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成れ果ての不死鳥の成り上がり・苦難の道を歩み最強になるまでの物語  作者: ネクロマンシー
第1章 壊れ続ける日常
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第22話 再挑戦

 ある貴族の屋敷で一人の少年が玄関ホールの見回りをしていた。

 その少年は銀の兜をかぶり真面目に注意深く周りを警戒はしているものの、その仕事に不満があった。この男は最近騎士になったばかりの新人で騎士になる前は領主の館の警備をしていた。だがそこで一人のコソ泥のせいで追い出されてしまい、それから努力してなんとか騎士になることはできたが騎士といえばお姫様を守る正義の味方というイメージを持っていた。だが任された仕事は前と変わらず見張りをするだけ。

 しかも今日入ってきたばかりで詳しくは知らないがこの屋敷は昨日泥棒が侵入したらしくそのうえ今日の朝、予告状などというものが届いたらしい。そのため他の騎士達はいやにピリピリしていていた。


(そんなものイタズラに決まってるだろ、大体予告してから盗みに来て何のメリットがあるんだよ)


 銀の兜をかぶった男は心の中で悪態をつきながらも一応は自分の役割は全うするつもりだ。他の騎士達は昨日の泥棒が屋根から侵入したことがわかり大多数の騎士は三階に集中して待ち伏せており残りの騎士は貴族の護衛に数人ついている。そしてまだ信用が浅い自分は来る可能性が1番低いと正面玄関ホールの警戒を任されていた。


(昨日は尻尾巻いて逃げたんだろ?そんな腰抜けがまた来るわけねぇじゃん)


 そんなことを思っていたその時、事件は起きた。目の前の玄関の扉が吹き飛び城から噴き出している火の粉が勢いよく入り込んだ。そして火の粉と一緒に何者かが内部に入り込んだ。少年はすぐさま反応し剣を引き抜き侵入者を確認する。


「なっ、お前っ!この前の...」


 侵入者は黒一色に染まった鳥のマスクをつけておりどうやら扉を蹴り飛ばしたようで足の跡を残して厚い扉がひん曲がっていた。

 少年はあのおぞましいマスクに見覚えがあった。あの侵入者のせいで前の仕事を失ったのだから忘れるはずも無い。すぐさま剣を構えようとするが、その見習いの騎士は構えるのが遅すぎた。侵入者の存在に驚いている一瞬の間に懐に入られ少年は蹴り飛ばされてしまい、そこで意識は潰えた。








「おい!今の音は」

「昨日の侵入者だ!」

「まずい!一階から入ってきたぞ」


 他の騎士達が下の騒ぎに気づき駆けつけてくる。



「もう遅い。僕には追いつけない」


 ノアは眼で屋根裏に数人が待ち受けていることがわかっていたのと目当ての物が一階にあるのなら一階から入ったほうが当然早いからという理由で玄関から突っ切る方法を選んだ。



 ノアは目的地に向かって一直線、そこらに舞う火の粉とともに突風のように駆け抜ける。その速度に追いつける者はいない。

 ノアはリビングらしき場所に到着すると台の上に飾られていた黒い箱を見つける。そこには貴族達とその貴族を護衛していた騎士達が2人いた。


「貴様ッ!昨日の」

「今度は逃がさんぞ」


 騎士達はノアを二人で挟み込み剣を構えた。


「逃げる?まさか。予告状にも書いておきましたよね?今日僕は貴方達のプライドごと盗みにきた」



 昨日ノアは騎士相手に遅れをとった。それはやはりロイが言っていた通り実戦不足からなるものだった。鍛錬とは違い負けたら即終了、そのうえ相手も増えつつあった状況でノアは焦ってしまい落ち着いて相手の攻撃を処理できていなかった。

 だが今日は最初から一対多数とあらかじめ頭に入れておきながらここに来たのだ。冷静に相手の動きを分析してやれば容易いものだった。




 騎士は剣を振って対抗するがノアにはかすりもしない。だんだんと焦り始め攻撃が単調になってしまいそこにノアのけたぐりをもらう。鎧ごときしませる威力は騎士達の意識を簡単に刈り取っていく。近づいてきた敵の存在もわかっていたかのようなタイミングで、ノアは背後から攻撃しようとした騎士に振り返りながらも回し蹴りを放ち、全方位から繰り出される剣達を順番にへし折っていく。



 ノアは倒れた二人の騎士を跨ぐと飾られてある黒い箱を掴み取った。貴族の男が何かを叫ぼうとしたがノアがそちら向くと子羊のように怯えて蹲った。



「居たぞ!囲い込め!」


 しかし仕事は簡単に終わる様子を見せない。騎士達は今もぞろぞろと増え始めているのだ。


「諦めろ。この人数を相手に逃げることはできんぞ」

「賊が!調子に乗りよって」


 十数人の騎士がいっせいに剣をこちらに向けて勝ちを確信した。確かにノアもこの人数と戦い勝つことは出来ないだろう。


 だがノアは黒鳥のマスクの下で微笑んで優雅に頭を下げた。


「こんばんは、僕は貴方達を待っていました」


「ッ何を言ってる。今更命乞いは聞かんぞ」


「くく、せっかく勝利を盗みに来たんだ。貰うなら完璧な勝利を、だ」


 ノアにこの人数の騎士達と戦っても勝ち目は薄い。だがこの人数を一人で叩きのめせるようにならないといけない。

 だがそれは今じゃなくてもいい。今日ノアがやる事はただの嫌がらせ、意趣返し、腹いせなのだから。


 ノアはこの人数相手に逃げ切ることを達成目標にした。

 ノアは騎士達に向かって走りだす。騎士達も剣をノアめがけて振るが、ノアはそれらを笑うようにかいくぐっていく。次々に振るわれる一振り一振りを眼で追い、避け、躱していく。


「どうした?避けてばかりか!」

「おい、お前。顔!」

「?、!!」


 騎士達はあることに気づく。全員の兜が脱げて顔が剥き出しになっていることを。なかにはいつの間にかやられている者もいる。

 兜を探すとそこら中に転がっており、いくつかはノアの指の上でくるくると回されていた。


「今日は挨拶だけに。機会があればまたお会いしましょう。それでは」


 ノアは手に持っていた兜を放り投げ、マスクの奥で悪戯を成功させた子供のように笑う。兜を剥ぎ取られて驚き、足を止めた騎士の上を堂々と飛んで外へと出て行った。



「……なんなんだ、あいつは」


 騎士達は我にかえると、耳に残された笑い声に歯軋りし、一人のコソ泥すら捕まえられなかったという敗北感を味わった。























 ーーーーーーーーーーー

 ノアは屋敷から出ると近くの小道に身を隠し、マスクを外して一息ついていた。余裕ぶってはいたがあれ以上は避けれる自信はないし体力も持たなかっただろう。だが目的の箱は盗んだし仕事は成功だ。何より騎士達の悔しがる表情を堪能できた。


「はは、流石に疲れたかな」


 腰を上げて帰ろうとした時、近くで声があがった。


「ッ!?まさか追って……」


 反射的に眼の力で知覚範囲を拡大させ周りを探る。しかし動く影はこちらに意識を割いているそぶりはなく、何か言い争いをしているようだった。



「いい加減にして!」


 影から覗くと、道端で二人の人物が道で言い争いをしていた。端麗な容姿をした少女が顔を怒りに染めて男を拒絶しているようだった。


「いいじゃないか。早く俺のものになれよ」


 男のほうも顔は整っており今まで自分のものにできない女なんていなかった。なのに目の前の少女は幾度も自分を拒む。だがあまりにも目を奪われるほどの美しさに無理やりにでも自分のものにしたいという欲がでていた。


「そんなに抵抗するなら力づくでも俺のものにしちゃおうかな?」


 男が舌舐めずりをしながら指を鳴らすと背後からもう2人仲間が現れ少女に襲いかかった。




 ――今から彼女は男達に襲われ、犯され、悲惨な目に遭うのだろう。それはノアにとってどうでもいいことで、関わる必要なんてない出来事だ。

 それなのに、ノアは視線を外すことができなかった。


 男たちの攻撃を必死に避ける少女は白く、その長い髪をなびかせている横顔はまるで……


「カナ……リア?」
















 ――――少女に向かって男達は、異能で地面の形を変形させた槍状の岩を足元から地響きと共にもの凄い勢いで何十本も出現させる。少女はその槍を躱し続けてはいるが相手は3人、その槍の数は次々に増えていき逃げ道は無くなってきている。


 相手の男達の実力は一人一人本物で、磨かれた一撃にやがて少女が避けきれなくなり、ついに一本の槍が脚に突き刺さった。




「……………………助けないと。カナリアがっ。……僕が、なんとかしないと」


 相手の強さは遠くからでも理解できるほど強かった。ノアが1人飛び出したところで瞬殺されるかもしれない。だがそんな冷静な判断はとっくに消え、赤い血が少女の足から滴り地面に垂れた事に反応したように、ノアは真紅の瞳を揺らがせた。


『その子に触るなッ』












――――――


「ごめんなぁ、君が抵抗するから少し手荒くなっちゃって」


 少女は気を失いかけており、男達は弱った少女に近寄りながらニヤニヤと下衆な笑みを浮かべている。


「最初から大人しくしていればよかったのに」


 岩の槍に囲まれた動けなくなった少女を持ち帰ろうと男は手を差し伸べるがそこで動きを止めた。


「誰だ」


 男は何かの存在に気づき声をあげた。


そこにあるのは、白い羽をゆっくりと広げ、釘を打ち付けるような感情を込めた少年の姿。




「今度は僕が守る番だ」


「……あ?」


 男達は、なんの躊躇もなく一斉にノアに向かって数十本の岩の槍を繰り出した。それは男たちの残虐性を体現したような攻撃だった。


「何だこいつ?!」


 だが、岩の槍が急に不自然に曲がり違う方向へ伸びていき一本もノアには届かなかった。


「こいつ、呪い持ちか!」


 男達はノアを警戒して構える。しかしノアは男達の方ではなく少女の元へ飛んでいた。

 ノアは少女の周りの岩を空間ごと消し去ると、少女を抱えて羽を広げて飛び立とうとする。しかしその瞬間、突如ノアの羽に穴が開く。地の槍に羽を貫かれたのだ。


「おい。その子は俺のものだ。勝手に連れて行くことは許さん」


 男は地面から大きな岩の腕を作り出しノアに向かってその腕を伸ばした。


(カナリアだけは守り抜くんだ)


ノアは咄嗟に少女を横に投げるとそのまま巨大な岩の拳にぐしゃりと嫌な音をたてて殴り潰された。

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