114.受け入れる神、反発する神。
―第2位 カシュリア神視点―
創造神の思い切った宣言に、周りからどよめきが上がる。
私自身も少し驚いている。
まさか、これまでの創造神の在り方を否定するような宣言をするとは思わなかった。
少し離れた場所にいるフィオ神に視線を向ける。
その表情を見て、少し意外に感じた。
「フィオ神が、宣言させたわけではないのか」
今の創造神は、フィオ神が後押ししてその地位に就いた。
だから、少し色々あったが。
いや、その色々があったからこそフィオ神が創造神を動かすと思っていた。
でも、どうやらそれは違うらしい。
フィオ神は、私と同じように驚いている。
まさか、創造神の暴走か?
そうなると、また神国が荒れる可能性があるんだが。
あれ?
フィオ神が周りを気にしだした?
何かあるのか?
んっ?
今、神力の揺れを感じたような気がしたけれど。
創造神の近くか?
……いや、何も無いな。
気のせいか。
あれっ、おかしな動きをしている神達がいるな。
周りにいる神達もだ。
気になるな。
フィオ神は、奴等の動きに気付いてるみたいだな。
私はどう動くべきだ?
ん~、フィオ神の邪魔をしたくないし、聞いた方がいいか。
不穏な動きをしている神達に注意を向けながら、フィオ神の傍に寄る。
「何かあるのか?」
「何がだ?」
フィオ神の不思議そうな表情に、首を傾げる。
えっ、気付いているよな?
「動きがおかしい神が4柱。その神達の仲間も怪しい動きをしている」
フィオ神の表情をジッと見る。
なんだ、やっぱり気付いているんじゃないか。
「創造神に危害を加える可能性がある」
あぁ、さっきの宣言に煽られたのか。
「なるほど。フィオ神は動くな。私が動く。部下も動きたいだろうし」
部屋の隅で指示を待っている仲間達を見る。
密かに私が鍛え上げている神達で、いずれ彼等の力が役立つ時が来ると思っている。
フィオ神を見る。
特に部下達の事に驚いた様子はない。
なんだ、秘密にしていたのに知っていたのか。
「分かった。カシュリア神に任せる」
フィオ神の言葉に、微かな違和感を覚えた。
「んっ?」
なんだ?
「……今、誰に言ったんだ?」
私以外に声を掛けたような気がしたけど。
「カシュリア神だが?」
「……そうだよな。悪い」
本当か?
フィオ神を見るが、怪しいところはない。
気のせいか……んっ?
まぁ、今はそれを気にしている時ではないな。
部下に合図を送り、創造神の警護を強化する。
これで神達が動いても、すぐに対応出来る。
「今までの遠い存在だった創造神は、多くの間違いを犯してきた。このままでは、創造神は神国から不要な物として排除されるだろう。そして創造神が排除された神国は、滅びへと突き進む事になる。今、変わらなければ先は無い」
創造神の言葉に、神達が黙り込む。
「話は以上だ。今、この時より創造神の住むこの場所は開放される」
創造神はそう宣言すると、片手を上にあげた。
次の瞬間、創造神に向かって神力で作られた矢が放たれた。
「守れ!」
言葉と同時に、部下達が創造神を守るために結界を張る。
バチバチバチ。
結界に矢が当たり弾ける。
「くそっ!」
攻撃を仕掛けた神達が悔しそうな表情で私を睨むと、こちらに向かって矢を放った。
奴等の力はそれほど強くない。
だから、攻撃されたところで問題はない。
それなら、
「奴等を、捕まえろ!」
近付く矢を力で弾き飛ばし、部下に指示を飛ばす。
関係のない神達が部屋の隅に逃げるのを見ながら、攻撃してくる神達を拘束するために一気に距離を詰め、目の前に来た神の腹に膝を入れる。
「ぐふっ」
近付かれた事に混乱した神達の動きが乱れる。
その隙を狙って1柱1柱、力でねじ伏せて行く。
部下達も、協力して敵を倒している。
「こうなったら」
追い詰められた神が、何かを地面に叩きつけた。
ぶわっ。
黒い禍々しい力が空中に現れる。
「なんだ?」
全身が、その禍々しい力を拒絶しているのが分かる。
気を抜いたら、全身震えそうだ。
ぐっと体に力を入れて、黒い力を睨み付ける。
黒い力はぐるぐると回りだし、徐々に大きくなっていく。
これは、攻撃しても良い物なのか?
部下達が私を見ている事に気付く。
でも、私にもこれをどうしていいのか分からない。
「あはははっ、下手に攻撃をしない方がいい。一気に爆発してこの辺りは終わりだ」
黒い力を出現させた神が、狂ったように笑う。
その不快感に眉間に皺が寄る。
創造神だけでも逃がそうと視線を向けると、彼は何もない方向を見ていた。
そして、
「止まれ」
創造神の少し大きめの声が、部屋に響く。
ぐるぐる回っていた黒い力がぴたりと動きを止める。
「えっ? なんで?」
笑っていた神が、唖然と動きを止めた黒い力を見る。
「消滅」
創造神の言葉と同時に、目の前に在った黒い力が消えた。
「凄いな」
創造神の言葉に首を傾げる。
創造神が解決したのに、誰かがしたような言い方だ。
「どうして? 消えた?」
黒い力があった場所に立つ神は、ありえないと繰り返し首を横に振る。
「カシュリア神」
創造神の言葉に、胸に手を当て答える。
「はっ」
「騒動を起こした神を全て捕らえ、調べろ」
「はっ」
顔を上げて創造神を見る。
こちらを見ていたのか視線が合うと、ゾクッとした神力を感じた。
この瞬間だけで、創造神と私の力の差を感じる。
兄の神力にも恐怖を感じたけれど、創造神から感じる神力は別格の様だ。
「あと、さっきの道具について詳しく調べるように」
黒い力が出てきたあの道具の事だな。
「分かりました」
「頼んだ」
創造神は、逃げて部屋の隅に寄った神達に視線を向ける。
「既にこの建物は開放された。今日の集まりはここまで、解散」
創造神が部屋から出て行くのを、全ての神が固唾をのんで見守る。
「はぁ」
創造神の姿が見えなくなった瞬間、息を吐き出す。
どうやら息を止めていたみたいだ。
「大丈夫か?」
第1位で兄のガルアル神に視線を向ける。
「顔が真っ青だぞ」
「ははっ。大丈夫だ」
創造神から感じる圧に体が委縮しただけだ。
「カシュリア神」
「どうした?」
部下が私の前で小さく頭を下げる。
「2柱が、部屋から逃げ出しました。彼等を追いますか?」
「あぁ、追ってくれ。逃がさないように」
「はっ」
部下達の一部が、部屋から飛び出していくのを見る。
手を見ると、まだ微かに震えている。
「大丈夫なのか?」
「創造神の力をぶつけられて、体が恐怖に震えているだけだ」
声に視線を向けるとフィオ神が、目の前にいた。
声を掛けられるまで気付かなかったなんて。
「どうして創造神がそんな事を?」
ガルアル神の言葉に、フィオ神が肩を竦める。
「創造神としての力が使えるようになってまだ日が浅い。おそらく創造神は、力をぶつけた事にも気付いていないだろう」
そういうものなのか?
「詳しいな」
「まぁな」
ガルアル神の質問に、視線を逸らすフィオ神。
これ以上は聞かれたくないようだ。
呪界王関連かな。
「カシュリア神。全員を捕まえました」
部下の報告に笑みが浮かぶ。
良かった。
「では、尋問があるから。何か分かったら報告する」
創造神からの命令だから、しっかり応えないとな。




