鳥のくせにやるじゃないの!
幸いなことに僕たちのパーティは全員対策済みの装備を身に着けているので、極端な高地だからといって直接的な問題はない。ただ、現在地はこれまでに無い高地であり、不可思議な気候でもある。皆が驚くのも無理はない。
――さて、これからどうしたものだろうか?
「なあ、俺にはよくわからねんだが、ここが高えからって別にやるこたあ変わんねえだろ? これまでも訳のわかんねえ場所なんていくらでもあったじゃねえか」
皆の反応と異なりジークだけが何食わぬ顔でそう言い放つ。そんなジークの言葉に納得した様子で、エリーシャの表情も柔らかいものに変化した。
「あー、確かに言われてみれば。ここみたいな極端な高地が無かっただけで、もともと変なところばかりだったわね」
「異界の地形とガーディアンに相関性がまったくないところもいっぱいありましたね」
「ジークの言うとおりよ。敵が出たらぶちのめす! そして異界の先へと進む。それだけで良いわ」
「えっと、マリナさんの意見はちょっと極端だけど、確かにジークの言う通りだね。ちょっと深読みしすぎだったかも」
つい先程、朱雀のことを考えすぎても仕方がないって結論に至ったばかりなのに、ついつい思考が滞ってしまっていたみたいだ。
あのいたずら好きな神様のやることだ。どうせ深い意味なんてないだろうしね。
「うん、そうだね。僕たちがすることはいつもと変わらない。今はそれで問題ない」
僕の回答に満足したのか、皆が再び山を下り始めた。
いつもと変わらない探索。ならば一番最初にするべきことは、これだな。
アイテムポーチからおなじみの魔道具を取り出して起動する。
「うお! ああ、それか。びっくりしたぜ……。急に後ろで起動すんなよ」
「ごめんごめん。そういえば動かすの忘れてたなって思ってね。さあ、行こうか」
未踏地形探索魔道具から放たれた大量の子機を見送る。これで適当に近場を探索して時間を潰していれば、いつものようにこの階層の地形図が完成する。
はじめに遭遇した魔物は当初の予想通り、遠くに見えていたあの飛び交う魔物達の一匹だった。
《タルタロス・ルフ》
遠目に見ただけでは鳥に近い魔物のようだったが、実際に近づいて見るとその大きさはワイバーンを超える巨体で、暗闇のような見た目が空によく映える。特に足の鉤爪が禍々しく発達しており、あれに挟まれてしまえば下手な鎧ならば容易に粉砕されてしまうことだろう。――僕が作った近代魔道具をふんだんに組み込んだ装備ならば四神とも渡り合えるので大きな脅威ではないと思いたいが、初見から侮るのは流石に油断し過ぎだろうか?
「来るよ! 皆、敵の動きが速いからあまり固まらないようにね」
「かしこまりました」
「それくらいわかってるぜ!」
「了解」
「私が止めてみるわ!」
上空から急降下で飛びかかってくる魔物に向かって、光盾を構えたマリナさんが中空に足場を作りながら駆け上がっていく。ずいぶんとアグレッシブな盾の使い方だが、カウンター的なものだと思えば良いのだろうか。
もちろん驚いたのは僕だけではなかったみたいだ。急降下していたタルタロス・ルフは一瞬悲鳴のような鳴き声を発したかと思えば、全力で巨躯を捻り角度を変化させた。そして次の瞬間、硬質な金属同士がぶつかり合ったような音が鳴り、両者共が斜めに弾き飛ばされた。
マリナさんは中空に積層の足場作り、それを破りながらその勢いを相殺する。
「くっ! 鳥頭のくせにやるじゃないの!」
「大丈夫ですか!?」
「問題ないわ! ちょっと驚いただけよ!」
普段であればそうそう吹き飛ばされるようなことははずだが、流石に中空では光盾もその性能を十全に発揮するのは難しいようだ。……これは今後の改善点かな。
一瞬だけ心配をしたが、マリナさんは何事もなかったように返答を返してくれた。表情や仕草から見て、強がりでは無いようなので安心していいだろう。
久しぶりの戦闘描写だけど、上手く書けるかなあ。




