三五話 ~盗賊退治~
一話分抜けていたので差し込み、混乱させてしまいすみませんでした
「……で、だ。いつも通り随分と遅くなったわけだがクエストを紹介してくれよ」
「……はい、そうですね、こちらなんてどうでしょうか?」
ユーナさんはそう言うとクエストの紙を差し出してきた
「成程…な。よし、龍斗、勉強の成果だ。ちょっとこれを読んで見ろ」
「ちょ……いきなり実践っすか!?」
「おう、初実践だ。大丈夫だ。お前ならいけるだろ」
クルスさんはそう言いながら俺に紙を押しつけてきた
「分かりましたよ……えっと……盗賊退治……?あの…これってつまり」
文字を殆ど覚えたと言っても、まだまだうろ覚えだ。だがそれでも大まかな内容は分かるぐらいにはなった
「あぁ、そういうことだ。この街も被害に遭う前にこういう奴らは退治しなければいけない。……いやな話にするが、要は悪人とはいえ人殺しをしなければいけない」
「人…殺し…」
俺はこちらに来てまだ一度も人殺しはしていない。……そんな機会が訪れなかったからだ。
「お前に出来るか?」
「……はい、殺しにもだいぶ慣れてきましたし…普通にいけると思います」
だが、モンスター殺しに慣れることが出来たのだから、恐らく人を殺してもどうということはないだろう。
明確に悪人と分かっていれば躊躇う必要はどこにもないし。
「……そうか」
俺が出来ると答えるととクルスさんは少しもの悲しそうな表情……じゃないな、何か妙にこちらを心配してそうな顔だ
「いやいや心配そうな表情しなくていいですよ!相手は悪人なんでしょ?なら殺すのに躊躇いはないっすよ!」
「……リュート、少し怖いよ……?」
……おっと危ない危ない。いつの間にか言動が物騒になってた。まぁ実際殺すのに抵抗はない。モンスターの形が人間に変わってるだけだしな!
でも、盗賊がどんなことしたのかは気になるし一応聞いておこう。
「ところでクルスさん?その盗賊連中はいったいどんな奴らなんです?」
「……いや、俺に聞かれてもな……ユーナ、教えてくれないか?」
「は、はい!えっとですね……最近有名になってきてる盗賊団で、黒き獣っていう名前なんですけど……。」
ユーナさんは黙々と、時々感情的に盗賊のしでかした悪行について語り始めた。
「戦える力のない村からの強奪は当然として、用済みになれば跡形もなく燃やし尽くしたらしいです。生き残った男性達は無残に殺し、女性はアジトに無理矢理連れて行き、子供達は奴隷商に売り渡しているとか」
……ラノベにある典型的な盗賊って感じだな。……救いようのない完全な屑どもだ。
「……ねぇユーナ、その連れて行かれた女の人達って何を……?」
「……とても言えることじゃないのはたしかでしょうね。襲われた村の人達のことを考えると……怒りが湧き出てくるわ。」
……許せんな、そんな奴らはみんな死んでしまえばいいのに、……まあ俺達が成敗してやるんだけどな!皆殺しだ!
「……というかさっきから気になってたんだが……龍斗、お前どうしたんだよ。何か様子おかしいぞ?」
「え?そんなことないですけど……俺何かやってました?」
「いや、表情がすさまじいことになってたぞ」
「……マジですか」
……俺としては全く表情に出してたつもりはなかったんだが……そうか、普通に顔に出てたのか
「……本当に超えてはいけない一線は越えるなよ?」
クルスさんが再びこちらを心配しているような表情を浮かべる。……本当になんだろう?盗賊にやられないか心配してるのかな?
「一線を越えるもクソもないですよ。だって今から人を殺しに行くんでしょ?どうあっても一線は越えてしまいますよ」
「いや、俺が言ってるのはそういうことじゃな――」
「ねえ本当にどうしたのリュート!最近ホントにこわいよ?」
? 何が違うのだろうか。俺は既に何匹ものモンスターの命を奪っている。モンスターと人。形が違うだけで命を奪うということは同じだと思うんだけど
「そうか?……悪いな。俺は普通に振る舞ってるつもりなんだが」
「明らかに普通じゃないよ……六日ぐらい前から殺す殺すって、発言が本当に怖いもん」
……六日前、……あぁ、丁度モンスターを殺しても何も感じなくなった日からか。あ、それならゼティス様に暗示解いて貰わないと……
「……悪いな、今日から出来るだけ控えようとしてみるよ」
「うん……お願い」
レニアは少しだけホッとしたように胸をなで下ろした。
そしてクルスさんは俺にこう言う
「一応言っておくが……人間を殺す感触とモンスターを殺す感触はまるで違うんだ。モンスター相手と同じ気持ちで行かない方がいい」
「あ、はい。用心しておきますね」
俺は軽くそう答えた。軽く……クルスさんの心配を受け流した
「……じゃあいいんだな?後悔しないな?」
「はい、いいですよ」
俺が相変わらず緊張感の欠片もなく、そう言い放つとクルスさんは紙をユーナさんに手渡した
「受領しました。……でもこのクエストは四人以上必要なんですけど……」
……受領してからのまさかの人数が足りない宣言来ちゃったよ。どうしようレニアは戦えないから、あと二人足りない
「……なら一人捜さな――」
「レニア、アンタは今回留守番に決まってるわよ。曲がりなりにも人を殺しに行くんだから。そんな所を冒険者でもない一般人に見せるわけにもいかないわ」
ユーナさんは極めて真っ当な意見でレニアのことを引き留めた。レニアは凄く不満そうな表情をしている
「不満そうな顔しても駄目よ。アンタは一般人なんだから、盗賊がたくさんいるところには行かせるわけないじゃない。」
どうやらレニアを引き留めたのは嫌がらせではなく、レニアのことが心配だったからのようだ。……なんだ、本当に別にお互いが嫌いってわけじゃないんだな。
「……分かったよ。ボクはクエストが終わるまでここで待ってるよ。……二人とも絶対死んじゃだめだからね!」
「おう、死ぬ気は毛頭ないぞ」
「そういうこった、嬢ちゃんは俺達が早く帰ってくることだけ祈っておいてくれよ」
「……うん」
少しだけ表情を曇らせながらもレニアは返事をしたのだった




