93.頼りない存在。
お昼ご飯が終ると、子供達は勉強の時間。
楽しそうに、勉強に向かう子供達を見送るとのんびりお茶をする。
「この時間にお茶をしているのは、数日ぶりだな」
飛びトカゲの言葉に頷く。
「そうだな。ここ数日は魔界との話し合いがあったから」
呪界と魔界のこれからについて、オウ魔界王や魔神達と通信機を通して話し合いをした。
まぁ、「これからも仲良くしていきましょう」という話だ。
通信機から聞こえてくる魔神達の様子は、かなり落ち着いていた。
神国の動きは警戒しているが、魔界全体ではいい方向へ向かっている様だ。
だが、生活方面はまだまだ不安な部分が多い。
特に深刻なのが、住処と食。
これらに関しては、長期的に手助けする事が決まった。
ただ呪界というか俺が、オウ魔界王より目立つのは駄目だ。
魔界のトップは、オウ魔界王。
これを揺るがす事は、危険な行為になる。
だから、オウ魔界王の指示でゴルア魔神が動いている事になった。
サブリーダーは、ゴルア魔神の補佐という形で落ち着いた。
魔界を動かしているのは、俺や俺の仲間ではなくオウ魔界王という事実を作るのは、とても重要だ。
「今日は、話し合いが無いのか?」
「うん。全て終わった。魔神達との話し合いは楽しかったよ」
魔界との関係は、もう大丈夫。
あとは、神国なんだけど。
テーブルの上にある魔石を、取る。
手の中で転がしていると、飛びトカゲが不思議そうに俺を見た。
「空の魔石だな。どうしたんだ、それ」
「これは、神国から呪いを持って来てもらうのに使った魔石なんだ」
この魔石から、正体不明の声が聞こえてきた。
その事を神族達に聞いてみたら「魔石を置いた神達は、どこかの星に逃げた」という噂話を教えてくれた。
だからロープに、神国の中で存在を隠している星があるか探してもらったんだよな。
ただの噂話の可能性もあったけど、もしかしたら本当の事かもしれないと思ったから。
そして、ロープは見つけてくれた。
落ち神やその仲間達に利用されそうになって逃げた、力の弱い神達を。
「どうしようかな」
ロープに様子を見てもらったが、かなり厳しい生活をしているようだ。
今も、力を使えば落ち神に気付かれると思って怯えている。
そう、彼等は落ち神が排除された事を知らないのだ。
落ち神がいない事を知らせたいが、俺が知らせて良いのか?
それは同じ神達がする事だよな?
でも、神達は彼等に掛ける時間が無い。
原因は、なぜか裏切り者の神が見つからないから。
ロープの話では、捜査と調査にかなりの神が駆り出されているそうだ。
「裏切り者か」
俺は、裏切り者が見つからない事にかなり疑問を持っている。
なぜなら、創造神が本気で見つけたいと願えば、絶対に見つけられるはずだからだ。
世界の王には、それだけの力がある。
なのに、創造神は見つけられないと言っている。
創造神が、俺より力が弱いのは知っている。
でも、裏切り者を見つけるぐらいなら力の強弱は関係ない。
創造神は、裏切り者を見つける気がない。
「いや、もっと悪いか。創造神が、裏切り者を神達から隠しているのかも」
不安定だと聞いた。
優柔不断だとも。
でも、それだけではないようだ。
「飛びトカゲ」
「どうした?」
「創造神が、神国を不安定にするのはどうしてだと思う?」
「創造神が?」
俺の言葉に驚いた声を出す飛びトカゲに頷く。
「そう、創造神が」
「それは、その世界を壊したいからではないのか?」
壊したい?
「ん~、それはどうだろう? 本気で神国を壊したいなら、神達を上手く使って争いを起こすと思う。落ち神とその仲間が大量に出た事で、神達は仲間への不信感が増している。今なら、その不信感を利用して争いを起こさせるのは簡単だ」
神同士の争いは、いずれ神国を崩壊させるだろう。
でも、神達の様子を聞く限り、争うより徐々に纏まってきている。
もしかして、これが目的とか?
「不安を煽って、創造神に縋るように仕向けているとか?」
「今の創造神に、縋るような神がいるのか?」
はっきり言って、もの凄く頼りない。
創造神に頼るぐらいなら、別の力のある神に頼るだろう。
「世界がどんどん不安定になれば、頼らないか?」
飛びトカゲの言葉に首を横に振る。
「そうなったら余計に頼らないと思う」
もしこのまま神国の情勢が悪化したら、創造神の入れ替えが行われるだろう。
フィオ神が、次の創造神候補を探すと言っていたし。
んっ?
「どうした?」
呪界に、何かの振動が伝わって来た。
何処からだ?
……神国?
「主? 大丈夫?」
飛びトカゲを見ると、首を傾げて俺を見ていた。
今の振動に、飛びトカゲは気付かなかったみたいだな。
という事は、今のところ世界に影響は無いだろう。
「大丈夫、ありがとう。神国で何かあったみたいだ」
まずは、何があったのか調べないとな。
今の振動が、後で呪界に影響を与える可能性だってあるし。
意識を呪界と接している神国に触れさせて……。
「あれ? 結界が無くなってる」
神国の結界が消えたのは初めてだな。
どうして消えたんだ?
「神国で、何があったんだ?」
飛びトカゲの言葉に、首を傾げる。
「どうやら神国を守る結界が、破壊されたみたいだ」
振動の方向から考えて、神国の内部から破壊したみたいだな。
神が、自分達を守る結界を破壊したのか?
なんで?
「主! 聞こえる?」
「ロープか? 聞こえているけど、神国で何があったんだ?」
「神が結界を破壊して、大量の神族を魔界に落としたみたい」
んっ?
「結界を壊さなくても、穴から神族を落とせたよな?」
「あっ、そうだった。結界を壊す必要は無いよね」
ロープの不思議そうな声に、俺も首を傾げる。
「もしかして、結界を壊した魔神が神族を攫ったとか言い出さないだろうな」
「はははっ、まさか。……えっ。まさかだよね?」
俺の言葉に笑うロープ。
でも、それが途中で不安そうな声に変わる。
これまでの神の行動を考えて……やるな。
「ロープ。アイオン神に、結界を壊したのが神だと伝えてくれ。神族を落としたのも神だと」
「分かった」
まぁ、これで最悪な事にはならないだろう。
それにしても……結界が修復されないな。
創造神も既に結界が破壊された事は、知っているはずなのに。
「はぁ、創造神はどうやら間違った方向に突き進んで行くみたいだな」
あっ、広場と魔界が繋がった。
「主! 魔界に神族が落ちてきました!」
サブリーダーの声に、広場に出る。
「落ちた神族達は、いますぐ呪界に移動できそうか?」
「それは無理だと思います」
サブリーダーの言葉に首を傾げる。
魔界にいるより、呪界に来た方がいいと思うのだけど。
「神国から無理やり落とされたせいで、負荷がかかり体を痛めたようです。今、移動させると最悪死ぬ可能性があります。まずは痛めた体を治す事が重要だと思います」
「分かった」
神族の痛めた体を癒すなら、神国と同じ環境の方が治りは早いよな。
「神力と光の魔力だけの空間を作るか」
手の中にあった魔石に、神力と光の魔力を籠め、傍にあった棚からもう1つ魔石を取る。
新しい魔石には、部屋に合わせた結界が張られるように魔法を籠めた。
「これで彼等の体に負荷がかからない空間を作ってくれ。それでも落ち着かなかったら、連絡をくれ」
「分かりました。ありがとうございます」
あっ、神国と繋がった。
おそらく――
「翔! 助けてくれ! 魔界に仲間が落とされた!」
「アイオン神落ち着いて、魔界に落ちた神族は、サブリーダーと魔族が助けたから」
「へっ? そうなのか?」
「はい。落ちてきた神族は、全員無事です」
サブリーダーの説明に、アイオン神がホッとした様子で座り込む。
「良かったぁ」




