三三話 ~まさかの事実~
街に戻った俺達は特に何かするわけでもなく宿屋へ戻った
「お付き合いありがとうございました!そして改めて今日も一日よろしくお願いします!」
「おう、今日はしっかりと特訓と勉強三昧にしてやるから覚悟しておけよ」
……流石にずっとぶっ通しでやるってわけじゃないよな?少しは休憩時間あるよな?
「……あまりにもキツすぎると心が折れそうなので休憩も下さい」
「当たり前だろ、少しも休憩を取らずにずっと動いてたら流石に精神がもたないぞ」
良かった、いくら直ぐに体の疲労が回復しても、クルスさんの言うとおり精神的な疲労は直ぐには回復しないからな
「……ですよね。さっきみたいにやる気が溢れてるならともかく無茶したら心がすり切れますよね」
「出来れば常にそのやる気を維持しておくのがベストだと思うがな。既にやる気に満ちているなんて出来ることじゃないからしょうがない」
……何回言ったか分からないが、この世界じゃ身体的な疲労は直ぐに回復する。つまりそれはやる気さえあればいつまでも特訓を続けられるってこと
それなら問題はどうすればやる気を維持出来るかどうかにかかってくる。俺の場合は……そうだなぁ、突発的に湧いてくるか、何か好きな物が貰えるときだ
……うん、特に特徴はないな、至って普通のことだ。現金な奴だな俺。
「……ですね、時間もそろそろ遅くなってきましたし、一旦部屋に戻りましょうか」
「だな、続きは飯時にでも話し合うってことで」
そう言ってクルスさんは先に階段を上がって行き、自分も階段に足をかけたとき
「あ、リュウトさん。おかえりなさい。特訓は捗りましたか?」
アリスちゃんが声を掛けてきた
「まぁ、そうだね。効果はかなりあったと思う」
実際は思うではなく、確実にあったのだが一応そこは伏せておく
「日々の積み重ねですよ!これからも頑張って下さいね!」
「おう、ありがとな」
エールをくれたのでしっかりと自分も答える。こういうことにも感謝はしっかりと伝えることは大事だと思う
……そういえば、……うん、一応聞いておこう
「……そういえば。レニアはもう起きてるかな?」
「どうでしょう、さっき確認しに行ったときは寝てましたけど……」
……それなら多分まだ寝てるな、しょうがない。起こしてやるか
「ありがとう。俺が部屋に着いても寝てたら起こすよ」
「はい、是非ともそうしてあげて下さい!」
「お、おう……」
急に迫られて少しだけ焦ってしまった。
「……っと、引き留めてしまってすみません。リュウトさん相手ならレニアちゃんは比較的直ぐに起きると思いますのでよろしくお願いしますね」
……何で俺が相手なら直ぐに起きるんだ?こちとら人を丁寧に起こす方法なんて分からないぞ?
「う、うん。了解了解……」
疑問を残しながら俺は自分の部屋へと戻っていった
さて、先ずはレニアを起こさないと、……起きてる可能性もあるんだろうけど声とか一切聞こえないからやっぱり寝てるだろう
……いや違うな、声が一切聞こえないって言ったけど訂正、すぴーという可愛らしい寝息が聞こえてる。
エクスもアリスちゃんもレニアは全然起きないって言ってたから寝息も凄いのかと思ってたが……ないな、うん、俺が起きたときもこれぐらいだった気がするし
……それ以外は割とアレだったが。
ドアの近くで立ってるわけにもいかないので俺は黙々とレニアの寝ているベッドまで移動する
……それにしても、本当に何で俺の寝てたベッドに侵入してきていたのだろうか。起こした後に本人が話してくれるといいんだが……
「……おーい起きろ~」
「…………すぴ~……すぴ~……」
……流石に声を掛けるだけじゃ効果はないか。しょうがない、体を揺すった方がいいな。……起こすためだからな?別にセクハラしようとかじゃないからな?
「起~き~ろ~」
「……んぅ……ん」
お、もう一押しかな?……そうだ、ちょっとくすぐってみるか。そっちの方が早く起きるかもしれないし。……さっきも言った通りこれは起こす為の行為だぞ。別に変なところ触る気はないぞ
「……ほれほれ~」
「ぶわぁっ!ちょ…やめ…くすぐっ…あははははは」
いい反応だ。……何か楽しくなってきた
「ほら早く起きろ~起きないとこのまま暫くくすぐり続けるぞ」
「も、もう…起きてる…から……ははははははは」
そして調子にのってそのままくすぐり続けているとレニアの様子が変わった
「――ふんっ!」
「グァ!」
おそらく天罰が来たのだろう、昨日とは比べものにならないほどのパンチが腹に突き刺さった
そして彼女は腹を押さえ込んでうずくまる俺に近寄ってあることを要求してきた
「……ちょっとそこで正座しようか」
「……はい」
心なしか俺のことをゴミでも見るかのような目で見ている気がする、昨日と同じく非は完全に俺にあるのでどんな対応されても文句は言えない
「うん、何でこんなことしたのか弁解を聞こうかな?」
いつもよりも少しだけ声のトーンを落としてそう聞いてきた。どうやら完全にご立腹らしい
「いやね、最初は普通に起こそうと思ったんですよ?でもくすぐった方が早いかなと思いましてね?……はい、その後調子にのりました。すみません」
「すみませんじゃないよ!変なところも触られて凄く恥ずかしかったよ!?もしも知らない人にやられてたらトラウマになるかもだったよ!」
いや、知らない人って……話が飛躍しすぎじゃないか?というか変なところって……そういう所は避けてた筈なんだが……
「待ってくれ、そんな変なところとか触ってないぞ?」
「触られた!リュートが気づいてないだけで触られた!」
……流石に理不尽じゃね?俺は変なところ触る根性とかそもそも備わってないし、触ったとしても何一つ感触……が……あぁ、そういうことか
「……そうだったな、悪かった」
「何が『そうだったな』なの!?今凄く失礼なこと考えてない!?」
「そんなこと考えてないぞ?別に感触がなかったとかそんなことは思ってないぜ?」
「思ってるよね!?おもいっきり口にだしちゃってるよね!?」
……弁解のつもりだったが、うっかりと思っていたことが口にでてしまった。……嘘です、本当はわざとです。……このままじゃ永遠に説教な気がしてきたし無理矢理切り上げたほうが良さそうだ
「まぁそんな小さいことは置いといてだな」
「全然小さいことじゃないから!違う意味とかは混じってないよね!?」
「………………」
「なんで黙るのかなァ!?」
そりゃそうだ、弁解の余地がないのだから黙るしかない。嘘をつくという方法もあるが、これ以上レニアに対しては嘘を重ねたくない。
「それよりもだな、どうしても聞きたいことがあるんだ」
「無視!?」
ところでさっきからこの子は叫びまくってるけど喉は痛くならないのかしら?……まぁそれはいいとして
「なんで俺が寝てたベッドで寝てたんだ?」
朝からずっと気になっていたことを聞いてみた。……ふむ、大いに脱線してたけどやっと聞けたな、どんな答えが返ってくるかな
「……え?」
あら?なんだか今気づいたみたいな反応だぞ。……どういうことだ?……て、何考えてんだ俺は、これじゃ自意識過剰男みたいじゃないか
冷静に考えてみれば俺相手に意図的にこんなことする女の子がいるわけないだろう
「た、たしかに言われてみれば昨日とベッドの位置が違うような……」
「……自覚なかったのか」
「う、うん。昨日はリュートが寝てから直ぐに寝たはずだもん」
そうか……じゃあ本当に何で俺と一緒のベッドにいたんだろうな。うん、この疑問が浮かぶのは本日何回目だろう。
「……あ」
どうしたんだろう、何か思い出したのかな?どんどん顔が赤くなっていってるような……
「そういえばそうだった……」
「どうかしたのか?」
「……うん、今思い出したんだ。」
レニアはそう言うと、その内容を話し始めた
たしかね?ちょっとトイレに行きたくなって夜中に目が覚めちゃったんだ
『……トイレ』
”そうなのか、それが何か関係が?”
……トイレ自体は関係ないよ。目が覚めた理由も言った方がいいかなって思ったの。要はこの時は寝ぼけてたってだけの話だから。……トイレから出てからが問題なの
『ふぅ~、……あれ?どっちのベッドで寝てたっけ?……まぁいいや』
……今思えばどこがまぁいいやだったのかな……友達とは行っても男の人が寝てるベッドだったのに……
”そ、そうだよな……いくら何でもそれは寝ぼけすぎだと思うぞ?”
自分でもそう思う……でね?その後だよ?ベッドに入ったら何かにぶつかったんだ。……今思ってみるとそれがリュートだったんだね……あ
”(……あっ、て何だ)”
『ふぁぁ~……眠い。おやすみ~……。あれ?何かある。丁度いいや、抱き枕にしちゃおう』
”おいいいいいい!抱き枕?俺いつの間にか抱き枕にされてたのか!?”
”(くっそおおおお!何で起きなかったんだ俺!……いやそうじゃないだろ!落ち着けよ俺!)”
……ホントにごめんね。
”(……というかさっきまでは俺が説教を食らってた筈なのにいつの間にか立場が変わってないか?)”
”いや、それは別にいいが……どんな風に抱きついてきたんだ?”
も、もうこれでこの話は終わり!抱き枕にしちゃったことは今直ぐに忘れて!
……どうしよう、すっごい気まずい。だって目の前には夜中に俺を抱き枕にしていた美少女が一人。これで多少なりとも意識するなとか絶対無理です
「……なぁ、何かお前の顔を真っ直ぐ見れないんだが……気まずいんだが……というかお前はなんで俺を抱き枕だと思ったんだ」
視線をレニアの後ろに逸らしながらも思い切って聞いてみる。……しっかりと答えてくれるといいのだが……
「ご、ごめん……ボクだって恥ずかしいんだからこれ以上掘り返さないでよ……」
……やっぱそうだよな。答えてくれないよな。もしも同じ状況になったら俺も絶対に答えないからな
「よし分かった、俺がさっきお前を調子にのってくすぐり続けたこともお前が俺を抱き枕にしたことも水に流そうか」
「うん、それがいいね。それがいいよ!」
お互い誤魔化すように俺の意見に賛同してから、お互いの顔が見れるまで落ち着くまで数分置いておくことにした
……そして、数分後。ようやく落ち着いた俺達は今日やることを整理することにした
「……ふぅ、それで?今日は何をするんだ?」
「ボクは別に何もないけど……今日もリュートについて行こうと思ってるよ」
「そ、そうか。でも別に今日は特に面白いことはないぞ?多分だが今日一日はずっと特訓やら勉強やらをクルスさんに付き合って貰うだけだし」
「それでもいいよ、文字の勉強はボクも一緒にやるから。特訓は……うん、応援しておくよ」
それはありがたい、さっきの特訓はクルスさんにも途中から応援してくれたけど……やっぱりかわいい子に応援された方が男としてはモチベーションも上がるし
勉強については……たしか昨日は途中から俺が覚えた所をレニアに教えることになってたな。まぁいいけど、それのお陰で復習も兼ねられたし
それに、異性の友達と学校以外で一緒に勉強するなんて小4の頃以来だ。と言っても、その時は俺以外にもあの3人もいたし、どうやっても教える側には回らなかったんだがな
「センキュッ。話を変えるが……どうする?時間的にそろそろ食堂に向かうか?」
「……そうだね、丁度お腹も空いてきたし行こっか」
そして俺達2人は、食堂で朝飯を済ませた後にクルスさんと合流した
その後は適度に休憩も挟み、予定通りに特訓と勉強をして、採集クエストを受けたり、モンスター退治をしたりしたのだった
正直、出会って3日経ってないのにこの距離はあり得ないと思います。
それはそれとして新作を投稿しました。良かったら見てやって下さい
【不幸の手紙を破ったら求婚されたんだが……】
【https://ncode.syosetu.com/n9299er/ 】
大悪魔の少女とお人好しの少年が恋愛するかもしれない、魔法ありの現代物です




