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4

【1】


 水流の斬撃が、空中を切る。


 怒声は悲鳴が聴こえ、騎士たちもバラバラに逃げ始める。


 チユキは、伏せ、水流が収まるのを待つ。


「ちくしょう……またはぐれちゃった」


 ふと、持っていたパンに気づく。口いっぱいに頬張り、咀嚼し、飲み込む。


 ガクとソーニャが遠ざかり、フェルグスは、小さくため息をつく。そして、地面に刺さった刀を抜く。脇差(短刀の一種)だ。


 フェルグスは顔を上げ、


「まだいるか?」


 チユキは、瓦礫を押しのけ、フェルグスの前に姿をさらす。


 フェルグスは、チユキへ向け、短刀を投げつける。


 チユキは、打ち返し、脇差は虚空へ消える。そして、瞬時に納刀。


「よくやるもんだ」


 フェルグスが、低い声で言う。


 チユキは刀の柄に手をやり、


「へへ……あたしは見ての通り、赤子同然の見習い騎士でしてね……」


 チユキの眼が細く鋭く光り、


「……ふざけるのも、いい加減にしてくださいよ」


 フェルグスは、それに不敵な笑みを返す。


「二人が逃げる時間を稼ぐつもりか?」


 チユキは、生唾を飲み込む。


 ―くそ、あたしってば、貧乏くじばっかり


 ゲオルクが剣を構え、跳躍する。


【2】


 ガクは、走りながら、チユキの姿がない事に気づく。


「チユキ……チユキは?」


 振り返るも、その姿は見えない。冷たい汗が、流れ出す。


「もどろう!」


 ソーニャが言う。その瞬間、空で白い物が光るのが見えた。


 ガクは、とっさに建物へ。それは、地面に落ち、軽い音をたてて、地面に刺さった。鏡のように磨かれた刀身―チユキの刀の一部。それは血に汚れている。


「あ……ああ……!」


 ガクは喉から、嗚咽し、ソーニャはその場で崩れ落ちる。


 脳内で、チユキの笑顔が、ぐるぐると回転する。世界が揺れ、ぐわん、ぐわんと、音がする。


「だ……ダメだ! た、た、助けなきゃ」


 ガクが行ことするも、しゅん、と何かが鳴る。空を、透明な線が斬る。《激流》の水流の斬撃だ。


 建物に、真っ直ぐな線が入り、ず、ず、と鳴り、一部が崩壊する。


 ガクらは、走り、瓦礫から逃れる。


 チユキとフェルグスへの道は、完全に潰れてしまった。


「ああ……」


「に、にげよ! ちゆき、かんたんには、しなないよ!」


 ソーニャが言う。ガクの袖を力なく引っ張る。


 ガクは、自分に言い聞かせるように、


「そうだよ……そう、そうだ……チユキが、死ぬわけない」


 ガク達は、再び、中央区に繋がる道へと走り出した。

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