9話
早朝、フェルグスに招かれ、騎士団の稽古場に行く。
街に来て3日目で、騎士になるための特訓が始まった。まずは、甲冑を身に着けた上での持久走だ。これにより、基礎体力をつける。そして、木刀を使った実戦練習を行う。
訓練→警備→訓練、と言う生活が続く。あっという間に一か月が過ぎる。
騎士団の皆とも打ち解け始め、友人もできた。
一か月半が過ぎたある日、ガクは稽古場に居た。実戦練習として、同じくらいのレベルの従騎士と稽古を行っている。
「つえー、ガク!」
相手の従騎士は、へたり込み、大きく息を吐いた。彼は、エッカルト。小麦色の髪の青年だ。街に来て、すぐに声をかけてくれた。唯一の友だ。
「せこい技、使ってねぇだろうな」エッカルトが立ち上がり、ガクを睨みつける。
「つ……使ってないよ」
「ってことは……俺が弱いってことかぁ」エッカルトが、がっくりと頭を下げ、
「でもよぉ! もう、一回やれば、勝てるかもしれない!」
そう言い、木刀を握る。
「エッカルト、剣の握り方はこうだ。ガク、手加減するなよ!」周りの騎士が、厳しい声を出す。
北部同盟の者は、みな優しく、訓練を付けてくれた。それが嬉しくもあり、ある理由から気後れするところもあった。
稽古を終え、喘ぎながら、エッカルトが、
「ったく、手加減しろよな」
「ごめん……」ガクが微笑みながら言う。
「謝るな! なぁに、すぐに追い越してやるけどさ」
エッカルトが歯を見せて、ニッと笑う。歯が欠けていた。
「ガク、エッカルト、飯に行くぞ!」
騎士たちが二人を呼ぶ。二人は食堂へと行く。
「育ち盛りなんだから、喰え!」
シェフが、そう言って、大量のパンと、鶏肉を出してくる。
「どちらがたくさん食えるかなら、俺が勝つぜ」エッカルトが微笑む。
釣られて、ガクも笑う。こんなのは久しぶりだった。
「たくさん食えよ!」騎士の一人がビール片手に笑う。
食事を終え、午後の稽古に取り組む。騎士たちは、厳しくも、丁寧に剣術を教えてくれた。あっという間に一日が終わる。
ガクは、顔を荒い、稽古場から出る。遠くで、一人の女の子が見えた。
おっ、すげーボンキュッボンじゃん、とエッカルトが言う。しかし、ガクには聞こえない。
ガクの心臓が激しく鼓動する。
桃色がかった白髪は、ボブに整えられている。そのぱっちりとした瞳と視線が合いそうになる。歳にしては、幼さの残る顔。
ガクは咄嗟に駆け寄ろうとして、歩みを止める。
逃げ出した僕が会って良いわけがない―
ガクは心臓の鼓動を抑えるために、拳で胸を押えた。
彼女の名前はチユキ。かつて、アイメルト家騎士団で、共に修行をした戦友。
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