↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/66

44.名前くらいは聞いたことあるだろう

生徒会全体の仕事の引き継ぎと、それぞれ役職ごとの引き継ぎが終わった頃、例の如く学園の冬季休暇が終わりを告げた。

「ねえ、ルカス。私って学園在籍中は家に帰れない呪いでもかけられているのかしら?」

「さあな。今までのリディアたちは別に家に帰りたいような素振りもなかったし、それは本当に俺にも分からない。」


冬季休暇の最終日となる今日、無事に生徒会の引き継ぎが終わった事を祝って二人でささやかなお疲れ会を開いている。料理は聖夜祭のお詫びも兼ねてルカスが用意したものだ。


ルカスといつの間に仲直りしたのかって? それがよく分からないのだ。いつのまにか普段通りに喋れるようになって、結局元の関係に戻ってしまった。特に進展させたかったわけではない私にとってはラッキーな展開ではあるが、何だか拍子抜けしている。友だちとはこういうものなのだろうか。人生経験が乏しすぎてこんな事すら分からない。


アナベル学長とのやり取りも気になるが、何も聞き出す事も出来なかった。と言うか、私には何も言う権利はない。ルカスの気持ちに気が付かず、それを知った後もうまく受け止められず、結局逃げてしまったのだから。



「何だかんだでもうすぐ最終学年ね。」

ご存知の通り、聖夜祭以降はとんでもないスケジュールが詰まっている。翌日に冬季休暇が始まり、一週間後に三学期が始まった瞬間、通知表をもらって大掃除をしてすぐに春季休暇だ。もはや冬季休暇は要らない気さえする。どうせ家には帰れないのだし。


「今のところ、一度も危なげなく進んできている。このままいけば問題ないとは思うが……………。これまで生徒会に入ったリディアがいなかったから、それがどんな影響を及ぼすのか見当もつかない。」

ルカスは目の前にある肉を一切れフォークに刺して口に運ぶ。初めて会った時から思っているが、本当に所作が綺麗だ。


「ルカスは貴族のマナーをどこで学んだの?」

「……………言っている意味が分からない。」

「えっ?」

「俺は元々貴族の身分だ。キャンベル公爵家……名前くらいは聞いたことあるだろう。」

「そりゃもちろん。建国史に出てくるような古い……ってルカスはキャンベル公爵家の出身なの?」

「そうだ。ルカス・キャンベル。それが俺の名前だった。」

ルカスは何でもない事のように、食事を続けながら『過去形』で自分のフルネームを告白する。


「でも…………キャンベル公爵家って、今は存在しないわよね。」

「そうだな。百年も前に取り潰されている。謀反の疑いがあったとかなかったとかで。俺が封印されるまでは普通に存続していたものが、俺がいなくなった途端、一門全員処刑されていた。初めて封印を解かれてその事実を知った時、かなり驚いたのを覚えている。」

ルカスは淡々と話を続けているが、私は驚きが止まらない。

「そんなの、驚いたじゃ済まなかったでしょう。ルカスがいなくなった瞬間を狙ったのであれば、罠に嵌められた可能性だって…………。」


「事実がどうであろうと、今までに起こった事は変えられない。今更、真実を知る方が怖い。」

「何か……。」

「何だよ。」

「ルカスも、人間っぽいところがあるのね。」

「お前は俺を何だと思ってるんだ……。」

ルカスはピタリと手を止めて、眉を顰める。

「大魔法使い様に決まってるじゃない。」

私は大真面目な顔で、そう答えた。一番初めにルカスがそう名乗ったのだ。それ以外の答えがあるだろうか。あの時はめちゃくちゃ変な人だと思ったが、今では百パーセント、ルカスの話を信じている。


「大魔法使い様というのは役職を表す言葉だ。俺は普通に人間に決まってるだろ。」

「そうなの? 私はまた、大魔法使い様として生を受けた特別な存在なのかと思っていたわ。」

「そんなわけないだろ。」

「私、ルカスの事はだいぶ分かってきたけど、大魔法使い様の事はまだあまり知らないもの。」

「まあ、それはそうだな。リディは何も知らないんだった。」

ルカスの発した言葉に引っかかる。その言い方だと、これまでのリディアは大魔法使い様の事をもっと知っていたのだろうか。それとも、別の誰かを意味するのか。例えば………アナベル学長とか。


頭の中に浮かんだ名前を打ち消すように、私はブンブンと頭を振る。何だかまた、気持ちの悪い感情が湧いてきたのだ。

「何をやっているんだ、お前………。」

ルカスは呆れた表情で私の奇行を眺めていた。

「頭の、体操?」

「頭の体操は往々にして、頭の中を動かすんだよ。どこに本当に頭を動かす馬鹿がいるんだ。これ以上馬鹿になってどうするつもりだ。」


「うう……。」

最近は何となく優しいルカスの一面ばかり見ていたため、こんな辛辣な言葉を浴びせられたのは久しぶりだ。

「今日はちょっと冷たいよね。まあ、ルカスらしいと言えばらしいんだけど。」

私は苦笑いを浮かべる。

「……………俺はいつだってルカスだ。」

そう言ったルカスの顔は、何だかいつもよりも元気がないように見えた。



ピコン。


次年度クラス分け:A→A

ゲーム難易度:ノーマル→ハード

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。