二八話 ~好み等について~
大変お待たせしました
さて、部屋に着いたわけだが……どうしよう何をやればいいか全く分からん!
というか女の子と部屋に二人っきりという状態が凄く緊張してヤバイ。……え?レニアの家に行ってた時?あの時は別に泊まりに行ったわけではなかったしノーカンでお願いします。
今回は二人で同じ部屋で眠るのだ、状況がまるで違う。今の状況で意識するなというのは健全な男子高校生にとっては到底無理な事だろう。
……気まずい雰囲気になるのもいやだしどうにかして平静を装っていた方がいいかな。一応演技力はそこそこの自信はある。誤魔化しはまるで駄目だが。
「……部屋に着いたけどなにするよ?」
素っ気ない感じになってしまった気がするが気にしないで欲しい。むしろこれでも最大限普通に接しようとしてみた結果なのだ。……というかレニアも相変わらず顔が赤くなってるし、その上
「……ア・・の言・・おり・・な・部屋・した・ど・、うぅ・・ぱり・・かしい……」
この通りずっとぶつぶつと独り言を喋ってるし。どうやら部屋についてなにか言ってるらしいが、詳細はあまり分からない。……俺が話しかけたことに気付いてない感じだな、これは
まぁ声が聞こえないなら肩を軽く叩けばいいんだけど。……でもさっきのはちょっと声が小さかったかもしれないな。さっきよりは大きい声でもう一度呼びかけてそれでも気付かなかったら肩を叩こう
「おーい!聞こえてるー?」
「…………………」
あ、駄目だ、完全に聞こえてないっぽいぞ。……しょうがないな
俺は、はぁ…と小さく溜息をつくと軽くレニアの後ろに回り込んでポンポンと肩を叩いた。すると
「ひゃあ!いきなり何するの!?」
素っ頓狂な声を出したもののようやくこちらに気付いてくれた。
「いや、話しかけても反応なかったからさ……」
「それはごめん!でも大きい声で呼びかけるとか他にも方法があったと思うんだけど!」
「……それをやった上で気付いてなかったから肩を叩いたんだけどな」
俺が少しだけ愚痴るとレニアは如何にも申し訳なさそうな表情になっていった
「そ、それなら仕方ないね……ごめんなさい」
「はぁ…気にするな」
「「…………………」」
やっぱり気まずい……なんとかこの沈黙を破れる話題はないものか……
「ね、ねぇリュート?そういえばリュートはなにか好きな物とかはないの?」
……あー、冷静に考えてみると俺達はまだ何が好きとか、そういう事をお互い全く知らなかったな。
「……そうだな、そういえば俺達昨日初めて会ったばかりだったな」
そして俺は何故昨日会ったばかりの少女と同じ部屋で寝泊まりするような状況になっているだろうのか。これが分からない
この状況は人によっては羨ましいと思う人も多いと思う。日本にいた時は俺も思ってたしネ!
しかし、いざ本当にこんな状況になったら嬉しいという感情なんて少ししか浮かんでこない。むしろ人のいる空間に行きたいとすら思う。
うん、別に嬉しくないってわけではないんだけどな?こんなかわいい女の子と部屋で二人っきりになれるとか男としては役得だし
でもまぁそれとこれとは話が別だよね。レニア自身は許可取ったって言っていたけど、お父さんにバレたら俺がどうなるか分からんし
というかそもそも――
「――リュート?聞こえてる?無視され続けるのは凄く辛いんだけど……」
「え?あ、すまん!考え事してて完全に聞き流してた」
「……さっきボーッとしてたボクが言うのも何だけどさ、深く考えすぎるのは良くないと思うよ?」
……言い訳の仕様がないな。人と話してる時に深々と考え事をするのは相手の言ってることを全く聞いていないって言うわけで。
もしも相手が大事な話をしてる時にこんなことするのは相手にも失礼だし、何よりも最後に一番困るのは自分自身なわけだしな。
よし、今からは話を聞くことに集中しよう
「悪かったな、出来るだけ気をつける。それで?なんだって?」
「う~、……リュートはどんな女の子が好き?」
「ブフォッ!」
いきなり何を言いだすんだこの子は!そういうことを言われるとマジで勘違いするから出来れば止めて欲しい
「なんてね、少しからかっただけだよ」
……からかっただけ?……いいだろう。そっちがその気ならこっちも同じ事をしてあげようじゃないか
「……お前みたいなの」
「え?」
「いや、だから俺の好み。レニアは結構俺の好みだが」
レニアの顔が少しずつ赤くなっている。……冗談で言ってるとはいえこっちもなかなか恥ずかしいな。
「……もしかしてからかってる?」
「うん、からかってるぞ。さっきの仕返しだ」
「……だよねー」
あれ?なんで残念そうにしているんだ?……もしかして……でも、理由がないし……うん、やっぱりあり得ないな、きっと勘違いだろう。
「じゃあ今度はこっちが聞くぞ?……好きな料理は何だ?」
やっぱりお互いのことを知るための質問ならこれが定番だろう。
「あ、ちなみに俺は肉系の料理が好きだ。」
肉系と言ってぼかしたのはこっちの世界の料理について詳しくないからだ。エクスがコンソメスープを作ってたから日本と同じ料理もあるんだとは思うが……それがボロになる可能性も十分あるわけで
「へぇ~そうなんだ、ボクもお肉は好きだよ。でも甘い物の方が好きかな」
「そうか、俺は甘すぎるのは苦手だな。程々に甘い物なら好きだが」
「そうなの?じゃあチョコレートとかケーキは苦手?」
「チョコは好きだぞ。ケーキはそうだな……クリームの甘さが控え目なものが好きかな。お前はどうだ?」
うんうん、いいんじゃないか?結構話が広がってきてる。
「ボクは甘い物ではケーキが好き。中にたくさんフルーツが入ってると最高だよね!」
あ、そうだ。甘い物で思い出した
「……食べ物ではないけど恋愛しょ――」
――いや、危ねえ!そういえば俺はこっちの世界の文字が読めないんだった!こんな所でボロを出すのはアホすぎるぞ
「れ、恋愛してるカップルを観察するのが好きかな!」
「……変わった趣味だね。そういえば記憶はどれだけ戻ったの?」
……なんで一番根本にあった記憶喪失設定をしょっちゅう忘れるんだろうな、俺は
「……出身地以外の自分に関することはかなり戻ってきたぞ」
「凄く早いペースで記憶が戻ってるね。このまま全部思い出せるといいね! 」
「あぁ…そうだな」
多少の罪悪感は相変わらずだがおそらくこれ以上ボロになることはないと思う
「それじゃあ次は――」
俺達の会話が終わる頃には太陽は沈み。窓の外は月明かりのみが静かに照らす暗闇に飲み込まれていたのだった




