからんのか。助けに来たに決まってるだろう!何のためにその目はついている」

「まぁ、新入りの料理が食べられなくなるのは少し勿体ないと感じたから仕方なくですよ」


 2人はノアの言動に呆れながらも檻を異能で破壊し連れ出した。


「ほら、さっさと帰るぞ」

「ロイが逃げ道を確保しています」


 ノアは自分の心の汚さに嫌気がさした。

 ノアはティグリスに仲間に売られたと言われた時、その言葉を少しも疑いはしなかった。そしてその事に特に怒りも失望も湧いてはこなかった、なぜならノアは仲間にたいして期待も信頼もしていなかったからだ。それなのに皆はノアのためにここまで助けに来てくれた。ノアの心は揺らぎ、連れ出されるときどんな表情を作ればいいのかがわからなかった。






「お、ノア。無事だったか、よかった」


 その後数人を気絶させて人間の横たわった体で作った椅子に座り込んでいたロイと合流した。


「その、ごめん」


 ノアは嬉しいような恥ずかしいような、それでいて申し訳ないようなぐちゃぐちゃとした感情を表せずに一言謝った。


「ばっか!ありがとう、だろ?俺たちもこいつらの侵入に気づけなかったしお互い様だ」

「おい、新入り。私達には何の言葉もなかったぞ」

「礼儀知らずな新入りは置いて帰りましょうか」


 ノアは体が熱くなるのを感じながらも3人にありがとうと伝えると、3人も顔を見合わせて仮面の中で笑った。






「お前ら好き勝手するじゃねぇか。そんな事しちゃうと怒られるのは俺なんだよ」




 走っていた3人の足を止めたのは一本の大きな角を生やした鬼族の男だった。そしてその後ろにも50人以上の部下が並んでいた。


「まったく幹部の仕事も楽じゃないぜ。引き渡しくらいちゃんとやれって話だよな」


 鬼族の男は軽い口調だがノア達には重い緊張感が走る。この男の実力は確かなもので、数も向こうが10倍以上だ。流石にこの人数差、4人はじりじりと後退し退路を塞がれ始めていた。そんな時どこからともなく軽い足音を立てて1人の少女が近づいてきた。



 コツ...コツ...コツ...



「次は誰だぁ?無駄な抵抗はやめて大人しく捕まっ・・・」


 近づいてくる死神の足音、ノア達を追い詰めていた男の余裕の表情が崩れだし後ろの部下達も騒めきだした。


「おい、まさかあれ!」

「タルタロスに隠れていやがったのか」

「こいつはまずいですよ!サウスさん!」


「こんなところで大物に会えるとはな。こいつを捕まえればティグリス様にも褒美が貰えるじゃねぇか」


 サウスと呼ばれた男は汗を垂らしながら口を歪める。




「ここで俺がとっ捕まえてやる!毒猫ォ!!」



 猫の仮面を被り背後から見える黒い尻尾をうねらせた毒猫と呼ばれた少女、それはテトだった。








「走るぞ!あいつらはテトに任せろ」


 ロイはテトの姿を確認するとそう提案し、走りだした。ノアはテト1人にこの人数を押し付けるロイの行動を驚き立ち止まろうとするがアルティナに腕を引っ張られてその場を離脱した。







「毒猫を捕まえればあいつらなんていらん!撃て!」


 50以上もの部下達が一斉に炎や雷、様々な異能の弾丸を1人の少女に向けて勢いよく放出した。それをテトは身軽い動きで避け、手のひらに作り出した針のようなものを指の間に挟み腕を微かに揺らして限りなく小さい予備動作でいくつか小さな棘を飛ばした。


「うわぁ!掠った」

「馬鹿、こっちにくるな!」


 被弾した敵は慌てふためき針が刺さった傷口を必死に抑えはじめた。そして周りの者もその味方から距離を取り始める。すると傷口から焼けるな痛みが広がり出し男は倒れこんだ。テトの投げた針はかするだけでも死にいたるほどの猛毒だった。



「騒ぐなっ!攻撃を止めるんじゃねぇ」


 その時点でサウス達の負けは決まっていた。弾幕を張り続けなかったことが敗因、サウスは味方に指示を出そうともう一度テトを見たときには足をすくませて座り込んでいた。





 少女の手には身長と同じくらいの長さの紫色の蒸気を漂わせながら光沢を放つ禍々しい大鎌があった。

 テトは目を伏せて静かに跳んだ。








 男達はもう少女を止めることは出来なかった。炎も風も、地面を捲り上げ盾を作り出してもその鎌は大地ごとまるで豆腐を切るかのように切断し少女は踊るように鎌を回転させ、射程距離に入る全てを刈り取った。






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