# 第四十四話 301号室、大洪水
# 第四十四話 301号室、大洪水
「水ぅぅぅぅ!!」
三階から響く悲鳴。
春風マンション再生計画。
開始三分で緊急事態だった。
「行くぞ!」
俺たちは慌てて階段を駆け下りた。
黒崎まで走っている。
検査員なのに。
三階。
301号室前。
そこは地獄だった。
廊下が水浸し。
バシャバシャ。
まるで小さな川。
ひまりが絶叫する。
「増水してるぅぅ!!」
かなめも固まった。
「え、え、え!?」
部屋から飛び出してきたのは、
301号室の住人だった。
白衣。
眼鏡。
寝癖。
二十代後半の女性。
「管理人さぁぁん!!」
初登場だった。
「助けてぇぇ!!」
「誰!?」
「301号室の月島です!!」
初めて名前聞いた。
住んでたのか。
月島は泣きそうな顔で叫ぶ。
「実験してたら水道管割れました!!」
「何を実験したんですか!?」
「秘密です!!」
秘密にするな。
黒崎が即座に動いた。
「元栓は!?」
「部屋の中です!」
「案内してください!」
仕事モードだった。
格好いい。
月島の部屋へ入る。
すると。
全員止まった。
「…………」
部屋中に、
謎の機械。
謎の配線。
謎のモニター。
どう見ても研究所。
マンションじゃない。
かなめが呟く。
「住人、増えるたび変人なんですが」
その通り。
黒崎は元栓を閉める。
ゴン!
水が止まる。
ようやく静かになった。
全員安堵。
だが。
遅かった。
廊下は水浸し。
天井からもポタポタ。
黒崎が額を押さえる。
「……最悪です」
検査員が言うと重い。
すると。
怜司のスマホから音がした。
ピコン。
配信コメント。
【面白すぎる】
【本当に住んでるのかこのマンション】
【続き見たい】
【登録した】
怜司が固まる。
視聴者数。
3人。
↓
127人。
「増えてる!?」
ひまりが叫ぶ。
コメントが流れる。
【管理人頑張れ】
【猫映して】
【301号室やばい】
【クラファンやれ】
かなめが目を丸くする。
「え……」
結衣も驚いていた。
「本当に見てくれてる……」
その時。
月島が怜司のスマホを覗き込む。
「配信?」
「そうだけど」
「面白そう」
嫌な予感。
月島はニヤリと笑った。
完全に危険な顔。
「じゃあ私も協力する」
「何を?」
「発明品出す」
全員。
「やめろ」
声が揃った。
しかし。
月島は聞いていなかった。
「春風マンション再生計画!」
「科学の力で解決する!」
黒崎が即答。
「絶対問題増やす人ですね」
検査員のお墨付きだった。
その時。
廊下の向こうから、
タマが悠々と歩いてくる。
水浸しの廊下を。
まるで王様みたいに。
そして。
タマは立ち止まった。
じっと天井を見る。
「……?」
俺も見上げる。
ポタ。
天井から一滴。
ポタ。
また一滴。
そして。
天井のシミが、
ゆっくり広がっていた。
黒崎の顔色が変わる。
「……まずい」
「え?」
「これ、
上の階だけじゃない」
静寂。
黒崎はゆっくり言った。
「配管の本管です」
全員。
「えぇぇぇぇぇぇぇ!?」
春風マンション再生計画。
開始初日。
予想以上に、
ボロボロだった。




