食べごたえありそうじゃねえか
タルタロス・ルフを倒した後、素材を採取し始めるとエリーシャは先程の出来事を振り払うかのように黙々と作業に専念していた。
……良いところまでは来ていると思うのだけれど何かが足りていない、そんな印象を受けた。それは決して実力ではなく、もう少しなにか違うもの。それが内的要因なのか、それとも外的要因なのかはまだわからない。
「できればなにか手助けができれば良いんだけどなあ」
「なんとかしてやりてえのはやまやまなんだけどな。ああいった時は手を出すのは邪魔になっちまう。まあ、あいつは弱くねえ。ちゃんと乗り越えるさ」
「そうだね」
ジークもエリーシャのことを信頼して黙ってみている。ならば僕もそれに習うべきだろう。
採取が終わり再び移動を開始する。少し地形情報も更新されていたので、把握できる範囲で怪しげな場所をピックアップして探索をすすめることにした。
少し小高い場所に窪みらしき物があったので、ひとまずはそこに向かう。
「この上ですね。ここからではよく見えません」
「そうね、ちょっと面倒だけど登ってみるしか無いわね」
アリスの言葉にマリナさんが嫌そうに反応する。まあ、先程から緩やかに下り続けていたのにまた登らないといけないというのは、なかなかに苦痛を感じてしまうのは仕方がない。
「地形が円形だし、もしかしたらガーディアンの領域かもしれないから頑張って登りますよ」
「わ、わかってるわよ。ほんの少しだけ愚痴ってみただけよ」
マリナさんが少しバツが悪そうに顔を赤らめる。そんななんでもないやり取りをしながら一歩一歩登っていく。ただ、エリーシャだけは先程の一件が尾を引いているのか、難しい顔をしたまま口を閉ざしていた。
そしてたどり着いた先にあったもの、それは――。
「こりゃあ、鳥の巣か?」
「んー、見た感じはそうみたいだね。結構大きいから、もしかしたらタルタロス・ルフの巣だったりして。あ、ほら卵もいくつかあるよ」
大きめの巣の中には、これまた大きめの卵が四つほど寄り添うように鎮座していた。
「おお、なかなか食べごたえありそうじゃねえか」
「開口一番、食い気って……。まあ、確かに美味しそうではあるかも」
「よろしければ調理しましょうか?」
ジークのド直球な言葉に誘導されてしまったらしい。本格的に食べる方向に気持ちが傾いてきた。すると何処からともなく誰かのお腹が鳴る音が聞こえてきた。
「ぷっ、ふふふ」
「――エリーシャ?」
「ふふ、ごめんなさい。考えにふけっていたらお腹が空いちゃったみたい」
少し恥ずかしかったのか、エリーシャははにかむように笑う。それだけで周りの風が心地よくなったような気がしてくる。……うん。
「よし、それじゃあこの卵は回収させてもらおうか。親鳥にはちょっと悪い気もするけど、戻ってきたら面倒だし少し急ごう」
「おう、任せとけ!」
「それじゃあ、私も一つ運ぶわ。ん、結構重いわね」
そう言ってエリーシャが一番端っこの卵を抱えて持ち上げた。それを見てからジークとマリナさんも卵を持ち上げる。最後の一個をアリスが持とうとしたので、それに先んじて僕が持つことにさせてもらった。
丘を下り、近くにあった岩場の影に隠れるように休憩場所を確保する。
「ひとまず一つ割ってみて確認しますね」
調理の準備をした後、アリスは人の頭くらいの岩を数個置いて卵の一つが倒れないように固定した。包丁を手に取り、注意深く卵の上部を切り取って中を覗く。
「とても新鮮ですね。これなら処理も簡単に終わりそうです。すぐに調理しちゃいますね」
「うん、お願い――ん?」
視界の端で何かが動いた気がする。疑問に思いそちらを見ると、残された三つの卵の内の一つがカタカタと揺れていた。
「え、有精卵?」




