第68話 鶴見緑地
突き抜けるような青空の下、心地よい風が吹き抜けていた。
「うわぁ……! すごい、お花がいっぱいだ!」
鶴見緑地に一歩足を踏み入れたソラが、パッと顔を輝かせて声を上げた。
中央制御室でのあの騒動から数日。旧AIコアによるハッキングの残党か、あるいは模造コアの新たな反応か――何らかの不穏な信号がこの近辺から感知されたため、第一部隊の面々は調査のために赴いていた。
だが、目の前に広がっているのは、そんな緊迫感とは程遠い、のどかな公園の風景だった。
広大な敷地には、満開の花々が色鮮やかに咲き誇っている。
休日ということもあって、広場にはピクニックシートを広げる家族連れや、走り回る子どもたちの賑やかな声が響き渡り、平和そのものの空気が満ちていた。
「おいおい、本当にこんな場所に何かあんのかよ」
蓮が頭の後ろで両手を組み、退屈そうに周囲を見回す。
「完全にただの行楽地じゃん。あのクソAI、今度は花見でもしにきたわけ?」
「データ上は、確かにこのエリアから微弱な電磁ノイズが観測されています」
師乃が透過モニターを厳かに操作しながら、冷静に周囲の環境をスキャンしていく。
「ですが、現時点では一般市民への影響も、視覚的な異常も見られませんね」
「ま、何事もないならそれに越したこたぁねぇけどな」
カイは相変わらずやる気なさそうに首の後ろを掻きながら、のそのそと歩く。
「とはいえ、これだけ広いと闇雲に探すのも骨が折れる。……よし、ここは二手に分かれて捜索するぞ」
カイはそう言って、広大な公園のマップが表示された師乃のモニターを指差した。
「俺と師乃、紫苑は、あっちの国際庭園とかいう入り組んだエリアを中心に回る。ソラ、蓮、日和の3人は、中央の並木通りからあの大きな風車がある丘の周りを探してくれ」
「了解です!」
ソラが元気に返事をする。
「あ、は、はい……!」
日和は胸元に抱えたノアをぎゅっと抱きしめながら、キョロキョロと周囲の花壇を見つめている。
「じゃ、なんかあったら通信入れろよ。市民を驚かせないように、慎重にな」
カイの言葉を合図に、第一部隊のメンバーはそれぞれの方向へと歩き出し、広大な鶴見緑地の捜索を開始するのだった。




