四十二話 一年夏休み22
「ところで秋田くんはなんで妙に私と辻村くんのペアを推してるの」
「攻略対象が槙原さんから興味なくなったらたぶん平和に一歩近づくじゃん」
「私を生贄にするつもりか」
酷くないか。友人のはずなのに。
「というのは半分冗談で」
「半分本当じゃないか」
「ただの趣味」
「しゅみ」
「そう、趣味」
趣味なら仕方ないか。今のところ実害ないし放置しよう。そう心に決めて頼んでいたポテトを1つつまむ。美味しい。
「というか、真面目な話、槇原さんとその他攻略キャラたち、お互いに興味ある?」
「……」
槇原はイケオジ専門だし赤坂は完全に女子が苦手らしいし辻村はそこまで深く関わってないし木野村は普通に仲良くしてるし篠崎は同じ生徒会同士仲良くしてるくらいで菊野先生は普通に生徒と教師、山内くんはそもそも恐らく出会ってない。
「……人並みには……あるんじゃないかな」
「これで何もないなら別にいいけど実は俺達の知らない攻略キャラがいてそいつと恋に落ちて一波乱……とかだったら泣く」
それは泣く。
「でも秋田くんたしか全攻略したんじゃなかったの」
「したはず。だけど記憶あやふやなとこあるからなぁ。俺の記憶だと山内くんがある種の隠しルートだったはず。ハーレムとかあったかな」
「はーれむ」
「ハーレム。友情エンドはあったはず」
「じゃあ友情エンドまっしぐらとか」
「だといいけど……」
ところでハーレムエンドがあるのならそれはちょっと気になる。この一夫一妻制の国でどうハーレムするんだ。事実婚?
「友情エンドかぁ………………凄く正直な欲を言っていい?」
「どうぞ」
真面目な顔で私に許可を取りに来た秋田くんに特に迷うことなく許可を出す。ジュース無くなってきたし次はドリンクバーでちゃんぽんしようかな。
「平和な学生生活は送りたいから巻き込まれたくはないけどスチルと同じ場面は目撃したい……!!」
だいぶ欲望にまみれていた。だけどわからなくもない。私だって見てみたい。
「ちなみにどの場面?」
「山内くんが雨に濡れつつ頬を染めるシーン」
状況が何一つとしてわからないシーンだな。山内くんルートやってないからなんだけど。そんなシーンあるのか。
「波留さん見たいシーンないの?」
「……私は全ルートやってない上にたぶん君よりゲームのこと忘れてるんだよ」
「うん」
「覚えてるのがヤンデレルートに突入した辻村の恍惚とした表情のスチル」
「…………………………うん」
「…………見たいけど見たくない」
辻村はイケメンなので絵にはなるだろうがそんなシーンは怖くてみたくない。
「というか、スチル見られるのは主人公だしな」
「そうなんだよね〜。俺らはどうあがいても第三者。あのスチルたちは見られないんだ……」
がっくりと肩を落とした秋田くんは悲しそうな顔をしながらポテトを食べている。
そんなに見たかったのか、スチル。




