二六話 ~疑問~
大変お待たせしました
森から離れ、ギルドに戻った俺達は受付に向かった。受付の人は修助さんがクエストを受けた時とは違う人だった
「すみません、薬草を採取してきたので受け取りをお願いします」
「はい、分かりました。……随分と多いですね。では品質の鑑定と報酬の価格の計算をしてきますので暫くお待ち下さい」
受付の人はそう言うと、奥の扉に入り姿を消した。
「暫く待てって言われたけど……暇だな……あ」
今この場では全く関係ないことに気がついた。
「リュート?どうしたの?」
レニアがそう聞いてきた。俺がモンスターの出る頻度について聞いたときレニアはこう答えていた。
『少なくともボクが来るときは毎回出るよ?』
そう、『毎回』出ると言っていた。それなのに今回はモンスターが出現するどころか俺達以外の気配すら感じなかったのだ。
今回は偶然出てこなかっただけだと言われればそこまでだが、それでもなんだかおかしいと感じてしまう。少しでも不安を取り除くために俺はレニアにあることを聞いてみることにした。
「――なぁレニア、今日を除いて最後に採取クエストを受けたのはいつぐらいだ?」
「え?なんでそんなことを聞くの?」
わけが分からないといった表情でこちらを見つめてくる。だが俺にとっては重要なことだ
「いいから答えてくれ」
俺がそういうとレニアは戸惑いながらも口を開いた。
「確か……三日前だったよ」
「その時もモンスターは出て来てたんだよな?」
「うん、出て来たけど……なんでそんなこと聞くの?」
三日前までは普通に出て来たはずのモンスターが今日に限って出てこなかった。これははっきり言って異常だ。少しずつ減っていったのならまだ分かる。だが三日前から今日までの間にモンスターが一切現れなくなるというのはやはり不自然なのだ。
「……今回はモンスターが一切出てこなかっただろ。少なくとも三日前までは普通に出現していたのに…だ」
「……あ、言われてみれば確かにそうかも。……クルスさんは何でだと思う?」
「俺に振られてもな……モンスターのことなんてよく分からん。でもモンスターが出ないならそれに超したことはないだろ。……まぁ龍斗に殺しの慣れを確認させるのは出来なくなったが」
確かに修助さんの言うとおり、モンスターが出ないのはいいことだろう。……でもやっぱり嫌な予感はするんだよな。暫くの間あそこに行くときは警戒しておいた方がいいだろう。……そんなことを話していると受付の人が戻ってきた
「お待たせしました。結果をご報告致します、品質はどれも良好なので1本あたり40マニスといったところですね。それが100本なので合計4000マニスを受け取ってください」
えっと……たしか薬草1本の相場が20だったから……つまるところ2倍ってことか。凄い
「ありがとうございます」
「お礼なんていらないです……これも仕事なので」
……返し方がなんだか冷たい気がするが…まぁいいか、用件も済んだし、修助さんにこっちの世界の文字も教えて貰いたいしギルドから出ようかな
そして俺が受付から離れようとした時だった
「……ねぇユーナ、やっぱり対応が冷たくない?」
レニアが受付の人にそう言った。……というか呼び捨てって…修助さんには敬語なのに何でこの人にはため口なんだろう
「何?今は仕事中なんだけど、用がないなら邪魔だから向こうに行って」
というか受付の人……ユーナさん?もレニアに対してだけあたりが強くないか?
「……レニア?この人は知り合いなのか?」
「一応友達。というかこれはこう見えてもボクと同じ年だから」
……今これって言ったな。……って同い年!?全然見えないぞ!?20歳ぐらいだと思った!
「……レニア、やっぱりお前友達多いな」
「そうでしょ?といってもユーナとはよく喧嘩するんだけどね」
……仲悪いのかな
「別に私はアンタと友達になった覚えはないけどね」
……うん、仲悪いなこれ。というかユーナさんは仕事中に喧嘩なんてしてていいのだろうか
どうしたものかと首をひねっていると修助さんが口を開いた。
「おいおい、ユーナ。そんなこと言うもんじゃないぞ」
「ク、クルスさん!?どうしてここに!?」
……かなりテンパってるな……というかよく見たらユーナさんの顔が赤く……あぁそういう……
「どうしてもなにも俺は冒険者なんだからギルドにいるのは当然だろ?」
「た、確かにそうですね……ごめんなさい」
……修助さんは何故彼女に好意を持たれていることに気付いていないのだろうか?こんなに分かりやすい反応してるのに鈍感すぎだろ。
そんなことを考えていると二人が話し出した。俺はレニアの方へ行こうかな。今のレニアはどうしてるかと言うと
「…………」
無言だった。無言でニヤニヤしてた。
「……なぁレニア、なんでニヤニヤしてるんだ?」
理由はなんとなく分かるが一応聞いておこう
「慌てるユーナが面白いから」
……黒い、予想と違って黒い答えだった。俺的にはあの二人の会話でニヤニヤしてるのかと思ったんだが……
「……性格悪いなお前。ユーナさんのこと嫌いなのか?」
「そんなことないよ。何故か顔を合わせただけで口喧嘩になることが多いってだけ」
成程、所謂喧嘩友達って奴だな。俺が日本にいた時にはいなかった気がする……あれ?どうだったっけ?……まぁいいか
喧嘩しててもなんだけんだで友達続いてるってことはそれだけ仲がいいってことだろう。まさしく喧嘩するほど仲がいいってことだ。まぁでも
「……喧嘩なんてあまりするなよ?かなり気まずい雰囲気になるんだし」
日本にいたときは時々下らないことで三人と喧嘩になった時もあったしな。一時間後には何事もなかったようになるが、それでもあの気まずさはかなり辛い。というか採取クエスト受ける前にもレニアと喧嘩?みたいなことになった気が……
「別にならないよ?いつものことだし、冒険者の人達だってもう慣れてるだろうね」
周囲の人達が慣れるレベルってどんだけ喧嘩してるんだよ……というか火種はなんなんだよ。
「……慣れてるってお前……気になったんだけどどっちが原因で喧嘩になるんだ?」
「……どうしてかな、理由なんてボクの方が知りたいよ」
原因不明、まさかの原因不明。それでよく友達関係続くな
「でもボクはあいつのことを嫌ってるわけじゃないし、多分あっちもそうだと思う。……そうじゃなきゃあの時にあんなに必死に励ましてくれたりしなかっただろうし……」
あの時?いつのことか俺にはよく分から……あぁ、昨日マイが言っていたアレか。……思い出させるのも酷だろうし聞くのは止めておいたほうがいいだろうな。
「……そうか、そういう友達って本当に大事だからな?大切にしろよ?」
「当然だよ!」
レニアは満面の笑みで元気にそう答えた。さっきの黒いニヤニヤとは違って真っ直ぐな答えだった。
「うん、俺にもかなり落ち込んでいた時に励まして、怒ってくれた親友がいたからな。三人ほど」
本当にバカなことをしたよな。友達のことを勝手に疑って、悲しませてさ、もう二度とあんなことはしないぞ。俺はこっちで俺なりに変わるって決めたんだから。……あれ?なんだかレニアが俺のことを驚いた様な表情してるんだけど
「……ねぇリュート?記憶喪失って言ってなかったっけ?……もしかして記憶が戻ったの?」
……あ、まずい。そういえば記憶喪失ってことにしてたんだった。どうしよう、どうやって誤魔化す?……あ、そうだ記憶が戻ったって思ってる訳だしこれはどうだろうか?
「……まぁ人間関係についてはな」
これでどうにかならないだろうか?
「よかったね!このまま完全に戻るといいね!」
あ、心が痛い。本当は記憶喪失になんてなってないのに、レニアみたいに純粋な子に嘘をつくのは正直キツい。……いつか本当のことを話したいな……
色々と考えていると修助さんがこちらにやってきた
「待たせたな、龍斗はいつの間に戻ったのかは知らないが、報酬は受け取ってきたから取り分決めるぞ。ちなみに俺は基本的にはモンスター退治で懐は潤ってるから500でいい」
……太っ腹だなぁ、4000あるのに500でいいとか。これが大人の余裕って奴か。
「いいんですか?俺は基本的には遠慮とかしないんで貰える物は貰いますよ?」
「おうおう、そうしとけ。遠慮なんてするな。後は嬢ちゃんと相談して決めろ」
つまり残りの3500マニスを二人で分けろというわけだ。平等にするなら1750だが、俺よりもレニアの方が採取量は多いから、俺は1000でいいかな。
「どうするよ?俺は1000ぐらいにしようと思ってるんだが」
「リュートが多めに持ってってよ。さっきも言ったけどボクは三日前にもやったからまだ沢山お金があるんだ。だからボクが1000でいいよ」
……確かにそうだな、三日前に受けて同じぐらい持ってきたなら余程の浪費癖がない限りは3日で使い切るなんてことはありえないか。……まぁ貰える物は貰っておこう
「そうか、ありがとな。なら遠慮なく持ってくことにするよ」
結果的に俺の取り分は2500マニス、ゼティス様から貰った分と会わせて3500マニスだ。……これぐらいあれば宿屋代くらい余裕だろう。一応レニアに宿屋代を聞いてみよう
「ところでレニア、アリスちゃんが手伝いをしてる宿屋って1日でどれぐらいなんだ?」
「う~ん、確か300くらいだったと思うよ?」
300か、つまり今の所持金で宿代以外を考えなけりゃ11日ぐらいいける訳だ
「300だな、センキュ!泊まろうと思ってたから助かった」
「どういたしまして、リュートが宿屋に泊まるならボクも行くよ」
……何故だ、何で俺が行ったらレニアもついてくるんだ。いやまぁ、俺個人としては一向に構わないぞ?でも一人では決められないだろ。家の人に許可を貰わないと……
「……俺は別にいいけど……家の人に許可とってこいよ?何の連絡もなしにいきなり娘が帰ってこなくなったら心配どころじゃないからな?」
これは俺の実体験だ、悠斗の奴がこっちに飛ばされたことを知らずに俺達三人はひたすらに悠斗が無事に帰ってくることを祈っていた。当然毎日捜索もした、
悠斗が戻ってきたときには怒りよりもさきに安心感で崩れ落ちたし、涙も自然に溢れてきたよ。
「それは言われなくてもそうするつもりだよ?それじゃあ今から行ってくるから先に宿屋に行っててね」
「そうか、了解した。一応待ってるが了承貰ったかどうかに関わらず報告には来てくれよ?流石にいつまでもはキツいからな」
これはかなり重要だ、これをして貰えなければ時間をかなり浪費するからな
「オッケー!しっかりと認めさせてくるから安心してね」
……認めさせるって何をする気だろうか。……聞かない方がいいな。
「じゃあまた後でね!」
レニアは一言そう言うと、勢いよくギルドの扉を開き走り去っていった
「あ……そういえばクルスさんに文字を一緒に教えて貰う約束してたな。どうしよう」
「安心しろ、お前らが泊まる宿と俺の泊まっている宿は同じ……というかこの街に宿屋は一つしかないしな、宿屋で教えてやるよ」
……声に出てたか、まぁいいや、一応伝わりはしたし。
「ありがとうございます。それなら早速向かいましょうか」
そして俺達二人は宿屋に向かって走り出したのだった。




