五十話 ~創造神~
「創造神様…ですか?」
「そう、創造神様。僕なんかじゃどうにも出来ない程に絶対的な権力を持ってる存在さ。滅多に姿を見せてくれないけど悪い人ではないよ」
力の悪用を禁じているのだから、単純に受け取ればたしかに悪い人ではないのだろう。……けど、滅多に姿を現さないというのが引っかかる
「えっと…どうして姿が見えないんですか?」
「悪いけど、それは僕にも分からない。……もし知っていたとしても教えることは出来ないのだけれど」
「……ですよねー」
まぁ、当然だよな。創造神といういうことは、つまり最上神であるゼティス様よりも偉いわけで……。いや、そもそもそういうの関係なく、勝手に誰かの情報渡すような人じゃないよな、この人は
「とは言ったけど、それはついこの間までの話だよ。君がこっちに来てからは、よく姿を見せてくれるんだ」
「へ……?」
「何故かは分からないけどね。きっと君に何か感じたんじゃないかな?」
……訳が分からない。俺、そんな偉い存在に何か注目されるようなことしたっけ?
試しに日本での生活を思い出してみるが……何も浮かばない。少なくとも高校に入ってからは無為に時間を浪費していたとしか記憶にはない
中学の時は……小学校からのこと引きずって、周りに迷惑かけてばっかだったな……
……うん、これ以上は何も思い出したくない。どれだけ考えても理由が分からん!
「……やっぱり特に特別なことなんてないですよ」
「う~ん、ひょっとしたら君に自覚がないだけで、創造神様にとって特別な何かがあるのかな?」
「いやいや、まさか……」
「理由が分からないなら、分かる時が来るのを待てばいいさ。……さてと、リュウトくん。君は僕に言いたいことがあるんじゃないかい?」
ゼティス様が、これ以上同じ話をしていても仕方がないとばかりに、話の内容を切り替えた。
……というか、言いたいことって……。
「……バレてました?」
口角を少しだけつり上げて、目線を左に逸らして答える
やっぱり、俺はこの人に隠し事が出来る気がしない
「人間の闇を見抜けなくて何が神って話だからね。本人も気づかない程奥底にあるものだと出来ないけれど」
これぐらいは出来て当たり前……と、ゼティス様は何でもなさそうに言った
「やっぱり、凄いなー……」
「…………」
口を開けて、アホ面を晒す俺とは別に、リーナさんは無言でむすっとした表情をしている
「あ、ごめんリーナ。そういうつもりで言ったんじゃないんだ」
「……気にしてませんよ」
「えっと…どうかしたんですか?」
「察して下さい」
「あっ…はい」
……つまり、リーナさんにはゼティス様がやったようなことは出来ないというわけかな。……俺、今かなり失礼なこと考えてるな
「話が脱線しかけちゃったみたいだ。それで?君は僕に何を言いたいんだい?」
「はい。……俺は」
ずっと考えていたことを吐き出す為に、少しだけ大きく息を吸う
「……俺は今日、初めて人を殺しました。」
「それはどうして?」
あくまでも優しい声色で俺に向かって聞き返してくる
「……盗賊団のアジトに入ったんですよ。俺にとって先輩のような人と、その人と仲のいい人達でパーティーを組んで」
「……………」
「途中ではぐれたんです。それで、一人でいるときに盗賊の一人に見つかって……それで」
「殺しちゃったんだね」
「……はい、人を殺すというのがどういうことかも分かっていない状態で……、モンスター相手には慣れていたから、それと同じようなものだと思い込んでいたんです」
「……襲い掛かったのはどっちからだい?」
「……向こうの方からです。軽い気持ちで反撃して…それで殺してしまったんです。」
あの時の自分の言葉は、今思い返しただけでも、腹が立つ。何が死ぬのはお前だ、だよ。慣れと覚悟を勘違いしてただけじゃないか
「そっか、なら別にいいんじゃないかな」
「……え?」
「もし、出来なかったら君が殺されてたわけだし、余計に被害が増えてた可能性もあるしね。……まあ、君が言いたいのはそういうことではないんだろうけど」
「……はい」
「それで、君はどうしたいのかな?責められたい?それとも、励まして欲しいのかな?」
「……………」
……なんか、話し方がいつもよりキツい気がする。責められたとしても、文句は言えないんだけど
「ま、分からないよね。やっぱり答えなくてもいいよ……で、どうする?君にかけた暗示をもっと強くするって方法もあるけど」
それはたしかにいいかもしれない。でも、これは自分の力でどうにかするべき問題だ
「いや、止めておきます。……これは自分でどうにかしないと」
だから、断らないといけない。クルスさんだってそうだったんだ。俺だけ特別扱いなんてされてはいけない
「うん、いいよ。じゃあ既に君に掛かっている暗示はどうする?」
「……外して下さい。ここからは自分の力でどうにかします」
意を決して、俺は自分に掛けられた暗示を外して貰うように頼んだ
「いい覚悟だ。うん、君ならどうにかなるさ。……じゃ、目を閉じて」
優しく微笑んでそう言うとゼティス様は俺に向かって手をかざす。
……変な感覚だ。何かが剥がれている気がする
「……これで完了。気分はどうだい?」
「……あんまり分かりません。特に変わったことはないかと」
「だろうね。暗示がなくても、もう君は既に克服してるわけだから。……少なくともモンスター相手には」
「仮にも生き物を殺すことに慣れるなんて、元の世界にいたときには考えもしませんでした」
当然のことだ。俺は日本にいたときは普通の高校生だったんだ。まさか、異世界が本当にあるなんて思ってなかったし、自分が死んで転生するなんてことも思っていなかった
「そうだね、だけど、冒険者として生きることを選んだのならそれが出来ないと生き残れない。……それに、仕事によっては今日みたいに人間を相手にしないといけないことも大いに有り得る」
「……それでも慣れるしかないんです。俺はこっちの世界で生きるって決めたんですから」
「応援してるよ。本当は一人の人間だけに肩入れするのは駄目なんだけどね。万が一指摘されても地位で聞き流しておくから」
「酷い職権乱用を見た……」
冗談がいくらなんでも黒すぎるって……。というか、もし創造神様に問い詰められたらどうするんだ……
「冗談はここまでにしておいて。君がこちらに来た原因は完全にこちらの不手際なわけだから、出来る限りサポートをするのは義務みたいなものなんだ。だから文句なんて出てこないさ」
「いや、でも止めようとはしてくれたんですよね!?」
「出来なかったから君がここにいるんだ。……甘んじて受け入れてくれたまえよ」
「……分かりました。なら、どうしても思い詰まったら相談に来ます。……ひょっとしたら用がなくても来るかもしれませんけど」
「歓迎するよ」
ゼティス様は俺のちょっとした冗談に、軽く笑いながら言う。……余裕が出来たら本当に遊びにこようかな
「それでどうだい?少しは楽になったかな?」
「……えぇ、まぁ。話をしてたら少しよくなりました。ありがとうございます」
「じゃ、もう用は済んだかな?」
「はい。そろそろ帰った方がいいですか?」
「直ぐに、帰る必要はないけど……。遅くなっちゃうかもしれないしね。それに宿で女の子が待ってるだろ?」
……たしかに、今日一日ずっとレニアのことを待たせてるよな。……でも、変な意味に聞こえるから少し言い方は変えて欲しかった
「だからさ、早く帰って安心させてあげなよ」
「……ですね」
「じゃあそこに立ってね。……二人共、話は終わったからこっちに戻ってきて!」
ゼティス様のその言葉を聞き、リーナさんとエクスが戻ってくる
「じゃあ、そこに並んで……。はい、眩しいから目を閉じてね。元の場所に送るよ」
言われたとおりに目を閉じる。直後に眩しい光が俺の体を飲み込んだ。
そして、再び目を開けると……
「……戻ってきたか」
俺達は教会の中に戻ってきた
半年近くお待たせしてしまい申し訳ございません。言い訳と今後のことについて活動報告に書かせていただいたので、よろしければ目をお通し下さい




