↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/67

四三話 ~過去の記憶~

その後も龍斗の行く先には複数の見えない壁が道を塞いでおり。まるで案内されるように運動場に出た

 

 (……多分、周囲の人間には俺の姿は見えていないし、こっちからも干渉は出来ないんだろうな)

 

 廊下を歩いている最中に他にも職員とすれ違ったが、誰一人として龍斗に気づいた様子はなかった。肩がぶつかると思えばすり抜けたりもした 

 

 現在、彼がいる運動場には沢山の子供達が仲良く遊んでいる風景が映っている

 

 (にしても……なんで俺はこの幼稚園に……。……え!)

  

 そんな中、龍斗はあることに気づいた。一人の少女が明らかに仲間外れにされているのだ

 

 『おい…嘘…だろ。あれは…!』

 

 所謂いじめという奴だろう。自分達とは違う異物を明確に拒絶する。この年代の子供達にはよくあることだ

 

 だが龍斗が驚いたのはいじめがあることではない。仲間外れにされている少女の姿に彼は驚いたのだ

 

 『あの子……は』

 

 その少女の容姿は緑髪に黄色い瞳が特徴的な、日本人離れしている容姿だった。そしてなにより決定的な理由。彼女は

 

 『アリ…サ…?』

 

 かつての、幼少時代の龍斗の友人だったのだ

 

 

 

 

 

 視界が一瞬暗転する。場面が切り替わったものの、映し出されたのは再び少女が仲間外れにされている様子だ

 

 『見覚えがあると思ったらそういうことかよ!あぁそうだ。ここは俺の通っていた幼稚園だよ!』

 

 かつての友人である少女がいじめられている様子を見せられ、怒りで声が震えている

 

 割って入っていこうにも、こちらから干渉は出来ない。向こうには声は届かないし触れることも出来ないのだ

 

 『見てろっていうのか…!友達が辛い目に遭っている場面を黙って見てろって!?』

 

 怒りをぶつけても、誰にも届くことはない。少し時間が経つと再び場面が切り替わった

 

 "こわい"

 

 "きもちわるい"

 

 "こっちにこないで"

 

 今度は彼女が周りの子供達から陰口を叩かれている様子が映ったのだ

 

 「……………………」

 

 それに気づいているのかいないのか、少女は暗いオーラを纏わせながら下を向いて廊下を歩いている

 

 近くを通りかかった先生達は、気づいている様子を見せながらも止めようとする気配はない

 

 『何で!先生達も何で止めようとしないんだ!』

 

 何度も何度も龍斗は怒りを周りに撒き散らしていく

 

 頭では既に分かっている、ここは過去の世界なのだと。そして、少なくとも『今』の自分には何もできないということを

 

 それでも精神が、意識が、この状況を認めることが出来ないのだ

 

 

 

 

 

 

 それからも無慈悲に視界は何度も暗転し、場面が切り替わっていった。

 

 そして、その度にいじめの内容がエスカレートしていっているのが鈍感な龍斗にもはっきりと分かった

 

 『……子供は残酷だ』

 

 幼い子供達は善悪の区別がつかない。少女をいじめている幼い人間は、自分達がやっていることが悪だと分かっていない

 

 だからこそ、大人である職員、先生達がこれは悪いことだと教えなければならない

 

 だが、彼等はそれを教えようとしていない。ただ一言、皆がやっていることは悪いことだと教えるだけでいいのにも関わらずだ

 

 故に、子供達の行為は徐々に苛烈になっていく。止める人間がいないが為に、純粋な子供達は悪意もなく、皆を怖がらせる異物は悪い奴という間違った正義感で一人の少女を壊していくのだ

 

 「化け物め」

 

 「怪物め」

 

 「僕達がここで成敗してやる」

 

 「いたい…いたいよぉ…」

 

 二人の少年が、一人の少女を怪物に見立て、一方的に暴力を振るっている

 

 そんな光景をみた龍斗には、子供達が得体の知れない恐ろしい何かにしか見えなくなっていった

 

 『どうにか…どうにかならないのかよぉ…!畜生…誰でもいい。誰でもいいんだ。俺の友達を…アリサのことを助けてやってくれぇ!』

 

 いくら祈っても、ここは過去の世界。未来の存在…それも既に一度死んでいる龍斗には過去に影響なんて与えられない

 

 ……もしも少女を救えるとするなら、それは…

 

 「も…もうやめてあげて!その子を放して!」

 

 「りゅ、龍斗くん!行っちゃだめだって!」

 

 ……同じ時間に存在する、一人の幼い少年くらいなのだ

  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。