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【1】
水流の斬撃が、空中を切る。
怒声は悲鳴が聴こえ、騎士たちもバラバラに逃げ始める。
チユキは、伏せ、水流が収まるのを待つ。
「ちくしょう……またはぐれちゃった」
ふと、持っていたパンに気づく。口いっぱいに頬張り、咀嚼し、飲み込む。
ガクとソーニャが遠ざかり、フェルグスは、小さくため息をつく。そして、地面に刺さった刀を抜く。脇差(短刀の一種)だ。
フェルグスは顔を上げ、
「まだいるか?」
チユキは、瓦礫を押しのけ、フェルグスの前に姿をさらす。
フェルグスは、チユキへ向け、短刀を投げつける。
チユキは、打ち返し、脇差は虚空へ消える。そして、瞬時に納刀。
「よくやるもんだ」
フェルグスが、低い声で言う。
チユキは刀の柄に手をやり、
「へへ……あたしは見ての通り、赤子同然の見習い騎士でしてね……」
チユキの眼が細く鋭く光り、
「……ふざけるのも、いい加減にしてくださいよ」
フェルグスは、それに不敵な笑みを返す。
「二人が逃げる時間を稼ぐつもりか?」
チユキは、生唾を飲み込む。
―くそ、あたしってば、貧乏くじばっかり
ゲオルクが剣を構え、跳躍する。
【2】
ガクは、走りながら、チユキの姿がない事に気づく。
「チユキ……チユキは?」
振り返るも、その姿は見えない。冷たい汗が、流れ出す。
「もどろう!」
ソーニャが言う。その瞬間、空で白い物が光るのが見えた。
ガクは、とっさに建物へ。それは、地面に落ち、軽い音をたてて、地面に刺さった。鏡のように磨かれた刀身―チユキの刀の一部。それは血に汚れている。
「あ……ああ……!」
ガクは喉から、嗚咽し、ソーニャはその場で崩れ落ちる。
脳内で、チユキの笑顔が、ぐるぐると回転する。世界が揺れ、ぐわん、ぐわんと、音がする。
「だ……ダメだ! た、た、助けなきゃ」
ガクが行ことするも、しゅん、と何かが鳴る。空を、透明な線が斬る。《激流》の水流の斬撃だ。
建物に、真っ直ぐな線が入り、ず、ず、と鳴り、一部が崩壊する。
ガクらは、走り、瓦礫から逃れる。
チユキとフェルグスへの道は、完全に潰れてしまった。
「ああ……」
「に、にげよ! ちゆき、かんたんには、しなないよ!」
ソーニャが言う。ガクの袖を力なく引っ張る。
ガクは、自分に言い聞かせるように、
「そうだよ……そう、そうだ……チユキが、死ぬわけない」
ガク達は、再び、中央区に繋がる道へと走り出した。
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